第53話 ご期待に応えて


 ついに、長き戦いの旅に終止符を打った勇者たち!魔王バラモスは勇者たちの熾烈な攻撃に屈し、その邪悪な命を終えようとしているのです!


 バラモスは肩で息をしながら、それでも精一杯の虚勢を張って勇者たちを睨みます。


バラモス「わ…わしは……
  あきらめ…ぬぞ……ぐふっ!



 言い終えると、バラモスの体は光に包まれ……そして風の中へと消えていきました。


ほだか(以下、ほだ)「ふん、何言ってやがる……」
ともき(以下、とも)「これで世界に平和が戻る……長い戦いだったな」
ひでかず(以下、ひで)「これで……終わったんだよね?」
まさはる(以下、まさ)「たぶんな……もし逃げたとしても、俺たちの力で倒せることが判ったんだ、もう一度悪さをすればどんな目に会うか身をもって知っただろう」


 すると、どこからともなく声が聞こえます。



ほだ「誰だ!?どこかで聞いたことのある声……」


あなたたちは 本当に
よく がんばりました。


ほだ「誰だろう……ずいぶん前に聞いた声……」

さあ お帰りなさい。
あなたたちを 待っている
人びとのところへ……。


ほだ「うーん、誰だったかな……冒険の旅に出る前か?ああ思い出せない、何かとても不愉快な思いをしたような気がするんだけど……あんた、誰?」


 それに対する答えはなく、突然勇者たちの目の前がゆがみ始めました。まるで旅の扉にも似た感覚が勇者たちを包み、気がつくと4人は懐かしいアリアハンの地に立っていたのです。



ひで「あれ?」
ほだ「ちくしょう、話は終わってないっちゅーに!誰なんだよいったい!」
まさ「う……帰って、きたのか?」
とも「……間違いない、ここはアリアハンだ!!」
ほだ「そんなことより問題はあの声の正体だ!」
まさ「んなこたぁどうでもいいんだよ!俺たちは魔王を倒した英雄だ、故郷へ錦を飾るときが来たんだぜ!!」
ひで「いやーやっと枕を高くして眠れるよ、自分の枕が一番だもんね」
とも「まずはお城で王様に報告しよう!どんなご褒美が出るか楽しみだ」


 若干一名、不満そうな顔をしていますが……とにかく、凱旋帰国!



 なんと、数人の住民がほだかたちを待っていたのでした!

*「勇者だ!勇者が
  魔王バラモスを たおして
  もどってきた!

まさ「おいおい、俺たちだっているんだぞ」


*「わーい わーい!

ひで「まぁ、いいじゃないの!僕たちがいてこその魔王退治だったんだから」


*「これで…これで 平和が
  やってくるのじゃな……。

とも「はい、ようやくこの地に平安を取り戻すことが出来ました」


*「おつかれさま……そして
  ありがとう ほだかさん!

ほだ「いやいやあっはっは、どーいたしまして!」
まさ「チェッ、どうしていつもいつも……」
とも「しつこいと女の子に嫌われるぞ」
まさ「うむっ……よし、我慢我慢」


 その後は特に変わったこともなく、懐かしいアリアハンのお城へと一同は到着しました。



 お城では、王様が満面の笑顔で勇者たちを迎えます。衛兵も整列して出迎えてくれました。


まさ「いえいえあんなトカゲごとき、片手でチョイチョイです」
ひで「またそんな大げさなこと言って」


王「さすが オルテガの息子!
  国中の者が ほだかを
  たたえるであろう。

ほだ「フッ、当然のことをしたまでですよ王様……あたた、舌噛んだ」
とも「馴れないキメ方はしないほうがいいと思うぞ」

王「さあ みなの者!
  祝いのうたげじゃ!

ひで「うわーい、宴会だってさ!久しぶりにおいしい料理が食べられるよ!」
まさ「うまい酒が飲めそうだな!?」
ひで「僕、アルコールはパスね」
ほだ「つまんない奴……」


 料理やお酒が出る前に、景気づけとしてまずは衛兵たちがラッパを吹きます。衛兵の中でも試験に合格した者は「音楽隊」として、楽器の練習だけしてお給金が貰えるのです。午前中は受付業務や掃除なんかもしますけど、本業はどちらかと言えば演奏の方です。まぁK視庁とか消某庁、自A隊の音楽隊と似たようなものだと思ってください。

まさ「……あんまり上手じゃないな」
とも「チューニング狂いすぎ」


 まぁ、長い間勇者たちを待っていたわけですから、楽器が冷えてチューニングが狂うくらい仕方がないことなんですけどね。と突然地響きがして、辺りが暗くなったかと思うと、天井あたりが青白く輝きだしました。

ほだ「なんだ!?」
ひで「……あんまりいい感じはしないな」


 その光は大きくなり、そして……雷撃へと姿を変えると、衛兵たちに襲いかかったのです。あっと言う間に6人の衛兵ははじき飛ばされてしまいます。

とも「クッ、医者は、医者を呼べ!」


 うろたえる一同の頭上、まだ残っていた光が妖しく蠢き、そしてそれはまるで顔のように姿を変えました。邪悪な笑みを浮かべたその顔は一同をぐるりと見回して、ぺろりと舌なめずりをしました。


