第56話 父よあなたは強かった


 さて、「闇の世界・アレフガルド」に到着した勇者一行です。とりあえず手近な街で情報収集に入るわけですが、もう夜も更けていますね。


ほだか(以下、ほだ)「うーん、まずは宿屋かな。明日の朝から行動開始だ」
ともき(以下、とも)「どれくらい意識を失ってたんだろうな?ギアガの大穴に着いたときは、まだ昼だったんだぜ」
ひでかず(以下、ひで)「でも、落ちた僕たちは衝撃で気絶したとしても、降りた人はどうして気絶したの?」
とも「それが不思議なんだ。俺、別に気を失ったような記憶はないんだけどな」
まさはる(以下、まさ)「なんか嫌な予感がするぞ。そもそも「闇の世界」って言うくらいだからな」
ほだ「まぁいいさ。とりあえずそこの人に話を聞こう……どうも、こんばんわ」


 夜というのに、結構人が出歩いています。案外不健康な街なのでしょうか?とにかくその青年は特に眠たい風でもなく、はきはきと答えました。

*「ラダトームの町に ようこそ。



ほだ「良かった、間違えてはいなかったようだ」
とも「じゃあ向こう岸の城は何だろうな?」
まさ「いいから宿に泊まろうぜ」


*「ひと晩 4ゴールドですが
 お泊まりに なりますか?

とも「うっわ、安い!!1人たったの1ゴールドで泊まれるのか!」
ひで「いいねいいね、価格破壊だよこれは!」


 もちろん破格の安さですから、「はい/いいえ」なんて聞かれても「はい」という返事しかありませんよね。というわけで、一同さっさと部屋に入ったのでした。





ほだ「ちょっと待て。なにが『おはようございます』だ、もう夜じゃないか!」
まさ「あれ?でも俺の時計じゃ、朝の9時だぞ」
ほだ「え?」


 そもそもこの人たちが時計を持っている、というのも変な話ですが……とにかく、朝というのに夜というのはこれいかに!?


まさ「なーんか嫌な予感がしてたんだよ。『闇の世界』っていうのはこういうことなんだな」
とも「つまり、『朝が来ない』ってことか。だから闇の世界ってことか」
ひで「……ここの人たち、お正月に『初日の出』とか見られないのかな?」
ほだ「あのな、そもそもここは「ギアガの大穴」から落ちてきた場所なんだぞ?太陽なんか見えるわけないじゃないか」


 ……まだなんとなく納得しかねる勇者たちですので、町の人に話を聞いて回ることにしました。

*「魔王バラモスを たおした
  ですって?
  でも バラモスなど
  大魔王ゾーマの 手下の
  ひとりに すぎませんわ。



*「ここ アレフガルドは
  閉じられた 闇の世界。
  ただ 絶望が あるだけですわ。



*「魔王は 絶望を すすり
  にくしみを喰らい 悲しみの
  涙で のどを うるおすという。
  われら アレフガルドの人間は
  魔王に かわれているような
  ものなのか……。



ほだ「あーもううざったい!なんでこうもマイナス思考の奴ばっかりなんだ!」
とも「そりゃまあ、朝のない世界ってこんなものだろ」
ほだ「どういうことだよ」
とも「だってさ、朝起きたらもう夜なんだぜ?気持ちの切り替えも何もあったもんじゃない」
ほだ「クッ……」


