第62話 Drops The Rainbow


 さてさて、あとは大魔王めがけてまっしぐら状態になってきました勇者たちです。前回で【聖なるほこら】の情報を得た勇者たちは、そのほこらを探すべくメルキドの町を後にしました。後にしたのはいいのですが、結局陸路ではこれ以上東に行けないので、一旦ラダトームまで戻って海路でメルキド沖に出、そこから東征&北上して地図の空白を埋めよう、ということに相成りました。


ほだか(以下、ほだ)「♪うーみーはー♪」
まさはる(以下、まさ)「ちょっと待った!」
ほだ「なに?」
まさ「今お前が何を歌おうとしたのかは聞かないぞ。聞かないが、歌うな」
ほだ「なんでだよ?」
まさ「大人の事情、って奴だな。歌詞書いたらあかんのよ」
ほだ「え゛ー例のJASRAC関連?」
まさ「そゆこと」
ほだ「何言ってんだ、これは俺のオリジナル!タイトルは【海の水】だ!♪うーみーはーしおみーずー、きずにしみーるーぜー♪」
まさ「……なんだそりゃ」
ほだ「♪ミネラールーたっぷーり、海洋深層水はプランクトンの死骸だらけー♪」
ともき(以下、とも)「やめんか気色の悪い!」
ほだ「うっさいなぁ、人が気分良く歌ってんのに……」
ひでかず(以下、ひで)「おーい、あそこになにかあるよ!」


 メルキド沖からちょっと行った先の島に、もうなにか見つけたようです。


とも「ほほう、ほこら、だな」
ほだ「……まさか」
まさ「……もしそうだとしたら、あまりにも安易だ」

 ぶつくさいいながらも上陸します。


とも「だってよ、直線距離にしたらあまりにも近すぎるぜ」
ひで「……きっと別のほこらだよ、アイテムくれるとか」


 皆、この祠を【聖なるほこら】だとは思いたくないみたいです。近すぎるっていうのが本当のところでしょうかね。タイムリーに見つかりすぎです、はい。


ほだ「どーも、こんちわ……」


ほだ「ギャフン!」


 今時『ギャフン』なんて古いとお思いでしょうが、まさにギャフンな気持ちでいっぱいな勇者たちです。いくらなんでも近すぎ。都合が良過ぎです。そんな勇者たちの思いを無視して、その司祭は訪問者たちの手に【太陽の石】【雨雲のつえ】そして【聖なるまもり】があるのを確認し、咳払いをします。

*「よくぞ 来た!
  いまこそ 雨と太陽が
  あわさるとき。


 司祭は雨雲の杖と太陽の石を奪い取ると、それらを宙に放り投げました。すると、二つのアイテムは柔らかい光を発し、その光の中へと消えていきます。次いでその光の中から何かが次第に形を現し、光が収まると同時にしっかりとした存在へと姿を変えました。


ほだ「にじの……しずく……」



 司祭は勇者に【虹のしずく】を握らせると、ほこらから勇者たちを追い出しました。本当にこれが魔王の島に渡るために必要なアイテムなのでしょうか?


ほだ「……なんかモーレツな坊さんだったな」
まさ「異論挟ませてくれないっつーか」
とも「……とにかく北上しようか、もしニセモノだったらやばいから、早く確かめた方がいい」
ひで「でもさ、どうやって確かめるの?」
とも「……そりゃあれだ、これ使って魔王の島に渡れなかったらニセモノってことだ」


 ……なんだか、判ったんだか判らないんだか、というような感じですがとにかく。勇者たちは少し北の大地に船を停めると、探索の続きを始めることにしました。




まさ「むは、町だ」


 歩き出してすぐに町が見つかりました。なんかもうイベント密度高いですな、本当に。

ほだ「まぁいいさ、恐らくここが魔王の島へ渡るための、最後の町のはずだ」
ひで「どうして判るの?」
ほだ「だってさ、もう地図の空白、残り少ないもの」


 そう、地図で言えば最東端に位置するこの町、これで地図はほぼ完成です。ということは、後は真ん中にある魔王の城へと乗り込むだけというわけです。

*「リムルダールの町に ようこそ。



 町の入口にいた若い女性はそう言いました。勇者ほだかの言うとおり、ひょっとしたらここが最後の補給地点かもしれませんね……戦士ひでかずと武闘家まさはるはダッシュで武器屋へ向かいます。この人たちは毎回こうですねぇ。

