第35話 人間の価値


 スーの村を出航し、まずはポンタの所へ寄った勇者たちです。町はもう出来ているのでしょうか?それとも断念しちゃったのでしょうか?


ほだか(以下、ほだ)「あれ?建物ができてる……」
ひでかず(以下、ひで)「本当だ。道具屋みたいだね」


 近づいてみると、たしかに道具屋です。スーの村へ往復一日、村で一泊しているから二日、たった二日でお店が開店しています!これはすごい!


ともき(以下、とも)「よう、元気にやってるかい?」
ポンタ(以下、ポン)「あっ、よく見たら勇者はんたちやないですか!お懐かしゅう!」
まさはる(以下、まさ)「へー、もう店作ったんだ……このぶんじゃ、すぐに大きくなるな!」
ポン「見ててくださいな、私はきっとここを大きな町にして見せますさかい!」
とも「楽しみにしてるよ!……ところで、何か情報は……まだ、ないか」
ポン「チッチッチ、商人のネットワークを甘く見たらあきまへんで!聞いた話ですが、エジンベア城の地下には何か不思議なお宝が隠されているとか。なんでも、どこかの部族の宝物で、そいつを兵士が奪い取って国王はんに献上したとか」
まさ「なるほど、やっぱりそうか!城の地下にあるのか!」


 ポンタも嬉しそうです。いきなり仕入れた情報がバッチリ役に立ったのですから!


ポン「次に来て貰える時までに、宿屋を作っておきますさかい……また来てください!」
ほだ「ああ、また来る」


 さてさて、本当の目的地・エジンベアに向かって出発です!海を東へと進み、やがて見えてくる新大陸!期待に胸震わせながら眠りについた勇者たちでしたが……


船長「つきましたよ、エジンベアです」
ほだ「おうっ、起きる起きる!どれどれ!?」
とも「……なに、あれ」
船長「なにあれ、って……エジンベアですけど」
まさ「なんだ、ちっぽけな島国だなぁ。アリアハンのほうがよっぽどでかいぞ」
ひで「ジパング並みじゃないか……大陸を期待して損したなぁ」
船長「そんな、大陸なんてそんなに数ないんですよ?」
ほだ「いや、そりゃ判ってるけどさ……なんかガッカリだな、とっととツボ貰って帰ろうぜ」


 落胆しつつも城の中へと入る勇者たち。島国にお城が一つで城下町もない、となれば新しい武器なんて期待できないですもんね。……と、城の守衛がジャマして、中に入れてくれません。

ほだ「ちょっとどいてくれよ、ジャマだなぁ」

*「ここは ゆいしょ正しき
  エジンベアの お城。
  いなか者は 帰れ 帰れ!

まさ「なっ……あんた、誰に向かって口きいてると思ってんだ?俺たちは世界に平和を取り戻すために戦っている、アリアハンの勇者とその一行だ!無礼にも程があるぞ!」

*「ここは ゆいしょ正しき
  エジンベアの お城。
  いなか者は 帰れ 帰れ!

とも「……そこをどけ!」

*「ここは ゆいしょ正しき
  エジンベアの お城。
  いなか者は 帰れ 帰れ!

ひで「……田舎とかそういうの、関係ないでしょ?」

*「ここは ゆいしょ正しき
  エジンベアの お城。
  いなか者は 帰れ 帰れ!



ほだ「仕方ない、例の『消え去り草』を使おう。取扱説明書、捨ててないよな」
まさ「あるある。畜生、何が田舎者だ。こんなへんぴな場所に城建てて恥ずかしいとは思わないのかね」
とも「いや、別に立地条件で恥ずかしさが発生するわけじゃないだろう」
ひで「じゃ、消え去り草、使うよ……」


 消え去り草を体にふりかけると、みるみるうちに体が透けていきます!

ひで「いまのうちに……」
ほだ「しかし、なんで勇者がこんなにコソコソせにゃならんのだ?」
とも「シッ、静かに……気づかれたら終わりだぞ」


 無事に城内に入るとほどなくして消え去り草の効果はなくなりました。


ほだ「人を田舎者呼ばわりする割に、小汚い城だな」
まさ「それが伝統なんだろ?」
とも「とりあえず、王様に挨拶しておいた方がいいかもな」


 謁見の間に向かった勇者たち。城内の人間が、勇者たちを見てクスクス笑ったりなにやらひそひそ話をしています……なんとか堪えて王様の前へとやってきた勇者たちに、王様は開口一番、こう言いました。


 その他の人のセリフも、ここに収録しておきますか。

*「わが王は 心の広いお方だ。
  おぬしのような いなか者でも
  話をして くださるだろう。
*「おや?あなたが うわさの
  いなか者ですか?
  ふむ… なるほど たしかに
  いなか者ですね。
*「こんにちは いなかの人!


ひで「なんで!なんでテドンの村の人が死んで、こいつらが生きてるんだよっ!!」
まさ「ここにこそヤマタノオロチが来るべきだったんだ(怒)!全員いけにえになっちまえ!」
とも「……宿屋もない、武器屋も道具屋もない。これのどこが都会なんだ?あんまり調子こいてると、メラミでこの城焼き払うぞ!」
ほだ「バラモスに頼もうか、ここを滅ぼしてくれってさ……」


 あああ、勇者たちかなり怒ってます!