ほだ「おっ、おっ、驚くもんか!」
とも「思いっきり驚いてるがな」


 その顔はニヤリと笑って、言葉を続けます。

*「わが名は ゾーマ。
  闇の世界を 支配する者。


まさ「闇の世界、だって!?」
ひで「まさか、バラモスの知り合いか!?」

*「この わしがいる限り
  やがて この世界も
  闇に 閉ざされるであろう。

とも「知るか!こっちには勇者がいるんだぞ、バラモスをも撃退した勇者がな!」
ほだ「お、驚いてなんかないって言ってんだろ!!」
とも「……」

ゾーマ「さあ 苦しみ 悩むがよい。
  そなたらの苦しみは
  わしの 喜び……。

まさ「趣味悪いな……」


ゾーマ「命ある者 すべてを
  わが 生けにえとし 絶望で
  世界を おおいつくしてやろう。

ひで「間に合ってます」
とも「……それで引き下がってくれるようなタマじゃないみたいだぜ?」


ゾーマ「わが名は ゾーマ。
  すべてを ほろぼす者。

ほだ「じゃあまずお前から滅びてくれ」
まさ「そーだそーだ、いいこと言うなお前!」
ほだ「まぁね、だって俺勇者だし〜♪」

ゾーマ「そなたらが わが生けにえと
  なる日を 楽しみに しておるぞ。
  わははははははっ…………!

とも「他に楽しみを見つけた方がいいと思うが……って、いなくなっちまいやがんの」


 そう、言うことだけ言うとゾーマはいなくなってしまったのでした。


ほだ「ったく、楽しみにしてるなら勝手にしてろよ……で、ごちそうは?」


 この状況下でよくそんなことが言えたものだとお思いでしょうが、勇者たちはいままでずっと戦ってきたわけですから、非常事態にはそれこそ慣れっこなわけです。

まさ「さ、王様、とりあえずバラモス退治のぶんだけお祝いしましょうよ。後のことは後で考えればいいわけだし、ね?」
ひで「救急隊も来たから衛兵さんたちも安心だね。ささ、ごちそうを」
とも「高い酒なんてなかなか飲めないからね、たっぷり呑み貯めしとかなきゃ」




 王様はガックリです。でも、こんなので驚いていたら某ドラゴンボールなんて読んでられないですよね。次から次へと自称最強の男が現れて……関係ない話ですね、はい。


まさ「ですから、とりあえず取り戻したつかの間の平安を祝いましょう、ね?」

王「闇の世界が 来るなどと
  みなに どうしていえよう……。

ひで「無理に言う必要はないですよ、『知らないことは幸せだ』っていう格言もあるくらいですから」
とも「そういうわけで、アルコールを」

王「ほだかよ 大魔王ゾーマのこと
  くれぐれも 秘密にな……。

ほだ「いまさら箝口令ですか?」

王「もう つかれた……。
  さがって よいぞ……。

まさ「さがってよいぞ、ってあの、宴会は?」
ひで「ちちちちょっと、僕のごちそう!」
とも「ぬお〜、高い酒〜!」

 一同、衛兵につまみ出されてしまいました。落胆した王様の前で騒ぎすぎるからですよ、ねぇ。


ほだ「……くっくっくっ、そうかそうか、そうなのか!!」
とも「どうした?」
ほだ「俺のこの手が真っ赤に燃える、恨みを晴らせと轟き叫ぶ!!食い物の恨み、宴会の恨み、酒の恨み!!」
まさ「判っているとも、皆まで言うな!」
ひで「例え地の果て海の果て、ゾーマがいずこにいようとも!」
ほだ「そう!この恨みを怒りに変えて、完膚無きまで叩きのめすッ!!」
まさ「行くぞッ、ゾーマとかいう奴に俺たちの心の痛みを教えてやるんだッ!!」
ひで「応ッ!!」


 なんか勝手に盛り上がって、ともきを除く3人は走り出してしまいました。一人取り残されたともきですが、しばし考えた後に「ぽん」と手を叩いて、仲間たちの後を追いました。……といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告



???「どうしてあなた方が行かなければならないのです?もう充分に戦ったのに、どうして……」
まさ「ああ、俺も最初はそう思ってた。だけどさ、このまんまじゃ中途半端なんだよ」
とも「ご免なさいね〜、ちゃんと無事に返しますから」
???「どうせやるなら思いきり暴れてこい!くさい匂いは元から断つ、ってな」
ほだ「判ってる。今度ので本当に終わりにしてやるさ」
ひで「……あ、ラーミアが来たよ!」
まさ「きっちりケジメつけてくる……もう二度と、誰も理不尽な哀しみを背負う必要はないんだ」
とも「そういう世界をこの手で迎えられるのなら、ゾーマだか造花だか知らないけど、やっつけてやるさ!」
ほだ「……造花っていうのはどうかと思うぞ」
???「……とにかく、頑張ってくださいね、兄さま」
まさ「もちろん!」
???「負けるなよ!負けたら承知しないからな!」
ほだ「はいはい、判ってますってば」
???「返事は一度でよろしい!」
ひで「負けるもんか、絶対に……」
とも「お前?」
ひで「……いいんだよ、ちょっとセンチメートルになっただけだから」
とも「センチメートル?」



 新たな敵、その名はゾーマ……まがまがしく響いたその名は、神話にも登場する暗黒神のことだった。色めき立つ兵士たち、不安におののく城下の人々……その声にならぬ叫びを胸に受けて、再び勇者が立つ!


 次回、ドラゴンクエストIII「始まりの地アレフガルド」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)










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