第50話 方向音痴


 さて、ラーミアの背に乗り大空へと飛び立った勇者たちです。が、賢明な読者のみなさんは覚えていらっしゃいますよね?

 そう、神殿に入ったのは夕暮れ時。ラーミア誕生まで少し間があったとして、飛び立った時点ですでに夜へと突入していたのでした!そしてラーミアは鳥さんです。つまり、鳥目なわけですね。


ほだか(以下、ほだ)「むわ〜、いったいここはどこなんだ!?」
ともき(以下、とも)「知るか!」
まさはる(以下、まさ)「大失敗だな」
ひでかず(以下、ひで)「そうみたいね」
ほだ「んっ!?あんなところに城が!」
まさ「おお、本当だ!」
ひで「バラモス城だったりして」
とも「とにかく着陸着陸!後のことは後で考えるべきだ!」


 上空の空気は冷たく、凍えそうです。方向を見失ったラーミアは右往左往、乗っている勇者たちは寒さに震えるという無茶苦茶な状況の元、眼下にお城を発見した勇者たちは緊急避難を決定しました。


ほだ「周りが水じゃないから、バラモス城じゃないだろ」
ひで「もっと強い敵がいたりしてね」
まさ「縁起でもないこと言うなよな」



 さて、ぶじ着陸したラーミアから降りた勇者たち(長いですね)は、さっそくその古びたお城へと足を踏み入れました。

まさ「おおー、意外と古い城だな」
ひで「でも手入れは行き届いているみたいだね」
とも「なら、少なくとも魔物の城じゃなさそうだ」


 そんなことを言いながら門をくぐると……そこには信じられない光景が広がっていたのです。



ほだ「うううう馬が喋った、馬馬馬馬!!」
まさ「はいはい、もうスーの村で見たじゃないか」


 まぁ馬が喋るなんて本来はあり得ないことですからね、驚く気持ちは判ります。でも、こう何度も驚かれては、つきあう方もたまったものじゃないですもんね。


とも「それよりもさ、『竜の女王様』ってあたりがこう、『ドラゴンクエスト』って感じだよな!」
まさ「あっ、俺も今それ考えてた!」


 とにかく、ずんずんと奥へ進みます。誰も止める人はいませんからね〜。




 ステンドグラスの前にたたずんでいたエルフは、物怖じもせずにそう言いました。

ほだ「天界か……もし神さまがいたとして、なんでバラモスをやっつけてくれないんだろう?」
まさ「さあね……案外、バラモスが神さまだったりして」
ひで「冗談でも良くないよ、そういうの」


*「もし まことの勇者の称号を
  得た者が いたなら その光の中で
  天界に みちびかれるそうですわ。



ほだ「ぢつは『あの世』だったりしてな」
とも「で、さっき倒したバラモスともう一回、ってか?」


 バカな話をしながらずんずん進みます。狭い通路を通り、いくつかの小部屋を抜けた先にもう一人、エルフがいました。





ほだ「ほう、竜の女王様はタマゴを産んだらしいぞ」
とも「しかも体が弱っているらしい。これをなんとかできれば、一躍ヒーローに♪」


 なんか不純なこと考えてるみたいですが(汗)、とにかく!一行は大広間へとたどり着きました。



ほだ「あ、私はアリアハンの勇者でほだかです」
まさ「その保護者で武闘家のまさはるです」
ほだ「なんだそりゃ」


 勇者たちのくだらない冗談は、竜の女王の心を癒やすまでには至らなかったようです。額に脂汗を浮かべて吐息も荒く、それでも微笑んでみせる竜の女王、健気です。

*「もし そなたらに 魔王と
  戦う勇気が あるなら
  ひかりのたまを さずけましょう。



ひで「ありますとも!そのために、長く苦しい旅を続けてきたんです!」

*「この ひかりのたまで
  ひとときも はやく 平和が
  おとずれることを 祈ります。



とも「任せてください!」


 竜の女王はにっこりと笑うと、ほだかに光の珠を渡しました。


*「生まれ出る 私の赤ちゃんの
  ためにも……



まさ「あっ、女王?」


*「………。



 竜の女王は言い終えると、タマゴを残して光と消えていきました。


ほだ「……これ、って、死んじゃった、ってこと?」
とも「そ、そうなのかな?」
ひで「判るよ、女王は天に帰ったんだ」

 ひでかずはそっとタマゴに触れてみました。

ひで「暖かい……」






 さぁ、竜の女王から貰った光の珠を握りしめ、今度こそバラモス城へと飛び立ちます!といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告


 まるで要塞のようなバラモス城へとたどり着いた勇者たち。そこで待ち受けていたのは、魔王を守護する千体のモンスターたちだった……
 激しく長い戦いの中で傷つき、疲れ、そして離ればなれになっていく勇者たちを、魔王軍最悪・最凶を誇る親衛隊が狙う……


???「久しいな、武闘家よ?」
まさ「悪いけど、魔物に知り合いはいないんでね!」
???「そうか?俺はお前のことをよっく知っているぜ?左の脇腹に古傷があることや、お前の攻撃こそは一流だが、防御は三流だってことをな!」
まさ「なに!?なんだこいつの動きは……まさか、まさか!?」


???「貴様は知識のしもべになるのだ!」
とも「なんだと!?」
???「その欲深い頭脳が求めているのが、我が輩には聞こえるのだよ……もっと新しいことを知りたい、世界の真実を知りたいと思っているな?」
とも「うっ……」
???「だから教えてやる、世界の全てを!そして貴様は知識のしもべとして、終わらぬ勉学の虜になるのだ!!」


ひで「そんなわけがない!」
???「そうかしら。真実がいつも自分に優しいと思うから、信じられないのではなくて?」
ひで「だって、そんなのおかしいよ!」
???「そう?あなたにもう一度会わせてくれるってバラモスは約束したのよ?そしてその約束は、今こうして果たされたの。ならば、今度は私が約束を守る番よね?あなたを殺せば、あなたの魂は私と一緒に未来永劫輝き続ける!!」
ひで「君は……いや違う、これは罠だ!ここは退く!」
???「逃がしはしないわよ、だって愛しているんですもの!!」


ほだ「ここは……」
???「待っていたぞ、勇者よ。立派になったな」
ほだ「まさか……親父……親父なのか!?」
???「お前の活躍は私の耳にも届いていたぞ……父の名に恥じぬ行い、それはまさしく真の勇者のもの。この父も鼻が高い」
ほだ「しかし、親父は死んだはず……」
???「死んだと見せて機会を伺っていたのだ……魔王は執念深い、私が生きていると知れば、まだ幼いお前や母さんたちにも危害が及んだだろう」
???「どした、誰かいるんか?」
???「おお、お前か、丁度いい。紹介しよう、俺の息子のほだかだ。こいつは勇者サイモンだ、お前も名前を聞いたことくらいはあるだろう?」





 次回、ドラゴンクエストIII・最終回「最終決戦、闇の城」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)










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