旅立ちの時、レシッドは一振りの剣を持ってきた。その剣は両手 用の剣よりも、一回りほど大きい剣であった。 「ジルファー、これは俺が鍛えあげた剣の中の最高の物だ。名前は シルヴィファルツ。さあ、持っていけ」レシッドはそう言うと、ジ ルファーにシルヴィファルツを手渡した。 「兄さん……、ありがとう……」ジルファーは言いたい事が山ほど あったが、声にはならなかった。レシッドも同様だった。 そして、しばらくの沈黙の後、ジルファーはゆっくりと振り向き、 町の雑踏の中へ歩いていった。 その後ろ姿をレシッドはいつまでも見守っていた。その目はうっ すらと涙で濡れていた。 これが、二人の兄弟の永遠の別れであった。 |