三人の王 第一章 旅立ち <15>
三人の王

第一章 旅立ち

< 15 >


 ザボルに着くと、三人はまっすぐにリグラードの家に行った。
「で……、でかい」リグラードの家を見たジルファーの感想は、こ
の一言であった。
「まるで、貴族の館だな」ローゲントが感心して言う。
「まあ、入れよ。誰もいないから気がねしなくていいぜ」リグラー
ドは入口の鍵を開けると、二人を手招きした。
「行くか」ローゲントが言う。
「ああ」ジルファーは答え、ローゲントと一緒に館に入っていった。
 三人は二日間、旅の疲れを癒すため、ここで休む事にした。
 ローゲントは寝る間も惜しんで大陸に渡りたかったのだが、旅の
疲れがたまって病気になるのを恐れ、この意見にしぶしぶ応じたの
であった。
 大陸に渡る前夜、ローゲントはジルファーと庭に出た。空は晴れ
渡っていて、無数の星が輝いていた。
「ローゲント、話ってなんだ?」
「ジルファー。おまえは必ず大陸で王になるだろう。俺もな……」
「ローゲント……?」ジルファーはローゲントの言いたい事が、全
くわからなかった。
「おまえは王の器だ。リグラードも俺もそうだがな」そこでローゲ
ントは少し躊躇った。言って良いのか、悪いのかを思案しているよ
うだった。
 しばらくして、ローゲントは意を決したかのように口を開いた。
「これは予感だがな。俺とおまえはいつか軍を率いて戦う事になる
だろう。もしも、この予感が当たり、俺とおまえが敵同士になって
も、俺は手加減はしない。全力を以っておまえと戦う。これはおま
えが友達だと思うからだ。わかったな」ローゲントは言うだけ言う
と、自分の部屋に戻っていった。
「王か……。王になると言われたのは、これで二度目だな」一人残
されたジルファーはネクスで出会った不気味な老人、ロンドの事を
思い出していた。
 その日の夜は明日の事を考え、三人とも早々と床に就いた。だが、
三人は一様に寝つく事ができなかった。
 ジルファーはシルヴィファルツの事で……。ローゲントは自分を
倒した男の事で……。そして、リグラードはまだ見ぬ自分の王国の
事で……。
< 16 >


戻る