三人の王 第二章 刺客 <10>
三人の王

第二章 刺客

< 10 >


 リグラードが逃げ出してから、数分が経った。リグラードはフラ
ンの気配を感じ、後ろを見た。フランは真後ろにいた。
(なんていう速さだ。くそっ、息が切れてきた)
「死ねっ!」フランがリグラード目掛けて、炎を吹きかける。
「くっ!」リグラードの背中に炎が移る。
 透かさず、リグラードは地面に転がって炎を消した。その時、リ
グラードの小物入れが腰から落ちて中の物が飛散したが、リグラー
ドは気づかなかった。
「さあ、大人しく死ね」フランがリグラードに襲いかかっていく。
(あれは正夢だったのか。くそったれ! こんな所で……)
 と、リグラードが思った瞬間、リグラードの横に落ちていた赤い
石が宙に浮かんでいった。
「なんだ、この石は?」それを見て、フランが動きを止める。
 しばらくすると、宙に浮かんだ石は突然光り出した。そして、そ
の石から、何かが飛び出していった。
 その何かは地に降り立つと、二人の方を見た。
「炎の……、虎?」リグラードが呟いた。
 リグラードの言うとおり、それは炎の虎であった。その炎はフラ
ンのとは違い、見ているだけで力が湧いてくるような気がした。逆
にフランには力が押さえられるような気がした。
 それに、炎の虎には神々しさがあった。それが、余計にフランの
気に触った。
「この化け物め……」フランが自分の事を棚に上げて言う。
 フランが炎の虎に近づいていくと、炎の虎は威嚇するように一声
吠えた。そして、フランに飛びかかっていった。
 フランもそれに合わせて宙に舞った。次の瞬間、二つの炎が空中
で交差した。
 先に着地したのは、炎の虎の方だった。続いてフランも地面に降
り立った。
「ば……、馬鹿な……」フランは燃え尽きるかのように消え去り、
その場には何も残らなかった。
 炎の虎はリグラードを一瞥すると、再び石の中に戻っていった。
すると、石は光を失い、リグラードの上に落ちてきた。
「いったい、この石は……?」リグラードは石を摘み取ると、ぼそ
りと呟いた。
 そして、太陽を見上げた。太陽はいつもとなんら変わりなく、地
上を照らしていた。
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