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口で歩く 丘修三・作 立花尚之介・絵 小峰書店 2001.06.14

 生まれつき寝たきりのタチバナさんは、時々散歩に行きます。お母さんが車輪付きのベッドにタチバナさんを乗せて、家の前へ出してくれます。そして、そのまま引っ込んでいまいます。タチバナさんは通りかかる人に声を掛けます。

 「このベッドを、あなたが行くところまで押して頂けませんか?」

 色々な人と出会って、タチバナさんはその人達と、色々な話をします。話が楽しい時もありますし、鬱陶しい話の時もあります。とても嫌な事を言われて傷つくこともあります。反対に相手を傷つけてしまうこともあります。タチバナさんは、そんな沢山の出会いをとても大事にしています。そして、どんな人でも支え合って生きているのだと、寝たきりのタチバナさんも誰かの役に立っているんだ、という事を発見します。

 実話を元にしたお話だそうですが、押し付けがましくない書き方に、とても好感が持てました。絵本なのでとても短いですが、ゆっくりと心に染みるモノを感じました。教訓とか、だから何か…とか、そんなモノは無しに、唯々心に染みるままに憶えて置きたい… そんな読後感でした。

 ちなみに、作中のタチバナさんと、挿絵の立花さんは関係ありません。