三人の王 第一章 旅立ち <2>
三人の王

第一章 旅立ち

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「旅に出るって?」次の日、ジルファーは旅に出る事を兄のレシッ
ドに告げた。
「なぜか、ネクスに行きたくなってね」その理由は、ジルファー自
身にもわからなかった。
「ネクスみたいな田舎にか……。まあ、この国なら安全だろうと思
うがな。大陸は酷いらしいぜ。戦争前は三十以上あった国々が今じゃ
あ十国しか残ってないんだとよ。一体、何のために戦争なんかやる
んだろうな」そう言うと、レシッドは肩を竦ませた。
「ま、俺みたいな細工師は剣や鎧が売れて商売繁盛なんだろうけど
な」そして、そうレシッドが苦笑する。
「大陸か……。行きたいけど死にたくはないな」ジルファーの目は、
遥か遠くを見ていた。
「おまえみたいなちゃんとした所に行ってない戦士が、出世するに
は大陸に行くしかないぜ。まあ、命を賭ける賭けだけどな。で、い
つ帰ってくるんだ?」
「さあ、わからない。もう、帰ってこない。いや、帰ってこれない
ような気がする」ジルファーがしんみりと言う。
「そうか。せめて、父さんの仕事を継ぐために何一つ好きな事がで
きなかった、俺の分も楽しんでくれよ」レシッドがわざと明るく、
言う。
「じゃあ、旅支度をしてくるから」ジルファーは自分の部屋に戻っ
ていった。
 その後、レシッドは考え事をしていた。そして、無言で頷くと、
レシッドは自分の仕事場に向かって歩いていった。
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