第42話 オリビアの岬


 さて、グリンラッドにやってきた勇者たちです。さっそく、老人の住む家へとやってきました。


ほだか(以下、ほだ)「ども、こんにちは」
まさはる(以下、まさ)「あの〜、お願いがあるんですけど……」


 と、老人はひでかずの持っている杖を見て、突然叫びます。


ひでかず(以下、ひで)「そ、そ、そうですか?なら、差し上げ……」

*「ものは 相談じゃが
  この 船乗りの骨と つえを
  とりかえっこ せぬか?


ともき(以下、とも)「ひえ〜、そんなオカルトグッズいりませんよ!タダであげますってば!」

*「やっぱり だめか。
  そうじゃろうのう……。
  わっはっはっ。


まさ「いや、駄目とか言うんじゃなくて、交換じゃなく無償で差し上げたいんです!」


 しかし老人は『交換以外はせぬわ!』とばかりに首を振ります。ちなみにその『船乗りの骨』とはどういう外見かといいますと、酔っぱらいが持っているお寿司の折詰、白骨を組み合わせたオブジェをあんな風にひもでつるしたというあんまり気色の良いものではありません。


ほだ「タダより高いものはない、ってか……」
とも「仕方ない、じゃあ交換しましょう」

*「なんと まことか?
  なんでも いってみるものじゃ。
  では 船乗りの骨を わたそう!

ほだ「じじっ、冗談じゃない!そんな不気味悪いものを持てるか!」
とも「ああっ、持病の貧血が……くらくら」
まさ「悪いが、俺は箸より重いものは持ちたくない主義なんだ」
ひで「……はいはい、どうせ僕が持てばいいんでしょ?いつだってこういう役目は僕なんだから」


 ひでかずは『船乗りの骨』を手に入れました!交換で『変化の杖』を渡します。

*「いやー ありがたい!
  わっはっはっ。


とも「……ひょっとして、体のいい厄介払い?」
まさ「……持ち主は呪われる、なんてことはないよな?」
ほだ「……いや、持っていると悪夢をしこたま見るとか運が悪くなるとか、そういう副作用があるんじゃないか?なんたって白骨死体だろ?」
ひで「ンもう、みんなひどいなぁ……ってこれ、『ジパング製』って書いてあるぞ?」
ほだ「どれどれ……『原材料・樫』って……なんだ、木で出来てるよこれ」


 どうも骨を真似て削った木製のインテリアのようです。一同、ほっとしました。


まさ「まぁいいや、じゃあサマンオサにルーラしてくれ」
ほだ「俺はトヘロス唱えるから、お前ルーラ使ってよ」
とも「はいはい……ルーラ!」


 勇者と武闘家はまたまたこっそりVサインです。恋しい君の住む街へ!ってな感じですか?意地悪ですねぇ。街に寄らないのを判っていて、ルーラさせるんですから。


ひで「じゃあその教会に行こうか」
ほだ「おう……トヘロス!」


 サマンオサから東へ歩くと、外界との唯一の接点である旅の扉を備えた教会が見えてきました。さっそく中で神父さんの話を聞くと……


まさ「右、か」
ひで「前に僕たちがここに来たのは、左からだったよね」


 勇者サイモンが追放されたという扉へと、一同は向かいます。


ほだ「でもね、やっぱりこの『旅の扉』って好きになれないんだよなぁ」
とも「気持ち悪くなりそうでね」


 とかなんとか言いつつも、旅の扉へと足を踏み入れます。周囲の景色が揺らぎ、聴覚が途絶え、視覚が光を見失い……そして、ゆっくりとそれらの感覚が戻ったとき、勇者たちは知らない場所にいました。まぁ、初めての『旅の扉』ですから、知らない場所で当然ですね。


まさ「どこだ、ここは?」

ひで「オリビア……」
ほだ「確か『オリビアの首飾り』っていう曲、なかったか?」
とも「それを言うなら『オリーブの首飾り』だ」

*「しかし 死にきれぬのか
  通りゆく船を 呼びもどす
  そうです。


ほだ「はた迷惑だな〜、どうして怨念ってそういう風に無関係な人までも巻き込むんだろう?」
まさ「……悲劇を風化させないためだろう、きっと。二度と同じ過ちを繰り返すことのないように、訴えているのさ」
とも「方向が少しズレているような気もするが……」

