三人の王 第三章 神の塔 <3>
三人の王

第三章 神の塔

< 3 >


 その次の日、リッペス王国の北のルーンス王国の首都ケアンズを
二人の男が出ようとしていた。ジルファーとレングである。
 二人は町外れに出て、ルーンスの北東の町シーカルに向かって馬
を歩ませ出した。
 その時、二人の目の前に一人の女性が現れた。それを見て、二人
は慌てて馬の歩みを止めた。
「あ、危ないだろが!」ジルファーが怒る。
「ふーん。あなたがジルファーね。なかなか、好い男じゃない。運
命の女神が気に入るわけね」女はジルファーの声を全く、気にもし
ていない。
「知り合いですか?」レングがジルファーの横に来て聞く。
「初めて見る顔だよ。なんで、俺の名前を知ってるんだろう?」ジ
ルファーが不思議そうに答える。
「ぶつぶつと、うるさいわね。さあ、行くわよ」女はそう言うと、
北西に向かって歩き出した。
「おい、行くって、どこにだよ?」ジルファーが女の前に馬を歩ま
せて聞く。
「神の塔よ」
「神の塔だって!」ジルファーとレングは同時に叫んだ。
「そうよ。そこにいる、ある人物にあなたは会わなければならない
のよ」
「会うって誰に? なぜ? それに、あんたは誰なんだ?」
「誰かは会えばわかるわ。それに、なぜ会う必要があるのかは、神
の塔に着くまでに順を追って説明するわ。あと、私の事だったわね。
私は運命の女神の使い、ティナよ。よろしくね」そう、ティナが片
目を瞑って言う。
「どうしますか?」レングがジルファーに近寄ってきて、小声で聞
く。
「別に、急ぐ旅でもないんだから、少々寄り道しても良いんじゃな
いか?」
「ジルファーさんがそう言うのなら、僕も異論はありませんよ」
「じゃあ、決まりだな。えーと、ティナだったっけ? どっちの馬
に乗るんだ?」ジルファーがティナの方に向き直って聞く。
「私はあなたたち新人類や、ひ弱な前人類とは違うのよ」ティナは
ジルファーを馬ごと飛び越えると、再び北西に向かって歩き出した。
 それを見て、ジルファーとレングは互いの顔を見合わせた。そし
て、ジルファーは苦笑し、ティナの後を追った。
 レングは面食らったような表情で、ジルファーの後をついていっ
た。
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