まさ「撃沈!」
ひで「兜と盾!買っちゃった!!」


 しかし、本当に武闘家の武器ってないですね……可哀想になってきました。


*「おにいちゃんたちも
  魔王を たおしにいくの?
  でも おそかったね。


ひで「は?」

 町の中で出会った子供は、そんなことを言います。

*「きっと オルテガのおじちゃんが
  魔王を たおしてくれるよ。


ほだ「!!オヤジ!?」
とも「来てたんだ、ここまで……おい、情報集めろ!勇者オルテガがこの町に立ち寄ったらしい!」
まさ「なんだって!?よ、よし判った!」


 パーティーは町のあちこちに散っていきました。勇者の父、オルテガがこの町に立ち寄ったとなれば、彼の行く先に道があるはずです!町のあちこちで聞き込みをした結果、どうやらオルテガはこの島の西にある岬から、魔王の島まで泳いで渡るつもりだったようです。


ほだ「それはつまり……この【虹のしずく】をオヤジは見つけられなかった、ということだな」
まさ「その【虹のしずく】を使えば、西の岬から魔王の島まで渡れるらしい」
ひで「魔王の玉座の裏には隠し通路がある、って話も聞いたよ」
とも「ふむ、バラモスも結局は地下に玉座を構えていたからな……普通にいるわけないってことだろう。どうせ誰かの城を乗っ取って、地下に大ダンジョンこしらえてるに決まってるさ」


 勇者、にやりと笑います。

ほだ「よし……いよいよだ、明日!明日の朝、魔王の城に向けて出発する!」
まさ「うむ」
とも「いよいよか」
ひで「この【虹のしずく】、ホンモノだといいけどな」
ほだ「よし、各自ゆっくり休んでおくこと!俺は今からマイラに行って、【王者の剣】を受け取ってくる!」
まさ「あ、じゃ宿屋チェックインしとくわ」
ほだ「頼むね〜」




 思わぬ場所で父オルテガの手がかりを掴んだ勇者です。はやる気持ちを抑え、ゆっくり休んでいよいよ明日は魔王の島へ!……といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……








次回予告


 長い旅路の果てに、ようやく出会った父と子。しかし、父は魔物の前に膝を折り、子の悲痛な叫びだけが闇に包まれた魔の城を突き抜けた。


まさ「フン、お前によく似た奴を見たことがあるな?……ロマリア近くの公園の池で、ゲロゲロ鳴いてたアマガエルだ!」
???「グギギギギ……このバラモスブロス様を怒らせて……グギギ、無事に生きて帰れると思うなよ小僧が!!」
まさ「へっ、たかがバラモスの兄弟が俺たちに勝てると思ってんのか!?お前こそ生きてここから帰れると思うなよ……お前に素敵なマイホームがあるとは思えないけどな!!」


???「どうやら……あとはお前たち……若い世代に託す……ことになるな……」
ほだ「オヤジ!いいから喋るな!ベホマ!……どうしてだ、どうして魔法が効かない!?ベホマ、ベホマ!」
???「魔法は生命力を高め……自主的な治癒を促すに過ぎん……無理をしたせいか、俺の体はもう……ゲフッ!!」
ほだ「畜生、やっと!やっと逢えたんだぞ!俺がまだガキの頃に旅に出たまま帰ってこなかった親父に!ここまで来て、何年もかかって!」
???「いいか息子よ……ゾーマの弱点は……奴が昔【光の賢者】だったことだ……」
ほだ「何言ってんだ、それは後で、ゾーマと戦うときに教えてくれ!」
???「奴は光の宝珠に吸い込んだ闇に取りつかれているに過ぎん……その本質は未だ光……だから、わざわざ闇の衣を……着込んでいる……それを剥ぐことが……光の珠……」
ほだ「オヤジ、しっかりしろ!すぐに連中が来る、アリアハンに送ってやる!……かあさんが、かあさんが待ってんだよ!!」


ひで「さっそくかい……全く、しつけの悪いペットだね」
???「ペットだと?ははははは、これは面白い冗談だ!」
ひで「冗談だって?ははははは、これは面白いジョークだよ!自分の顔を鏡でよく見なよ、下品なトカゲが利口なフリしてんじゃないよ!」
???「くくく、命知らずな人間だ!!さっきのオルテガとか言う馬鹿同様、たっぷり痛めつけてなぶり殺しにしてくれる!!」


とも「お前の敗因はたったひとつ……信頼できる仲間がいなかった、ということさ」
???「……ククク、だがな……光ある限り闇もまた生まれる……いつか必ず、再び世界を暗黒に包む者が現れよう……だがお前たちは年老いて、既に存在しまい……クックック……」
とも「残念だったな、平和を愛する心がある限り、俺たちの意志は死なないのさ。親から子へ、子から孫へ、孫から子孫たちへ……赤い血が意志を繋いでくれる、それが俺たちの【永遠の命】さ。オルテガと勇者のように、その意志は世代を越えて繋がって行くんだ。もっとも、お前には永遠に理解できないことかも知れないがな」





 そしてついに、戦いは終わりを告げる。ロトの称号を受けた若者と仲間たちは新たなる旅路へと去り、その偉業は人々の心に永遠に残る伝説となった!!


 次回、ドラゴンクエストIII・最終回「そして伝説へ」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)










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