第47話 しんみり


 さて、オリビア岬を抜けるために「愛の思い出」を手に入れた勇者たちです。いよいよ問題の岬へと、船は進んでいきます。いやぁ、やっと話が順調に進み出しました。


まさはる(以下、まさ)「勇者サイモンの持つガイアの剣……そいつを手に入れたら、どうなるんだろう?魔王バラモスが勇者オルテガと勇者サイモンを会わせることを阻んだ理由がその剣だとして……」
ひでかず(以下、ひで)「どうしたの、珍しく真面目な顔して」
まさ「珍しくだけ余計だ。……いやな、ガイアの剣とはなんぞや?と思ってな」
ひで「火山の火口に投げ入れれば道が開く、っていう情報もあったよね。残りのオーブがネクロゴンドにあるとして、バラモスのいる城もネクロゴンドだ。なら、バラモスにしろオーブにしろ、カギになるのがガイアの剣じゃないかな」


 甲板で空を見上げながら、真面目に考えている二人です。オチャラケパーティーでも、そろそろ話が大詰めを迎えていることに気づいたのでしょうか?


ひで「……ご子息には悪いけど、勇者サイモンはたぶん死んでるよ……行方が判らなくなってもう10年以上だもの、勇者オルテガもたぶん……」
まさ「言うなよ……あいつも薄々は感じているだろうがな。決定的な証拠が出るまでは、はっきり言わない方がいいだろう」


 さて、その息子はと言いますと……船室で机に向かい、なにやらペンを走らせています。


ともき(以下、とも)「ん?なに書いてんだ?」
ほだか(以下、ほだ)「ああ、手紙だよ。家にな、たまには状況を知らせてやるんだ」
とも「手紙かぁ……考えたこともなかったな……」
ほだ「サマンオサに手紙を書いたらどうだ?」
とも「ん?」
ほだ「いやなに、勇者サイモンの消息が知れたら、だよ。お前一人でルーラして知らせてもいいけど」
とも「手紙にするよ、どっちにしろ暗い報告になりそうだからな」
ほだ「……じゃあ、やっぱりサイモンは死んだと見るか?」
とも「十中八九な。サマンオサの国民を人質にされれば、反抗だってできないし牢から脱走もできないだろう。それで10年以上……まともな人間なら、確実に死ぬさ。もし生きていたとしても、再び勇者として戦うことはできないだろう」


 こっちもなにか真面目に話をしています。


ほだ「面と向かって報告はつらいな……」
とも「先方も薄々気づいてはいるだろう……ただ、それが証明されないから期待しているだけだ。どちらにしても、化け物が国王とすり替わった時点で負けは決まっていたのさ……って、もう一通はどこ宛だ?」
ほだ「ああっ、そ、それは書き損じ書き損じ。いいからいいから」
とも「???」
ほだ「はいはい、もう少し書くからちょっと席を外してくれ」


 ほだかは慌ててともきを船室から追い出しました。


ほだ「ふう〜、危ない危ない……こんなの見られたら、何てからかわれるか判んないからな」


 宛先はひ・み・つ♪まぁ、いろいろあるんです、いろいろ。さて、甲板ではまだひでかずとまさはるが話し込んでいます。


まさ「バラモスか……どんな奴だろうか?」
ひで「魔王を名乗るくらいの奴だからね……しかも、呪いや作戦がとっても陰湿だし。きっと根暗で女の子にも相手にされないような、クラスでもいじめられっ子だったような奴だよ」
まさ「クックックッ……もうじきだ、もうじきバラモスの鼻っ柱を叩き折れる!ブチのめしてやる!そうすれば俺は晴れてイシスに戻れるんだ!」
ひで「……」
まさ「あっ、す、すまん、つい……」
ひで「……いいんだよ、僕もバラモスの奴は思いきり殴ってやらないと気が済まないんだから。人々の苦しみをエネルギーにするような性根の腐った奴は、生かしておいてはならないんだ。そしたら僕は僧侶にでも転職して、奴の犠牲になった人の冥福を祈ることにするよ」
まさ「……本当にごめんな、思い出させて」


 ……さて、船は河をさかのぼり、ついにオリビア岬の手前まで来ました。


ほだ「よし、行くぞ!」


 船がゆっくりとオリビア岬を通過します。すると……


まさ「こっ、これがオリビアの呪い!?」
とも「船が戻される!!」


 歌声と共に、船は後ろへと引き戻されます。ひでかずは道具袋から「愛の思い出」を取り出し、海に投げ入れました!

ひで「オリビアさん、受け取れ!!」


 すると、辺りは暗くなり……風が止みました。


まさ「あそこを見ろ!」


 まさはるの指さす方向、岬の向こうがぼうっと光ります。その光の中心には、美しい女性の姿が浮き上がります!


