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![]() 〜堕ちたる街へ〜 某所 9/27:早朝 …彼らは予定通り池袋に到着。 バラバラに少年の行方を捜すようです。 …はい 分かりました。では、小手調べに… …え!?貴方も…! はい。準備はしておきますが…何もそこまで… …は、はい。すみません。 では… 池袋 南地区 9/27:昼過ぎ
「ねぇ…貴方、ほんとに知ってるの?」 テイルは前を行く男に声をかけた。 この男が、真琴君の行方を知っているという。 ダークブルーのジャケットに、ごつい銀のブレスレット。顔には悪魔を模した刺青… 正直言って、一般人ならあまりお近付きになりたくない相手ではある。その後ろを、両手を頭の後ろで組みながら、つかつかとついていくテイル。 「もぉ、まだなの?」 「へっ、ここいらでいいだろ…デートはそろそろ終わりにしようぜ、お嬢ちゃん」 そう言って振り返りざま、アーミーナイフを抜く男。 微かに届く日光を受けて、一瞬キラリと刃が輝く。 テイルの足元の御影が、毛を逆立て、低くうなった。 …つけられたか。 少年の行方を探るべく飲食店をまわっていた神武だが、三軒目を出てすぐ、尾行者が付いた。 すぐにけりをつけるか…いや。 この分だと他の3人にも何かしらのアクションが仕掛けられていると見るべきだ。めったなことにはならないだろうが、早く彼らのサポートにまわった方がいい。神武は馴れた様子で、注意深く尾行者を観察しながら、今後のプランをまとめていた。 …動きから見て、さほど熟練した追手ではない。ならば… 唐突に、ふらりと横道に入る神武。 慌てて同じ道に踏み込んだ尾行者の前から、彼の姿は忽然と消え失せていた。 「彼」にとって、池袋は庭のようなものだった。なにしろ中部山中から出てきて以後、「彼」はずっとここをねぐらにしていたのだから。
東新宿などとは対照的に全く整備の行き届いていないこの街だが、「彼」にとっては第二の故郷、一時の安らぎを与えてくれる場所であった。 この池袋にも、やはり浮浪者達の情報網がある。しばらく彼らに混じって暮らしていた「彼」は、その情報が実に侮れないものであることをよく知っていた。 「…権さん」 薄汚れた食堂の裏口で、ゴミを漁っていた男が振り向く。この男が、この辺り一帯の情報を押さえている。 「よぉ…打牙じゃねぇか!見ろよ、駄目だなここも、最近材料をケチりやがる」 「ちょっと、これを見てくれ。あんたなら知ってるんじゃないかと思って…」 「彼」はモニターを取り出すと、権さんに見せた。 首の辺りをぽりぽりかきながら、モニターを覗き込む権さん。 「…こいつ、キャサリンと一緒にいたっていう…」 「知っているのか?」 「ああ…だがよ、打牙…ずいぶんと物騒な客人を連れて来たもんだぁな」 背後に殺気を感じ、「彼」は振り返った。 そこには、銃を持ち、目をギラつかせたストリート・ギャングが4人、にやにや笑いながら立っていた。 「…無粋な客には、それ相応のもてなしをするでござる…参る!」 4つの銃口に向け、静かに構えを取る「彼」…打牙 「へっ!こいつ、素手でどうしようってんだか」 「頭イカレてんじゃねぇのヒャハハッ!」 「まぁいい…死ねぇ!!」 下卑た声が路地に響く。雲でもかかったのか、それまで差し込んでいた陽光が、ふっと影に置き換わった。 「行くぜ!」 そう言ってアスファルトを蹴り、最高速で前方3人の敵に詰め寄る疾風。 瞬きするより、速い。 常人には、まるで瞬間移動でもしたかのように見えただろう。 駆け抜けざま、腰の日本刀を抜き放ち、一閃。 一瞬遅れて、一陣の風が通り抜けていく。 サイバーウェアに裏打ちされた、並外れた脚力と反応速度。そしてそれに釣り合うだけの剣の腕…その全てを備えて始めて可能になる、神速の抜刀術である。 3人目が血しぶきを上げて倒れた時、後ろの2人はまだ銃の狙いもつけていなかった。 …この間、わずか3秒。 思いのほか高い報酬に飛びついた事を、ギャング達は早くも後悔していた。 敵はたった一人…そこそこできる奴だって、5人がかりで囲めば… 彼らはウワサでしか知らなかったのだ。 ストリートの最強の猛獣、「サムライ」の持つ牙が、どれほど鋭いかを。 「んなろぉ!」 「…遅えよ」 刀を捨て、アレス・プレデターを抜き撃つ。 銃声は2発。 2人のストリート・ギャングが、ほぼ同時に崩れ落ちる。 「だから言ったろ?オレは疾風…お前らなんかに見切れるかよ」 指先でくるくるっとプレデターを回しながらそう言うと、疾風は何事もなかったかのようにその場を立ち去った。 「ふふっ…困った人ね」 テイルの目が、すっと細くなる。 獲物を弄ぶ、猫族の瞳。 異様な雰囲気に、慌ててアーミーナイフを振りあげる男…でも、もう遅い。 大気に満ちる自然のリズムに身を任せ、テイルは歌うように魔力の旋律を紡ぐ。 「魔力破(マナ・ボルト)!」 「な…ぐはぁ!? 」 ビクン、と一瞬震え、血を吐いて吹き飛ぶ男。 「どう?…わたしの魔力を、アストラル空間から打ち込んだの。