 勇者はいらいらしながら、教会の二階へと上がっていきました。するとそこは牢になっており、中に囚人がひとり、います。


ほだ「やや、お前はパンツ男……あれ、服着てるよ……」


 そう、前の世界ではさんざん悪いことをしてきたカンダタが、なんと服を着て捕まっているではありませんか!こちらの世界の警察は、案外強いようです(笑)。

*「悪いことは できませんなあ。
  こんな世界に 落とされて
  今ではマジメに やってますよ。

ほだ「マジメになにをやってんだ?」
まさ「そりゃもちろん『おつとめ』だろう、こんな独房に入れられてんだから」


*「そうだ! 昔のお礼に
  いいことを 教えましょう。


ほだ「あ゛ー?『覆面パンツ健康法』なんか知りたくもないぞ」
ひで「まあまあ、聞いてあげようよ」

 なんでしょうかね、その健康法は(笑)。

*「ラダトームのお城には
  太陽の石 ってヤツが
  あるらしいですよ。


まさ「それだっ!」
とも「なんだ?」
まさ「太陽の石、それがこの世界に光をもたらすアイテムだとは思わないか?」
ほだ「でもよぅ、ならそこの王様がとっとと光をもたらしてるとは思わないか?」
まさ「……ならこうしよう、確かに太陽の石はある。あるんだが、取れない」
ひで「え?」
まさ「つまり、太陽の石を手に入れるには、何かしら別アイテムが必要だとか、強いモンスターを倒さなければならないとか」
ほだ「そんな強いモンスターが城の中にいたら大変だぞ」
まさ「……うっ、うるさい!とにかく城に行って『太陽の石』をゲットするんだ!」
とも「はいはい、判りましたよ……じゃあなカンダタ、きっちり悪事の償いするんだぞ」


 一同はきちんと牢獄の鍵を閉めて、ラダトームのお城へと向かいました。カンダタにしても、いくら悪事を働いたところで勇者たちにボコボコにされるわけですから、ならば更正した方がよっぽど楽なわけですよね。


ほだ「ふむ、ここがラダトームの城か」


 結構立派なお城です。古い石垣などを見ると、アリアハンの城と同じくらいの時期に建造されたもののように思えます。


まさ「まぁいいさ、とにかく情報集めだ」


 いささか駆け足になってしまい申し訳ないのですが……大河を挟んで対岸に見える城は大魔王の城であると言うこと、魔王がこの城の宝である武具を持ち去ってしまったということ、魔王が持ち去った三種の武具を集めればあるいは魔王を倒せるかもしれないこと、そして……

*「アリアハン!?
  どこかで 聞いた 名前だな。


ほだ「え?」


ほだ「ま、まさかオヤジ!?」
ひで「まさか!だって、勇者オルテガは火山の火口に落ちて……」


 おおっと、思わぬ情報です!もしかして、あの勇者オルテガがこのアレフガルドに来ているのでしょうか!?

とも「判らない……とにかく、この国の王様に会って話を聞こう、な?」
ほだ「あ、ああ……」

 父の消息を聞いてちょっぴり動揺した勇者ですが、とにかく王様に会って見ることにしました。王様なら、なにか知っているかも知れませんからね。
 王様との謁見室へと向かう途中で「太陽の石」をゲットしたりなんかしちゃったりして(ごくアッサリ)、結構調子のいい勇者たちですが……

王「うん? 見ぬ顔じゃな。
  そうか そなたらも また
  上の世界から 来たと申すか。

まさ「上の世界、か」

王「わしが この国の王 ラルスじゃ。
  わしの所に来るまでに
  人びとの話から おおよそのことは
  聞きおよんでいるであろう。


ひで「おおよそのことって……」

王「もはや この国には
  絶望しか 存在せぬ……。


とも「またそれか……王様自ら悲観的になってどうするんです?」

王「しかし もし そなたらが
  希望を もたらしてくれると
  いうなら 待つことに しよう。

ほだ「……待つだけかよ」


 王様はため息をついて、あとは何も言いません。何か聞こうとするとため息をいてばかりなので、勇者はもう王様とは話をしないことに決めました。絶望の大地アレフガルドですが、いくらなんでも王様自ら無気力になったのでは救いがなさ過ぎです……といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……






ほだ「やっぱりオヤジは来ていたんだ……」


とも「火傷……火山の火口に落ちたんだったっけな、確か」
ひで「その時の火傷かな」


ほだ「……オヤジ」
まさ「……行こう、オルテガさんに追いつかなきゃ」
ほだ「……ああ、待ってろよ、オヤジ!!」








次回予告


 十数年ぶりに出会った父親は、記憶を失っていた。戦いの中で甦る悪夢、そこから逃れるために父が選んだ道は、強い意志による記憶の削除だった……


ほだ「いいえ、知りません」
???「そうか……気のせいかな、私には君が……」
ほだ「気のせい、気のせいですよ!!じゃあ僕たちは出発しますから!」

まさ「ちくしょう、このままじゃ!」
ひで「弱音を吐く前に戦ってよ!!」
まさ「やってるだろうが!!これじゃ足りないんだ、間に合わないんだよ!!」

???「君は?」
とも「通りすがりの賢者ですよ」



 父を、そして全ての人を守るために戦いへと身を投じる勇者たち。その時、賢者の持つ「太陽の石」がまばゆい輝きを放ちだした!!


 次回、ドラゴンクエストIII「輝け、太陽の石」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)










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