第32話 ヒミコの宮殿
さて、アリアハンから北に向けて出航した勇者たちです。魔物ちゃんたちの来襲は結構な頻度であり、それこそ昼夜を問いません。お陰で勇者たちはクタクタです。 ほだか(以下、ほだ)「しっかし、これで船の操縦までやっていたら体が保たない所だったよ」 ともき(以下、とも)「だろ?なんでも自分たちでしようっていうのが間違いなんだよ。専門家がいるなら専門家に任せた方が早い」 ひでかず(以下、ひで)「でもさ、せめて夜は休ませて欲しいよ……」 まさはる(以下、まさ)「魔物が俺たちの都合なんか考えてくれるわけないだろ?」 そりゃそうですね(笑)。モンスターにとっては、勇者たちが不利である状態が有利なわけですから。特に海上という不安定な場所で、空を飛ぶモンスターにとっては絶大な支援効果なわけです。 とも「しかし、採用した料理長の腕、すごいよな……食事が楽しみで仕方がないよ」 ほだ「僕もだ。材料が同じでも、調理の仕方であれだけのバリエーションがあるなんて」 ひで「へへん、僕の人選に間違いはなかっただろ?」 まさ「しかし、もう陸が恋しいよ……船長、いまどこらへん?」 船長「え〜……バハラタ沖500カイリってとこかな。順調にいけば、明朝にジパングに到着します」 船長は羅針盤と地図を見比べて、そう言います。ここだけの話、勇者たちは羅針盤の見方を知らなかったんです。やっぱり専門のスタッフは違いますね。 ほだ「そう言えば、『エジンベア』って言う国、知っています?」 船長「エジンベアですか?ずいぶん遠いですよ。ここからだと、地球を半周以上しなければなりません」 ほだ「あ、別にいいんだ……ただ聞いてみただけ」 ランシールのスライムに聞いた地名、確かに存在するようですが…… 船員「モンスターだ!」 ひで「またか……」 とも「よっしゃ、行くか!」 たまにはバトルシーンの画像でも貼ってみましょうか。頑張っています(笑)。ちなみに、色が紫っぽいのは夕方の戦闘だからです。 ![]() さてさて、どんぶらこっこと進んでいくと、前方に弓状列島が見えてまいりました! とも「おお、『アーチェリーのような島』だ!」 まさ「なにそれ?」 ほだ「……♪判る人だけ判ります♪って感じかな」 ひで「何のことやらさっぱりだ」 とにかく上陸ですよ!村のすぐそばに洞窟がありますが、わざわざ先に入る必要もないでしょう。 ![]() まさ「うおー、オリエンタルな魅力……」 ほだ「ほほう、流れる黒髪か……いいね!」 なにバカなことを言ってるんでしょうか(笑)。まずは村の探索と情報集め、初めて触れる異文化にちょっと興奮気味な勇者たちですが、大丈夫でしょうか……
ほだ「いや、ガイジンって言われてもなぁ……確かにそうなんだろうけど」
まさ「いけにえ?この地方では、まだそんな風習が残っていたのか?
