三人の王 第二章 刺客 <2>
三人の王

第二章 刺客

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 北へ、北へとジルファーが馬を駆り立てて、十二日の月日が経っ
た。そのため、小さな島国であるロガルド育ちのジルファーがリッ
ペスの国境を越えたと思っても無理はなかったであろう。
 そして、目の前に町が現れた時、ジルファーはやっと違う国か中
立都市に着いたのだと勘違いをした。
「おい、あんた。ここはどこの国のなんて言う町なんだ?」町へと
入ると、ジルファーは町角に佇む、一人の男に声をかけた。
「ここか? ここはリッペス王国の北の町グレンさ」男が答える。
「リッペス王国! まだ、国境を越えてなかったのか……」
(しょうがない。馬も疲れているようだから今日はここに泊まるか)
 ジルファーは思わず溜め息をついた。大陸が広いという事を身を
以って教えられたような気がしたのだ。
 ここに泊まると決めると、ジルファーはすぐさま宿捜しを始めた。
この町には多くの宿があったが、ジルファーは一番安い宿に泊まる
事にした。旅費が底を尽き始めていた為である。
「おやじ、何かいい仕事は無いか?」食事を持って来た宿の主人に、
ジルファーは声をかけた。
「いい仕事ねえ。いい仕事かどうかはわからねえが、北のシュール
の館には数え切れない程の財宝が隠されているって話だぜ。しかし
……」宿の主人は途中で言葉を切り、ジルファーを品定めするよう
に見た。
「あんた、一人じゃ無理だろうね」宿の主人はそう、言い切った。
「なぜだい?」ジルファーは自分が安く見られたように思い、少々
腹を立てた。
「あの館には、そこの主人が生前にグレンザードから取り寄せた、
番人がいるんだ。しかも、その番人は剣はおろか鉄槌でさえも傷を
つけれないらしいぜ。それでも、行くのかい?」宿の主人が、心配
そうに言う。
「おもしろそうだな。明日の朝一番に行くとするよ。で、どこにあ
るんだ?」
「北に行けばわかるさ」宿の主人はそう言い残し、他の客の注文を
聞くために、ジルファーのテーブルから離れていった。
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