三人の王 第二章 刺客 <8>
三人の王

第二章 刺客

< 8 >


 その日と同じ日の夜、リグラードはジャルサスの東の町フレンク
にいた。そのフレンクの宿でリグラードは赤い石を調べていた。
 しかし、その石にかなり強力な魔力が籠められている事ぐらいし
かわからなかった。
(レガッド……。太陽か……。一体、これは誰が作った物なんだ?)
 リグラードは物思いに耽っていた。
(太陽……。そういえば、月は平和の神ルシフェシアの象徴だが、
太陽はどの神とも関係が全く無いな)
 リグラードは考えるのを止めると、眠りについた。
 それからどれぐらい経ったろうか。リグラードは目を覚ました。
近くで物音が聞こえたのである。
 リグラードはなぜか嫌な予感がしたので、剣を手にすると用心深
く部屋を出た。
(刺客か?)
 リグラードは耳に全神経を集中させた。物音はもう、聞こえない。
 とりあえず、リグラードは一階の酒場に行くことにした。
 酒場の机と椅子は片づけられていた。よく見ると、酒場の奥に一
人の男が立っていた。暗くて顔は見えない。
「誰だ?」リグラードが男の真正面に立って聞く。
 男は答えず、二本の短剣を取り出した。
「暗殺者か、盗賊か……」リグラードが呟く。
 まず、リグラードはずかずかと男との間合いを詰め始めた。短剣
の間合いと長剣の間合いとはかなりの差があるからである。
 そして、一瞬の内に間合いを詰めて、男の顔面目掛けて剣を突き
出す。
 が、剣は空を切った。実際に男に剣が突き刺さった状態にあるの
にである。
 その後、男は何事も無かったかの如くに短剣を繰り出した。リグ
ラードはその攻撃を避けるために、後ろに飛び退った。
「水の神ブリーズよ。我が手に氷の槍を与え給え」透かさず呪文を
唱え、左手を差し上げる。その手に氷の槍が現れた。
「くらえっ!」間髪入れず、男に向かって氷の槍を投げつける。
 が、その槍は男の体を通り抜けていき、後ろの壁に当たって壁を
凍りつかせた。
 それを見て、男は笑みを浮かべた。そして間合いを一気に詰めて、
リグラードに二本の短剣を繰り出してきた。
 万事休す。そう思った瞬間、リグラードは宿のベッドの上にいた。
全て、夢だったのである。
(正夢か? まさかな……。俺には魔剣士の持つような、予知能力
は無いはずだからな)
 リグラードは再び眠るために、目を瞑った。そして、深い深い眠
りに落ちていった。
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