ほだ「この辺のモンスター、絶対に倒さないぞ(怒)。逆にホイミかけちゃうもんね。こんな城、滅んでしまえばいいんだ!」
まさ「……こんなくっだらねぇ城、ツボもらってとっとと出ていこうぜ!ああ胸くそ悪い」


 城の地下には大きな石と、青いプレートが……

とも「ハッ!この城の人間は、こんな簡単なパズルもできないのか!」
ひで「すまん、僕もできない……」


 ともきは怒りにまかせて石を押します!そして、石は全て青いプレートの上へ……


ほだ「すごいな、もの凄く早かったぞ!?」
とも「これくらい、賢者なら当たり前さ……こんな城に長居はしたくないからな」
まさ「隠し通路が開いたぞ、行こう!」


 通路の先には小部屋があり、小部屋の真ん中には宝箱がありました。そっと蓋をあけると……ツボです、これが『かわきのつぼ』です!


ひで「じゃあさっさと帰ろう。武器屋もないような城には、用はないもんね」
まさ「こんな田舎くんだりまで来てツボひとつか……ここの兵士がスーからツボ盗んでいかなけりゃ、ここに寄る必要もなかったのに」


 皆に聞こえるよう、わざと大声で喋りながら歩く勇者たち。城内の人々も次第に怒り始めてますが、大丈夫なんでしょうか?いや、大丈夫みたいです。ひでかずの「大ばさみ」にはものすごい威嚇効果がありますから、もう面と向かって「田舎者」と言える勇気を持った人はいないようです(笑)。


船長「どうでした?」


 船に戻ると、船長が笑顔で迎えてくれました。


船長「みなさん、『田舎者』とバカにされたでしょ?」
ほだ「え?なんで知ってるの?」
船長「エジンベアっていうのは、ずいぶん古い国なんですよ。ちょっと前までアリアハンとネクロゴンド、サマンオサが世界を支配していたのは知ってますよね」
ひで「うん、歴史で習った」
船長「それより遙か以前、だいたい300年前くらいの世界はここエジンベアが支配していたんです。でも、貴族階級の腐敗と労働者の決起によって王国は分裂したんですよ。分裂して出来たのが、アリアハンとネクロゴンド、サマンオサの原形です。だから連中は他の国を『田舎者』と呼ぶんです」
とも「ケッ、過去の栄光にすがって、みっともない!」
船長「過去の栄光にでもすがっていないと、駄目な人間もいるっていうことです。そういう後ろ向きな国風に耐えられなくてエジンベアを捨てる人も増えてますから、まぁあと10年もすれば自然崩壊するでしょうね」


 そんな話をしている間にも、船は西へと一直線です。ポンタの町に、宿屋は出来ているのでしょうか?


ほだ「なななな、なんじゃこりゃ〜!」


 ちょっと目を離した隙に、またまた発展を遂げている町!なんだか少し怖くなって来ますね……


まさ「宿屋ができてる……」
とも「あれ、道具屋の主人がポンタじゃなくなってるぞ……」


 ポンタはどこに行ってしまったのでしょう?と、町の南東に建築途中の建物がありますね。勇者たちが覗いてみると、そこには材木や建材を積み上げているポンタの姿が!


ひで「あっ、ポンタ!」
ポン「やぁ、勇者はんたちやおまへんか!?今、ここに劇場作っとるんですよ」
とも「なんだか凄く発展してるじゃないか」
ポン「ええ、まぁボチボチですわ。そのうち強力な武器仕入れて、勇者はんたちに安う売ってあげますよってに、もう少し待ってください」
ほだ「僕たち、『かわきのつぼ』手に入れたんだぜ!これで『最後のカギ』を取りに行くんだ」
ポン「そうでっか……そういや、バラモスへの道を開くカギは、カギではないと聞きました」
まさ「え?最後のカギと違うのか?」
ポン「へえ、なんでも『ガイアの剣』という剣がそのカギだとか」
ひで「剣か……」
ポン「はて、誰が持ってると言ったかな……どこかの勇者が持っていたとは聞きましたけど」
ほだ「いや、それだけでも大変な情報だよ。どうもありがとう」



 勇者たちはポンタに別れを告げ(一応宿屋に泊まりましたが)、いよいよ次回は最後のカギ獲得のおはなしです。あちこちの開かない扉を開け回って、新しい展開を探すので〜す!といった所で今回はおしまい。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告


 ついに『最後のカギ』を手に入れた勇者たち。カギを悪用して世界一のドロボウになろうと決意した勇者たちは、伝説の怪盗・ルパンIII世一味を名乗ることにした……



ほだ「ムゥフフ〜ン、お〜れの名前はるぷぁ〜んしゃ〜んしぇ〜い!」
まさ「おいルパン、とっとと行くぞ!」


とも「またつまらぬものを斬ってしまった……」


???「待てルパ〜ン!」
ひで「やばいぞルパン!銭形のとっつぁんだ!」



 こんなことで良いのだろうか……そんな疑問もあるが、とりあえずスイス銀行の大金庫に忍び込み、大量の金塊を奪ったルパン一味。まさか勇者たちがルパン一味だと、気づくものはいない……


 次回、ドラゴンクエストIII「ルパンIII世、颯爽登場」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)







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