ジルファーが大通りを歩いていると、たくさんの人間の声が聞こ えてきた。 疑問に思い、その声の方へ歩いて行くと、ジルファーはある店に 人だかりができている事に気づいた。 声がそこから聞こえている事は、間違い無かった。 その店の看板には剣と盾の模様が書かれてあり、その下には『戦 士の宿』と刻まれていた。 「おい、何を騒いでいるんだ?」ジルファーが近くにいた男に尋ね る。 「ん……? ああ、あいつらか。なんでも、黒い死神を退治しに行 くんだとさ」 「黒い死神……?」ジルファーはその言葉に、なぜか運命的な出会 いを感じた。 「知らないのか? 成功への道で旅人を襲う黒武装の男を? 奴を 倒せば金貨千枚の報酬を与えるっていう貼紙、見なかったのか?」 「そう言えば、貼紙が貼ってあるのを見たかも知れないな。ありが とう」ジルファーは男に礼を言うと、再び歩き出した。 大通りを抜け小道に入ると人影は多少、少なくなった。それでも、 王国の首都だけあって活気は変わらない。 太陽がちょうど真上に位置した時、ジルファーはやっと首都から 出てネクスへ向かう道に入った。 途中、二、三人の旅人に出会った以外は特に何事もなく、八日後 にジルファーはネクスに着いた。 |