第39話 遙かなる海路


 ようやくお話が進みそうでホッとしています。予定より遅れてランシールについた船でしたが、勇者たちは一日の休憩の後、大海原にこぎ出しました!……って、帆船ですから普通はこがないんですけれどもね。


まさはる(以下、まさ)「オーブって、綺麗だよな……」
ほだか(以下、ほだ)「ああ、磨けば磨くほど、吸い込まれそうに綺麗だよな……」
ひでかず(以下、ひで)「グリーンオーブを見ると、どうしてもテドンの村を思い出しちゃうよ……」
ともき(以下、とも)「一つだけでは微弱な魔力が、集まるごとに増大しているのが判る。こいつは、ものすごい宝だぜ……」


 甲板の上にべたっと腰を下ろして、船員からもらったボロ布でオーブを磨く勇者たちです。


ほだ「この深い青……素晴らしいよな……」
ひで「この緑の純粋さには勝てないさ。深い悲しみを湛えてなお輝くオーブ……」
まさ「子供には、この紫というアダルトな魅力は理解できんよ……」
とも「ちぇっ、俺だけ仲間外れかよ」


 ともきは舌打ちをして、輪を離れました。


とも「あっ、船長、レイアムランドのことで聞きたいことがあるんだ」
船長「なんですか?……って、私たちも詳しいことは全然知らないんです」
とも「どういうことですか?」
船長「そもそもレイアムランドっていうのは、幻の島って呼ばれているんですよ。精霊ルビス様が、ご自身の命を削って作られた島とかで、普通の人間には見ることができないっていう言い伝えの島なんです。ですから、この海図にはテドンの南ランシールの西にはなにもないでしょう?」

 船長がぼろぼろの海図を取り出します。確かに、それらしい島はないのです。


とも「ふーむ……と言うことは、レイアムランドに入るためには、何か条件のようなものが必要ってことなのかな?」
船長「私にもよく判らないんですよ。テドンから南に行くと、とつぜん羅針盤が狂いだして、船の正確な位置が判らないようになってしまうんです。留まって見つけようにも、辺りは氷の海ですから、船乗りの体力が保ちません」
とも「なるほどね……なら、何か陸の影のようなものが見えれば、それがレイアムランドかもしれないっていう希望的観測は、できないんだね」
船長「そう言うことになりますかね」
とも「ありがとう、引き留めて悪かったね」
船長「いえいえ、いつでも呼んで下さい」


 さぁ大変なことになりましたよ?目指すレイアムランド、果たして見つかるのでしょうか?


船員「陸だ、島が見えた!」


 まぁそこはあっさりと見つかるわけですね、はい。


ひで「ううっ、寒い……」
とも「見渡してみても、神殿のようなものどころか、人工的な建造物じたいが見あたらないぞ」


 一面雪の原野です。荒涼とした大地に雪が積もり、樹木さえない島は精霊ルビスが作ったと言われるレイアムランドとは思えないほどに、淋しい景色です……


ほだ「ん?あそこに、雪かきしてある場所がある」


まさ「よし、寒いけど行ってみよう」



 さて、寒さを我慢しながら歩いていきますと、雪かきをしてある区域に一軒の家が見つかりました。


ひで「ん?家でいいのかな?」
ほだ「どう見ても神殿ではないわな」
とも「寒い寒い、どうでもいいから中に入ろうぜ」


 とまぁ、とにかく家の中に入ってみることにしました。すると、中はやっぱり普通の家です。こんな場所に家を建てるなんて、変わった人もいるものですね。


まさ「あっ、こちらのご主人ですか?どうも夜分に突然お邪魔して……」


 椅子に座っていた老人は、びっくりしたように勇者一行を見回します。



ほだ「そりゃそうだよな、こんな僻地に家なんかあると思わないもの」


 老人は髭をさすって、遠くを見るような目つきで続けます。

*「おお そうじゃ。 いつぞや
  海賊どもが おかしな骨を
  置いていって 以来じゃな。


とも「お菓子な骨?カルボーンかな?」
ほだ「そういえば、最近見ないなぁカルボーン。牛乳飲んでカルシウム摂れって言ってたガ○ベスが一番カルシウム不足みたいなツラしてたもんなぁ」
まさ「いつの話じゃ!」