*「もし 恋人エリックとの
  思い出の品でも ささげれば……。


とも「Mr.エリックの超魔術!」
まさ「10点満点中、2点」

*「オリビアのたましいも 天に
  めされましょうに。


ひで「ああ嫌だ、またテドンの村思い出しちゃったよ……」
ほだ「泣くな、あれはあれで良かったんだ、そうだろ?」
ひで「うん……」

*「うわさでは エリックの乗った
  船もまた 幽霊船として
  海を さまよっているそうな。


まさ「幽霊船ね……そこにエリックとやらの遺品もあるというわけか。でも、今は勇者サイモンの消息を知る方が先だな」
ひで「そうだね、とりあえず今どこにいるのか確認してみよう」


 ひでかずはさっそく地図で現在地を確認しました。


ひで「えっと、アッサラームの遙か北だね。ここから南下すれば、バーンの抜け道に出る」
ほだ「おや?そんな所なのか……でも、勇者サイモンの噂なんかちっとも聞かなかったぞ」
とも「しかし、目撃者の神父が確かに、ここへとサイモンは運ばれたと言っている」
まさ「なら、怪しい場所を探すしかないな!」


 勇者たちは岬の小屋を出て、あたりを探します。時が過ぎ、夕方になった頃、ふと顔を上げたひでかずが叫びました。


ひで「あっ、あれだ!きっとあれだ!」


 向こうの島に、ほこらがあります!きっとあそこにサイモンの手がかりがあるに違いありません!


ほだ「……でもさ、あそこって例の『オリビア岬』を通らないと行けないんだろ?地図見ると、北の方に続く川以外はみんな途中に橋があって、通行止めだ」
まさ「トホホ〜、じゃあ例のエリックとか言う男の乗った海賊船から遺品を持ってこなくちゃいけないのか!また面倒なクエストに繋がってるもんだ!」
とも「幽霊船って、どこにいるんだ?まずは幽霊船の場所を特定しないといけないんじゃないか」
ひで「今まであちこち回ってきたけど、幽霊船なんて見なかったもんね」


 一同がっくりです。本当に面倒ですねぇ。


ほだ「どっちにしろ、もう時間がないからエジンベアにルーラするぞ。船長なら幽霊船の噂を聞いたことがあるかもしれないし、ポンタの耳に入っているかもしれないからな」



 というわけで、厄介払いをしたつもりだったのに、いつの間にかもっと厄介なイベントに巻き込まれた勇者たちです。はたして幽霊船はあっさり見つかるのか?そして、オリビアの無念は晴らされるのか!?といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告



 伝説の機織り職人、ドン・モハメ。時を超えて受け継がれた名工の技は、見る人々を魅了して止まない。ある日市場に出回った『水の羽衣』は、そのドン・モハメの作と言いながらも信じられないほどの安価で取り引きされる。しかし、その縫製のいいかげんさに消費者が気づいたとき、売り出した商人は既に姿を消していた。



まさ「うわわ〜、糸が簡単にほつれるじゃないの」
???「そうなんですよ!ニセモノだとは気づかずに買ってしまって……」


とも「羽衣のブルーとイヤリングを合わせたのは判るけど、この趣味の悪い靴!こんなオバサンみたいな靴じゃバランスがとれません!」
ほだ「おいおい、いつからファッションチェックするようになったんだ?」


???「な、なんですかあなた方は?」
ひで「……お前さん、ロマリアの朝市でこれ、売ってたろ?」



 犯人はあっさりと捕まるが、このニセブランド作戦が魔王バラモスによる資金稼ぎと知り、そのあまりのなさけなさに勇者たちは絶句する。
 悪の大魔王を気取るのなら、それらしい作戦を使え……気合いの抜けた勇者たちではあったが、逆に馬鹿にされているのかと闘志が燃え上がる。


 次回、ドラゴンクエストIII「ブランドには要注意」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)











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