第57話 温泉まんじゅうをもとめて
さて、「絶望王国」ラダトームを出発した勇者たちです。前回触れませんでしたが、「マイラ」という温泉村があるという情報を得たものですから、これはもう行かないわけにはいきませんね。 まさはる(以下、まさ)「いよいよ、いよいよ夢にまで見た『ウハウハスポット』ですね旦那!」 ほだか(以下、ほだ)「そうでんな番頭さん!「盗賊の鍵」「最後の鍵」と裏切り続けられましたが、今度はもうバッチリのはずですぞよ!」 まさ「「なんたって『温泉』ですからのう、湯上がり美人どころか混浴なんてのもありえますぞ旦那!」 ほだ「ずっと楽しみにしていた温泉でんがな!素晴らしい!!」 ……なにを考えてるんですかね、この人たちは。 まさ「くーっ、イシスに行く前の俺だったら……」 ほだ「なんで?」 まさ「今の俺は愛に生きる男、そのような誘惑に負けるわけにはいかないんだっ!」 ほだ「なぜ?負けたっていいではないですか番頭さん、温泉は大自然の神秘……大自然に勝とうなんて考えはあきまへん!」 まさ「し、しかし……」 ほだ「あの大自然のふところに抱かれて、芳醇な香りさえ身につけた『温泉まんじゅう』……その魅力には、何者も抗うことはできないのさあっ!」 まさ「……温泉まんじゅう?」 ……なんだか、ちょっと話が食い違ってきたみたいですね。 ほだ「そうだよ、温泉まんじゅう!地熱によって暖められた地下水が蒸気となって、まんじゅうを蒸し上げるのはまさに大自然の英知!」 まさ「いや、あの、俺が言ってるのはまんじゅうじゃないんだけど……」 ひでかず(以下、ひで)「どうする、この人たち」 ともき(以下、とも)「お城では『船で行け』って言ってたけどさ、役に立ちそうにないな」 まさ「俺は『何にも船長』だから何もしないぞ」 とも「馬鹿言うな、人間少ないんだから手伝え」 ほだ「トホホ〜、なんで俺は甲板掃除?」 ひで「温泉まんじゅう食べたければ、キリキリ働く!」 ほだ「……自分があんこ苦手だからって態度大きいぞ」 とにかく、船出です。夜の海っていうのは結構不気味な感じがしますね、波のうねりが黒くよどんでいるように見えて、気分まで鬱になってくるようです。 ほだ「むむっ、海岸沿いに民家発見!」 とも「よし、接舷!」 まさ「船長は俺〜(泣)」 とも「はいはい判ったよ、どうぞどうぞ」 まさ「よし、では接舷!」 ひで「アホみたい」 ![]() ほだ「こんな半島のさきっぽに一軒家か……」 まさ「ダンジョンだったりして」 そんなことを言いつつ中に入ると……そこでは老夫婦がのんびりまったりとお茶を飲んでおりました。
ほだ「吟遊詩人か〜、いいですね。憧れちゃうなぁ」 とも「でもさ、歩きながら歌を歌っているだけの人だったらちょっと怖いぞ」 ひで「そんなわけないじゃないか(苦笑)」
まさ「銀の竪琴?」 ほだ「水島〜っ!一緒に日本へ帰ろう〜っ!」 ひで「それは『ビルマの竪琴』だよ」 ほだ「こりゃまた失礼しました〜!」 老夫婦は、突然乱入してきたコントグループに苦笑することしかできません。そりゃそうですよね、突然こんなレベルの低いお笑いを見せられたのでは仕方がありません。とにかく船に戻り、しばらく進むと村が見えてきました。あそこがマイラでしょうか? ![]() ほだ「うん、イオウの匂いがする。確かに温泉郷だ!」 マイラの村に着いた勇者たち、あちこち物珍しげに覗き回ります。ほんとうはもう少し余談を含みたいのですが、ストーリー展開を少し早くしたいので割愛させていただきます。 ほだ「うわーい、温泉だっ!」 まさ「なんだよ、露天風呂に入ってるの、じいさんだけじゃないか……」 ほだ「ったく、そういうことじゃないだろう!?まんじゅうだよ、問題はまんじゅうが見あたらないことなんだよ!!」 ひで「それも違うと思うけど……あれ?」 ひでかずが、草むらにキラリと光る何かを見つけました。走り寄ってみると、それは笛です。 ![]() ひで「妖精の笛……まぁいいや、貰っておこうっと」 しかし、夜の温泉街というのに、人があまりいませんね…… とも「やっぱり、魔王のおかげで湯治客がいなくなってるのかな?」 ほだ「まんじゅうがあああァーーーーッッッ(絶叫)」 とも「あーもううるさい!いいからあちこち話を聞いてこい!」 一人で放り出された勇者です。仕方ないのであちこち回ることにしましたが……おっと、どこかで見たような服装の人がいますよ? ![]() ほだ「え、じゃああなたはジパングの人か?」
ほだ「どうやって来たんだろう?ギアガの大穴には、今は普通の人は近づけないはずだし……」 まぁ、アレフガルドは地底にあるようですし、深い洞窟が何かのはずみでアレフガルドに繋がったということはあるかも知れません。
