−1日目−
琵琶の滝というのは四国の真ん中へん、徳島の端っこの山の中、秘境と言われる大歩危<おおぼけ>にある滝である。その辺りにはかずら橋なんぞというちょっと有名な吊り橋などもあるらしい。それではそこを中心に今回は四国巡りといこう。四国へは岡山方面から入国。途中香川でちょっくらうどん食って、そこから高知へ直行。高知から大歩危、そして徳島経由で淡路、明石の橋を渡って帰るべぇ、というのが今回の計画となった。ただ、それ以外の詳細はほとんど未定のままであった。 ところが今年の台風は気紛れで、梅雨時に2つも列島を縦断したくせに7月に入るとちっともやってこない。それですっかり油断していたのが、ここへ来ていきなりデカイのが近付いて来るらしい。それも普通なら沖縄方面から上がって来るはずが、太平洋から真横に突っ込み四国方面へ直接上陸しそうな気配なのだ。なんでだよぉ〜!誰か雨男でも居てるのか〜!? とか言いつつ、でも去年だって綱渡り的避嵐をできたんだから今回だってきっと大丈夫さ!てな調子で、それでも窓は適度に閉め切って出発した一行であった。 とりあえず、天気は晴れ!
岡山といえば新幹線(え?)。新幹線といえば白と青。それが岡山で見た新幹線は白地に濃い灰色と黄緑のラインなのだ。こんな色の新幹線なんぞ見たことがない。JR西日本の色はこうなの? とか思ってたら、別のホームにひかりレールスターが同じ色合いで止まってるのを発見。レールスターなら4年前の九州行きの時に乗ったぞ、というわけで、帰宅後改めて九州旅行記(最終日)の写真を見たら、確かにそんな感じの色っぽかった。すっかり忘れていたのね〜。ちっとも奇異じゃないやん。 岡山からは特急南風に乗る。乗って発車した途端、ん? これってもしや、ディーゼルでない? そう、去年ずっとお世話になったディーゼル車に、今年もお世話になることになったのだ。電車とは明らかに違う音と揺れを確かに身体は憶えていた。岡山からは程なくして瀬戸大橋である。天気は晴れ。本州も対岸も綺麗に見渡せる瀬戸内海は小さな島々でいっぱいだ。妙に尖がった島、岩の上に木がちまっと生えてるだけ…みたいに見える島、半島なのか島なのかよく判らない島、そんな島々を眺めているだけでわくわくしてくる。そしてあっという間に橋を渡りきり、興奮覚めやらぬ内に丸亀に到着である。 今回の行程は岡山から一気に高知へ抜け徳島を横断して帰るルートなので、そのままだと香川は通過になってしまう。しかし折角の四国行、本場の讃岐うどんを一度も食わずして通過するだけ…は、いくらなんでもあんまりではないか。というわけで丸亀で途中下車してお昼のおうどんを食そう、というわけなのだった。前もってリサーチしておいたお店は駅から20分くらいの処。でも食べる前に迷うのは嫌なのでタクシーでさっさと運んでもらう。別にTVでよく見る、山の中の民家と見紛うばかり…みたいな店ではないが、注文だけして呼ばれるまで待って丼もらって自分で汁注いでトッピングも適当にやって天ぷらだのおでんだのも取ってみて、お代は後払い。麺がシコシコで美味。やっぱり讃岐うどんは良いなぁ…としみじみと。ちょっと醤油を垂らすともっと美味なのだが、ここの醤油は特に色が薄くてその割に塩気が多い。うっかり掛け過ぎて最後がいささかしょっぱくなってしまったのがちょっと残念だった。 一杯200円のうどん+トッピングは腹7分くらいな感じだ。まだもう一杯くらいは行けそうである。もう一軒行くか?という話は当然あった。けれどこの後高知までずっと座ったままで、夕飯の場所も決めてある。そんなこんなを考慮して一杯で止めておくことにした。戻りはぽてぽてと駅まで歩く。途中向こうのお山のてっぺんにお城を発見。あれが丸亀城だ。資料によると築城400年にもなる名城らしいのだが、如何せん歴史には疎い向きの悲しさ、生駒親生なんぞと言われても誰が誰やら…なのであった。 さてこの後は高知まで一直線であるのだが、徳島の山の中を通過するためカーブとトンネルだらけになる。時々木々の間から垣間見える峡谷は美しいのだけれど、ホンの一瞬ですぐにトンネルに入ってしまうので景色を楽しむ余裕はほとんどない。やっとこさ高知駅に付いた時にはいささかぐったりしていた一行であった。