 ボケ倒す勇者たちを後目に、老人は言葉を継ぎます。


ほだ「なにそれ」
とも「噂は聞いたことがある。変動相場制ストップ機構がついていて、象が踏んでも壊れないスイッチが付属していたはず」
ひで「えっ、それ何の話?僕には全然判らないよ」
まさ「……知らなくてもいい話だよ、ぜんっぜん関係のない話だから」

 老人、ボケる勇者たちを楽しそうに眺めています。まぁ、コメディアンの団体が来たみたいなものですから、数年来人に会っていなかった老人にとっては、こんな会話でも楽しいんでしょうかね。

*「なんにでも 化けられるという
  つえじゃよ。 サマンオサの王が
  持っていると 聞いておるが……。


ほだ「サマンオサ!オヤジと共に戦った、勇者サイモンの出身地か……」
とも「かつてアリアハン・ネクロゴンドと共に世界の覇権を競っていた軍事国家サマンオサか。世界を狙っていたのなら、精霊ルビスの遺したオーブについて、何か情報を持っているかも知れない」
ひで「ど、どうしちゃったんだ?いきなり真面目に話し出したよ?」
まさ「こういう連中だってことさ。それより、勇者サイモンの消息が途絶えているのが気になるな。バラモスの城に乗り込んだわけでもなく、さりとてサマンオサにいるということも聞かない」
ひで「まったく変わり身が早いんだから(笑)」

*「最後のカギが あれば
  旅の扉を使い サマンオサに
  行けると いうぞ。


ひで「う〜ん、なら旅の扉を先に探す?」
とも「そうだな……俺、船長に聞いたんだが……レイアムランドっていうのは、幻の島と呼ばれているそうなんだ」
ほだ「どういうこと?」
とも「つまり、精霊ルビスの結界によって護られている島らしい。未だかつてたどり着いた船はないと言われているそうだ」
まさ「う〜ん、でも俺たちは勇者一行だぞ?」
とも「オーブは集めれば集めるほどに、その魔力を高めていく。なら、オーブを全て手に入れたなら、その時こそレイアムランドへの道が拓かれる、そうは思わないか!?」
ひで「うわっ、なんかカッコイイ!」
ほだ「なんだかこう、燃えてくるな!」
まさ「うむ。では、次の目標はサマンオサに決定だな!!」




 というわけで、次の目的地がサマンオサに決定しました!父オルテガの戦友であるサイモン、彼は今どこでなにをしているのでしょう?そして、「変化の杖」がストーリーにもたらすものは、いったいどんなものなのでしょう!?といった所で今回はおしまいです。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告



 行方不明の父と弟、そして母の死……サマンオサ国王の乱心の影に魔物のうごめく気配があると知った少女は、親友と共に勇者を頼ることを決めた……



???「ずいぶん……身勝手な仰りようですわね……」
とも「そう、人間というのは元来身勝手なものです。しかし、その身勝手さが命の方向を向いている限り……人はそれを美徳とするのですよ」


まさ「ビンゴだ、やっぱり国王があやしい。しかも国王は、夜になると見張りの兵も立てずに、二階の寝室に一人で寝ているらしい」
ひで「しかも最近は料理の好みも変わって、トカゲや虫を好んで食べるんだそうだよ。あ〜気持ち悪い」


ほだ「もし僕たちが失敗したなら……その時こそ君の出番だ。僕たちの失敗を乗り越えて、君がバラモスを倒すんだ。だから、その時に備えて力をつけておいて欲しい。人々の希望が、一度に消えるわけにはいかないんだ。君も勇者サイモンの息子なら、判って欲しい」
???「でも……」


???「そうだね……アリアハンの国王から身代金をふんだくるっていうのも、いいかもな」
まさ「馬鹿言え、アリアハンの国庫はカツカツだ!貴様らなんぞに払う金などない!」



 ほのかな想いを振り捨てて、他人のために生きることを決意する若者たち。来るべき明日のために戦うことが、彼に出来る全てだから……来るべき未来のために生き抜くことが、彼女に出来る全てだから、今はその想いを口には出さずに歩いていくのだ。



 次回のドラゴンクエストIIIは、小説版でのお届けになります。


第40話記念スペシャル
「勇者の系譜」
お楽しみに!







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