三人の王 第三章 神の塔 <4>
三人の王

第三章 神の塔

< 4 >


「さあて、なぜ俺がその誰かさんに会わなきゃならないのか、聞か
せて貰おうか」
「そうね、どこから話せば良いかしら……」ティナが考え込む。
「たしか、あなたはジャークの事を知っていたわよね?」
「あの人間が造り出した悪魔の事か?」ジルファーがネクスでの出
来事を思い出しながら答える。
「ええ、そうよ。そのジャークが今、この星に向かってきているの
よ。その速さは光の五千倍。このままだと、後三年でここに着くわ」
「な、なんだって! それは、本当か?」ジルファーは馬から、転
げ落ちそうになった。
「慌てないでよ。あくまでも、これは予想年数よ。神々はその間、
ジャークの進路を阻むために全力を注ぐつもりよ。でも、安心して
は駄目よ。ジャークは現在、最強の神であるラルンでさえ歯が立た
ない相手なのよ」
「そんな、ばかな。魔道士達の間では、主神とも言われているラル
ンですよ」レングが二人の話に、割って入る。
「ラルンの力なんて、オーディス様の比じゃないわ!」ティナが怒っ
てレングを睨つける。
「しかし、それと俺と何の関係があるんだ?」
「あなたはね、ジルファー。神々はオーディス様が復活する前に、
ジャークがこの星に現れるのを恐れているのよ。十万年前の悪夢の
再現を……。だから、神々は一部分の新人類の中から一人の人間を
選び出したのよ。それが、あなたなの。だから、あなたは二度の危
機を免れる事ができたのよ」
「俺が選ばれた? なぜ、俺みたいな人間を? ローゲントやリグ
ラードならまだしも……」ジルファーが信じられないように聞く。
「確かに、あの二人は強いわ。でもね、ジルファー。あなたを選ん
だのは神々だけではないのよ」
「他に誰かいるのか?」
「それを言う権利は、私には無いわ」ティナが首を振って答える。
「まあ、どちらにしても、俺は死ぬ運命のようだな」
「そうは言ってないわ。ジャークとの戦いの時は、全ての神々があ
なたに味方するし、オーディス様が復活した時はあなたの出番は無
いのよ。でも、安心しないでね。オーディス様はいつ復活するかわ
からないし、神々はオーディス様と違って全能ではないのよ。だか
ら、シュールの館みたいな危険な場所には極力行かないでね」
「ああ、わかった。二度も助けられたんだからな。借りはきっちり
と返すぜ。ん……? おい、あれは何だ?」ジルファーが右手の方
を指差して言う。
「三人の人間が馬に乗って走っていますね。二人の盗賊に誰かが追
いかけられているように見えますが……。助けますか?」
「ああ、たまには人助けもいいだろう。行こうぜ」ジルファーが馬
を走らせる。
 レングもその後を追いかけ、そこにはティナだけが残った。
(追われている人間の強さがわからないのかしら……? やっぱり、
神々の血が完全に目覚めていないのね。ラルンは不完全な物はいつ
か必ず、完全な物を超えると言っていたけれど……)
 その後、ティナは右手を掲げた。すると、ティナは光に包まれ、
その場から消え去った。
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