とも「こっちもだ!」


 丘の上に産まれた輝きの中には、あの幽霊船で見た青年の姿が!ふたりを包んだ光は、海峡の上で交わります。そしてエリックとオリビアは、再会の涙を流しました。

*「ああ エリック!
  私の 愛しきひと。
  あなたを ずっと まっていたわ。


*「オリビア ぼくのオリビア
  もう君を はなさない!




 エリックとオリビアは光と共にぐるぐると回り始め、そして天空高くへと消えて行きました……一同、あまりの出来事に呆然としています。


ほだ「……星に、なった、の、か?」
まさ「死が二人を引き裂いても、愛は奇跡を起こす……」


 辺りの明るさが元に戻りました。勇者たちは気を取り直して、船を進めます。今度は問題なく、岬を通過することに成功しました。


ひで「……さぁ、行こう」
とも「ああ」


 絶海の孤島にあるほこらへと足を踏み入れた勇者たち……


まさ「牢獄だって!?」
とも「サイモンを探すんだ!」


 幸い、牢獄はさほど広くありませんでしたので、勇者サイモンは簡単に見つかりました。いえ、「かつて勇者サイモンと呼ばれたものが見つかった」と言った方が、いいのかもしれません……



ほだ「遅かったか……」
ひで「……かならずカタキは討ちます、安らかに眠ってください」


 なんということでしょう、あのボストロールの言葉通り、勇者サイモンは既にその命を奪われていたのでした!


まさ「気にくわねぇ……いちいち気にくわねぇ!こんなに簡単に人間を殺しやがって、バラモスめ!」
ほだ「この報いを必ず、必ず!」



 ……さて、その後一行は勇者サイモンの亡骸のそばから、ガイアの剣を手に入れました。


ひで「これが『ガイアの剣』……」
ほだ「早く出よう……こんな場所に長くいても、気が滅入るだけだ」



 ほこらの牢獄から出た勇者たちは、大きく深呼吸をしました。



ひで「人は死してなお、自分の思いを伝えるものか。なら、愛する人の魂はこの世界に漂っているのかもしれない……全てが終わったら、それを探す旅に出るのも悪くない、か」
とも「なんて知らせればいいんだ……『父上は既に』とズバリ書くか?下手に希望を持たせてもそれはそれで残酷だし……出来ればあの姉弟の手で葬って貰いたいし……しかし、そんなことを俺から知らせたら、もう俺は合わせる顔がない!」


 ひでかずとともきを置いて、まさはるとほだかは船へと戻りました。


ほだ「……なんて言うか、もの凄く声をかけづらくないか?」
まさ「……ああ。参ったな、変に気を使うのも悪い気がするし、かと言って無神経に笑うわけにもいかないし」
ほだ「バラモスを倒したら、奴のせいで死んだ人たちが生き返る……というわけには、いかないよな」
まさ「そんな、小説やゲームじゃないんだぜ?」


 いや、これ、ゲームのリプレイ小説なんですけど……


ほだ「どっちにしろ、シャレじゃすまないイベントが多発してるってことは、もうじき決戦があるということに他ならない」
まさ「ああ、腕が鳴るぜ……どんな奴だろうと絶対に叩き潰す!」




 バラモスの非道な仕打ちに怒りを燃やした勇者たち、ついに物語もクライマックスへとばく進します!!世界を覆う闇を振り払いに、勇者たちは歩き出しました!!といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告



 遥か天空に超近代都市を築いた人々がいた。時と共にその都市の存在は忘れ去られ、今では伝説やおとぎ話の中に微かに存在するだけであった。しかし、突如霧の中から姿を現したその都市は、そのまま落下すれば半月後にはアリアハンの街を直撃し、その衝撃はレーベの村をも破壊してしまうであろうと魔術師は予言した。勇者たちはその飛行都市、ブリオニアの進路を変えさせるために、フライヤーヨットで出発した。



とも「この本は……遥か超古代の魔術全書!?ブリオニアの図書館とは、かくも素晴らしい場所だったのか!!」
ひで「こっ、これは伝説の本『キョジ=ンノホシ』!!読みたかったんだ、これ!!」


ほだ「サボー、さん?」
???「うむ、私がこのブリオニア最後の住人だ」


まさ「こいつら、まさかバラモスの手下か!?」
???「いや、それは防犯装置だ」



 永遠の命と引き替えに、ブリオニアを海上に回避させることに成功した勇者たち。しかし図書館にあった「闇の本」は魔王の部下によって持ち去られてしまった……
 魔王の真の力を引き出す「闇の本」を奪い返し、魔の力に終止符を打つため……勇者たちは闇の世界への道を知るという、仙人の修行場を目指す!


 次回、ドラゴンクエストIII「超文明の本」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)










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