ほだ「刀鍛冶か……なにかイカす武器作って貰えるのかな?」 RPGでは、日本刀が結構強力な武器として登場するのがお決まりみたいなものですから(FFしかりWizしかり)これは期待できそうです。
ほだ「オリハルコン!?それって、赤くなって熱くなって、イルカに乗った少年が持っているヤツ?」 えーここでちょっと真面目なお話を。伝説の金属と言われるオリハルコン、現実世界では太平洋のまん中にあったとされる「ムー大陸」で精製された金属ということになっています。特徴としては赤く、そして物を切るときには熱くなるという性質を持っていたそうで、その特徴は日本神話にある「ヒヒイロカネ」という超金属と共通しています。 「ヒヒイロカネ」はその名の通り「火の色をした金属」であり、深紅に輝く金属であったそうです。日本神話とムー大陸伝説、どちらにも共通する謎の金属……なんだかちょっと面白そうだとは思いませんか? ちなみに漫画「海のトリトン」で主人公のトリトンが持つ短剣オリハルコンが輝き熱を持って敵を倒す、というのもこのオリハルコンの特性から由来した物です。
ほだ「カンダタのヤツ……だんだんやることがセコくなってきてたってわけか……それで捕まって牢屋行きかよ、バカだねぇ」
ほだ「えっ、もうないのか!?」 ほだかはなんだかがっかりしてしまいました。無理もありません、その「王者の剣」が恐らく最強の武器なのでしょうが、もうこの世には存在しないらしいのです。 一応元鍛冶屋のジパング人を見つけた勇者は、仲間の待つ宿屋へと戻って今までの話をしてみました。 まさ「ふむ、なるほどね。じゃあそのオリハルコンとかいう金属を探し当てて、鍛冶屋に持っていけばどうにかなりそうだな」 ほだ「あーあ、きっと俺専用のイカす武器だったってぇのに……」 ひで「それより重要なヒントを手に入れたよ!僕がさっき拾ったこの「妖精の笛」、これがあれば精霊ルビス様の封印が解けるんだって!」 とも「しかもルビス様はここから西にある小島の塔に幽閉されているらしい」 ほだ「へー、なんか結構話がサクサク進むじゃないの、どうしちゃったんだ?」 まさ「まぁ、ここらへんで一発ビシッとキメとかないとな」 確かにまぁ、ボケさせておけばずっとボケ続けるであろうパーティーですから、こうやってキャラクターが話を進める気になっている時に進めておかないと脱線しまくりで先に進めなくなりますからね。 ほだ「よし、じゃあまずは精霊ルビス様の封印を解くぞ!」 まさ「おう!」 とも「じゃあ、明日の朝……っつっても夜なのか……まぁいい、休んでから出発だ!」 ひで「さー寝よう寝よう」 精霊ルビスが封じられているという塔、そこで勇者たちを待ち受けているものは!?そして、このスチャラカパーティーは本当に精霊ルビスを解放できるのか?……といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。 では、次のお話でお会いしましょう。 世界がこのまま平和でありますように…… 次回予告 星が流れるとき、命が消える……そんな歌を歌いながら旅を続ける吟遊詩人・ガライ。彼を蝕む病魔の源こそ、彼の歌に生命の神秘を垣間見た魔王の焦りだった。 鮮烈なメロディーと辛辣な歌詞がひとつになる時、虹の彼方から勇者が現れると人は信じ、そして待っていた。 そしてついに、その時が来たのだった…… ???「一曲歌うたびに、私の命は縮んでいく……だけど私は歌う、限りある命を燃やし尽くすために!」 ほだ「……あなたの父上と母上に、会いました」 ???「言わないでください!私は、私人としてのガライを捨てたのです!この闇が支配する世界に、光を灯す礎となるべく生を受けたものなのです!」 とも「力が……力が沸いてくる……この暖かさは、いったい……」 ???「♪神よ!我が愛しき精霊たちよ!この戦人たちにあなた方の加護と友愛を♪」 ひで「これが、歌の力だっていうのか?」 ???「これで……私の使命も……終わり……ます……」 まさ「馬鹿言うな、じゃあお前の老いた両親は誰が面倒見るんだ!!こんな所でくたばってる場合じゃないだろうに!……エリー、そうだ、あの娘もどうするんだ、お前の帰りをずっと待ってんだぞ!!」 限りある命、そして連なっていく命……復活したルビスの力によって呪いを解かれたガライは、ようやく自分のために歌うことができた。そしてその歌は、命と愛と友情を乗せて世界の隅々にまで響きわたった!! 次回、ドラゴンクエストIII「交響詩・銀の竪琴」、ご期待ください! (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください) 第58話へ 「DQ3-Replay」トップに戻る | |||||||