ちょっと痛そうだけど、もう一発くらいは耐えられるんじゃない?」 にこにこしながら、ゆっくりと男に近づくテイル。 「これでも、思いっきり手加減したのよ。…そうだ、次はフルパワーでやってあげようか?」 シャーマンは多かれ少なかれその導き手である、動物をかたどった霊的存在…「トーテム」の影響を受けている。テイルを導くのは、「猫」。格好の「玩具」を手に入れると、一時それしか目に入らなくなる…という性格も、猫譲りというわけだ。 だが、今回はそれがあだになった。 突然、背後から口を塞がれる。 「!?」 二人目がいた…!? 「油断したな。呪文が唱えられない魔法使いなんざぁ屁でもない」 後頭部を殴られ、テイルの身体は糸の切れた操り人形のように地面に倒れた。 物騒な「客人」に向け、打牙は一呼吸で間合いを詰める。 ギャング達の放った弾丸4発を1センチ差で躱しながら、全くスピードを落さないで走る。 銃の間合いをあっけなく突破されたギャング達は、慌てて接近戦の体勢に入るが… 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「な、何ぃ!?」 怒涛の連続攻撃が一瞬にしてギャングを一人葬り去る。 一見無秩序な攻撃に見るが、実は俊敏な動きを最大限利用して常に防御の死角から連続攻撃を加える高等な技。正面からの打撃にもかかわらず、防御も回避も不可能…これこそ、打牙の流派「武神流(たけがみりゅう)」の秘儀「我無捨羅」なのである。 まだ3対1とはいえ、もはや力の差は明らかだった。 だからそれが2対1、1対1…となり、すべての「客人」が地に這うまで、そう長い時間は必要無かった。 「…悪く思うな」 倒れたギャング達に背を向け、権さんの所に戻る打牙。 しかしまだ意識のあった一人のギャングが銃を拾いあげ、その後ろ姿に向けて… 「!!」 再び太陽が戻った路地裏に、銃声と悲鳴が響き渡った。 (全く…もう、怒ったから) 地面に転がった自分の身体を眺めながら、テイルはつぶやいた。後頭部を殴られる1瞬前に、意識体だけをアストラル空間に待避させたのだ。 −アストラル投射 魔法使いは肉体の枷を外し、意識のみをアストラル空間に飛ばすことができるのだ。意識体には決まった外見がないから、アストラル空間では好きな形をとることができるわけで、テイルは白猫の格好をとっている。 ただ、ふつう、アストラル空間から物質空間の存在を攻撃することはできない。それにこのままテイルの身体が致命傷を負えば、帰る場所のなくなった意識体はやがて消えてしまうことになるのだが… (師匠には、あんまり使うな、って言われてるけれど…こういう場合はしょうがないよねぇ…) そう、勝手に一人で納得すると、テイルは物質空間に意識を集中させる。目標は…御影。 (ちょっとだけ…我慢してね、御影) テイル/白猫のオーラが、御影に重なる…普通ならオーラの壁に弾き返されるはずなのに。 生体的にも意識的にも完璧にシンクロした、テイルと御影だけが出来ること。 アストラル体を他者に憑依させる…アストラルポゼッションという、力である。 …テイルは、物質空間での眼を開いた。 猫の瞳から見た、池袋の裏道。 人間とは見える色の波長が違うため、最初は戸惑ったものだが…それももう慣れた。 体が軽い…! この姿になるといつも、不思議な昂揚感に包まれる。 見れば、さっきの男が今まさにテイルの本体に止めを刺そうとしていた。 (ふん…油断してるのは、あなたの方よ!) 音一つ立てず、テイルは男の首筋に飛び掛かった。 カラン… ギャングの手から、力無く銃が落ちた。 「かたじけない」 打牙はゆっくり振り返ると、路地の入口にたたずむ男に声をかける。 「…ささいな不注意でも身を滅ぼす元になる。覚えておくんだな」 男−神武はそう言ってさっと銃をしまうと、打牙達のもとに来た。 「わたしも、こいつらに尾行されていた…何者の仕業なのか、調べた方がいい」 「この…拙者たちの力を試すようなやり口…もしや…」 倒れたギャング達を見やりながら、打牙がつぶやく。 「心当たりでもあるのか」 「…妖(あやかし)というランナーがいる…以前、拙者たちと対立したことがあるのだが…どうも奴の「匂い」がするでござるよ」 「妖…か…」 しばらくの沈黙の後、ふと思い出したように打牙が言う。 「っておっとそうでござった、真琴君の位置が分かったでござるよ!」 「…そういう事は、早く言え」 むっとしたように言う神武。 そのやり取りを見て、ひとり権さんだけがくすくすと笑っていた。 男たちを倒したテイルは、再び自分の身体に戻り、暗い路地を後にした。 …ビルの影から、その後ろ姿に謎めいた視線を送る人影が一つ。 大きめの帽子に、腰までのおさげ。 不忍池で打牙を見ていた少女である。 「あれが…そうなのね」 少し考えた後、リストホンを起動する …はい、“レッグアーム“を、 そうです。ポイントは後程… 池袋 キャサリンのアパート 9/27:午後
「この扉の向こうに…真琴君が?」
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