実は高知の市内と言えば路面電車なのである。街の中心部はりまや橋を交点にして十字に線路が走っている。この路面電車がとでん。都電じゃなくて土電。土佐電鉄だから土電。ちなみにJR土讃線は“どさんせん”。土電が“どでん”じゃないのは、それだとひっくり返りそうだからなのかな? それでこれに乗れば市内どこへでも行ける…というわけだ。もっとも、南北は割と短そうだが、西は伊野(JR土讃線で高知から7駅目)、東は御免(JR土讃線で高知から5駅目)と、かなりな距離まで続いている。流石に一日乗車券ではそんなところまでは行けない。というか、既に市内は出てしまっているし、あのドコドコした走りの土電がそこまで路面電車で行ってるのか、確かめてみたい気もしないではなかった。だってさ、御免なんて特急で15分近く走ってたんだよ〜。 さて、着いたのが夕方とはいえ一日乗車券はありがたい。早速そのとでんに乗ってみる。行き先表示にひらがなで“ごめん”と書かれているのが妙に可笑しい。なんだか謝りながら走ってるみたいだ。そしてまたこの土電、広島の路面電車同様広告塗装だったりする。チキンラーメンが走っている。NHK-BSの、お目にかかったことも無いキャラが笑っている。素人さんの漫画コンクールだかの受賞作品…なんてのも走っている。そして行き先は桂浜。しかし南北には短い土電はそのもっと手前でお終いである。取り敢えず南の端の電車車庫まで乗ってみてそこからは車を拾うことにした。総じて土電の乗り心地はなかなか良いがブレーキのキキーッという音が甲高い。耳が痛くなるのがちょっと難儀だった。 桂浜には坂本竜馬が居る。その竜馬に会いたい…というのが若干一名の希望で、それでやって来た訳なのだが、車を降りた正面にいきなり銅像(?)が立っている。でも背が低い…。ほとんど等身大?という感じ。威厳もへったくれも無い。何故かといえば、それはお土産屋さんの看板銅像だったから(こら)。でも近くから写真を撮れば本物の銅像と判別がつかないんじゃないかと思う程かなり精巧にはできていた。で、本物の方はもっと上にある。小高い丘を登りきるとそこにはまたドデカい銅像が、ワザワザ台の上に立っていた。こんなに写真の取りづらい銅像も無いだろう。前に立った人物を入れようとすれば竜馬の顔は確実に切れる。顔を入れれば人物は入らない。どっちも入れる為に思いっきり下がろうとしても後ろは崖っぷちである。不親切なことこの上ない。そしてもっと決定的なのは、この銅像が見事に東を向いている…ということ。要するに夕方に来ると完全な逆光なのだ。見上げるほどデカイ上に逆光。ファインダーを通さなくても表情すら薄暗い。こんな事ならお土産屋の店先でミニチュアと並んで撮った方がマシだ、と思わせる処がお土産屋さんの商魂の逞しさなのか。ともあれ、桂浜の竜馬さんに会いに行くなら、晴れた午前中に致しましょう。そして眼下に広がる海。浜まで降りることにする。 海は荒れていた。台風が刻々と近付いているのだ。浜は浜でもどう見ても泳げる雰囲気ではない。そもそも海の家も無ければ監視台もネットもブイも無い。波に変動が激しくて遊泳禁止の場所なのだろう。小さな浜辺の周囲はゴツゴツの岩に囲まれて、時々大きな波がドドーンッと岩にぶつかって盛大に白波を降らせている。波打ち際で波に足を洗っているカップルが居るので近付いていくと、いきなり大きなのが来て一気に膝下くらいまで濡れてしまった。波の大きさがまるで読めない。かなり大きそうな波が来るので手前の方で待機していると案外来ない。と油断していると続けざまに来たのがえらく大きくて慌てる。少し向こうで同じように波と戯れている小さな女の子達が居る。水際までぽてぽて歩いて行って、ドワーッと波が来るとズズズーッと足を掬われてひっくり返る。いつ波に攫われていくかとヒヤヒヤしながら見ていたが、流石にそんなことは起こらなかった(起こってたらヤです)。
で、出てきた“青さのり”の天ぷらが絶品。のりといってもいわゆる四角い紙状になっているのではなく、細かいもじゃもじゃのまま丸めて揚げてある…という感じ。絶妙の塩加減とサクサクの歯触り、こんな美味しい天ぷらは初めてかもしれない。青さのりは高知は四万十川の産。佃煮になった瓶詰めとかは結構見たけれど、生がどんなものなのか見られず仕舞いだった。次は鯨の竜田揚げ。これがもうジューシーだし柔らかいし最高である。遥か昔の記憶の中にある鯨の竜田揚げとは全く別物。噛んでも噛んでも噛み切れず飲み込めなかったあれはいったい何だったんだろう?と不思議になるような、改めて鯨って美味しいんだなぁ…と思えるような逸品だった。そしてカツオのタタキ。流石本場のカツオはやっぱり鮮度が違う。近所のスーパーで買うタタキみたいな生臭身がまるで無い。普段はイマイチな顔をする向きにも大好評なのだ。そんなカツオのお茶漬けも見が柔らかくて旨そうだった。残念ながらそんなにいろいろは食べられない。これは食った向きからの伝聞である。 お腹もいっぱいになって店を出ると、店先で盛大火を焚いていた。そしてその火の上で、大きなカツオの切り身が焦がされていた。さっき食べたカツオはこれだったのか。これは旨いわけだよ!大将にお礼を言ってお店を後にするのであった。 さて、長かった本日の行程もこれでお終い。明日はまた晴れてくれるだろうか?台風は大丈夫だろうか?そんなことを考えつつお宿に戻る一行。ちなみにお宿のお部屋にはタングラムという形合わせのパズルが置いてありました。これ、後にちょっとした推測を生むことになるのですが、それはまた後程。 |