「旅に出るって?」次の日、ジルファーは旅に出る事を兄のレシッ ドに告げた。 「なぜか、ネクスに行きたくなってね」その理由は、ジルファー自 身にもわからなかった。 「ネクスみたいな田舎にか……。まあ、この国なら安全だろうと思 うがな。大陸は酷いらしいぜ。戦争前は三十以上あった国々が今じゃ あ十国しか残ってないんだとよ。一体、何のために戦争なんかやる んだろうな」そう言うと、レシッドは肩を竦ませた。 「ま、俺みたいな細工師は剣や鎧が売れて商売繁盛なんだろうけど な」そして、そうレシッドが苦笑する。 「大陸か……。行きたいけど死にたくはないな」ジルファーの目は、 遥か遠くを見ていた。 「おまえみたいなちゃんとした所に行ってない戦士が、出世するに は大陸に行くしかないぜ。まあ、命を賭ける賭けだけどな。で、い つ帰ってくるんだ?」 「さあ、わからない。もう、帰ってこない。いや、帰ってこれない ような気がする」ジルファーがしんみりと言う。 「そうか。せめて、父さんの仕事を継ぐために何一つ好きな事がで きなかった、俺の分も楽しんでくれよ」レシッドがわざと明るく、 言う。 「じゃあ、旅支度をしてくるから」ジルファーは自分の部屋に戻っ ていった。 その後、レシッドは考え事をしていた。そして、無言で頷くと、 レシッドは自分の仕事場に向かって歩いていった。 |