とも「おろち?魔物にしては間抜けな名前だな」
ひで「ち、ちょっとおじいさん、入れ歯を飛ばすほど興奮しないで……」 話を総合してみると、『やまたのおろちというバケモノがいて、生け贄を捧げないとひどい目に遭う』ということでしょうか。 ほだ「ヤマタノオロチ……奴を倒すには、8本の聖剣が必要だったと聞いたけど」 ひで「8本も!?」 ほだ「いや、これは聞いた話だから……オロチというのは漢字変換してみると判るんだが、『大蛇』と書くんだ。で、人々の生気を吸い取って、暗黒神に送る役割があるんだそうだ」 とも「過去に『ヒの一族』と呼ばれる人々が暗黒ラン……ヤマタノオロチを退治したって話だろ?タマゴ・ボーロとかいう奴の『東方見聞録』に載っていたと思ったが」 なんか話が無茶な方向に進んでいませんか? まさ「しかし、オロチに生け贄を出す……という提案が女王から出ているというのが気に入らねえな。領民を守る姿勢が見られねえ。怪しいぜ」 ほだ「はいはい、イシスの女王様は立派でしたよ」 とも「うん、でもまさはるの言うことにも一理あるぞ。さほど裕福とも思えない生活をしている庶民に対して、あんな大きな御殿だ」 ともきが指さす方向には、幾重もの鳥居の向こうにそびえる女王ヒミコの宮殿がありました。 ひで「一度話を聞いてみる必要がありそうだね」 ほだ「ところでさ」 方針が決まりかけたところに、勇者が待ったをかけます。 まさ「なんだよ、あんまり無駄なことにスペース割きたくないんだ」 ほだ「いやさ、ここのキャッチコピーって『黄金の国』じゃん。どのへんが黄金なのかね?」 確かに、庶民の生活にはそもそも金属がほとんどない文明です…… まさ「ケッ、きっと女王が貯め込んでるにちげえねえ!説教しちゃる!」 まさはるを先頭に、女王の宮殿へと入った勇者たちです。が、宮殿の中もさほど豪華ではありませんね……飾りも少ししかありませんし、半分は倉庫みたいです。まっすぐ奥へと進んでいくと、大美人(松本零士的表現)さんがいるではありませんか! まさ「どうも、ご機嫌麗しゅうございます」 しかし大美人さんはフンと鼻で笑います。
ほだ「お呼びでない?お呼びでない……お呼びでないね。こりゃまた、失礼致しました〜っ!」 とも「こんな所で古いギャグかましてる場合か!」 まさ「あ、あの我々は……」
一喝!大美人さんの迫力に、勇者たちの動きが止まりました(笑)。
ひで「ええまぁ……色々と聞きましたもので……」
とも「いや、別にあんたに好きになって貰いにきたわけじゃなくて……」
宮殿を出て、まさはるは首を傾げます。 まさ「おかしいぞ……」 ほだ「何が?」 まさ「いくら外人が嫌いだとしても、俺たちが歴戦の勇士であることは装備を見ても明らかなはずだ。なのに、国を騒がせる怪物退治も依頼せず、まるで邪魔者のように扱って、さっさと帰れと怒鳴る」 とも「俺も怪しいと思うな。村人はオロチに恐れおののいていて、みんな暗い顔してるってのに女王様は目の下に隈もない。まるで自分は襲われないということを知っているみたいだ」 ひで「それより、『いらぬことをするな』と念を押されたのが気になる。そう言われると、ヤマタノオロチ事件と女王との間になにか繋がりがあるような気がするよ」 ほだ「そうだな……あんなこと言われて引き下がるのもシャクだし、オロチを退治して見返してやろう!もし女王とオロチが通じていれば、奴の鼻をあかすことにもなるし」 なんだか不純な動機から怪物退治が決意されましたが……いいんでしょうかね、こんなことで。 ほだ「確か文献によると、ヤマタノオロチは酒が好きらしい!かつての英雄スサノオは、オロチを酔っぱらわせてその隙にオロチを退治したという」 とも「その話、どこから出てきたんだ?」 ほだ「小学生の頃読んだ『ジパング神話』だ」 まさ「よし、酒蔵を探して売って貰おう!どっちにしろ、船員に飲ます酒だって底をついてるんだ、ここらへんで補給しなきゃと思ってたんだよ」 家宅不法侵入は勇者の得意技……とか言いつつ、勝手に地下の倉庫へと入った一行です。確かにお酒の匂いがします。ツボがたくさんありますが、なぜか中身は空っぽですよ。 ひで「うっぷ……僕お酒だめなんだ」 まさ「いい香りはするんだが、肝心の中身がないじゃないか!」 とも「どうなってるんだ?」 ほだ「全部からっぽなのかな?」 鼻をつまんでツボの中をのぞくひでかず。すると…… ひで「うわわっ、ツボの中におねいちゃんがいた!」 ![]() ほだ「ななななんだ?妖怪・ツボ女?」 ツボの中のおねいちゃん(笑)はシクシク泣いております。 ひで「もしもし、こんな所で何をしているんですか?」
まさ「え?ちょっと話が読めないな……説明していただけますね?」 可愛い女の子相手だと、どうしても言葉遣いが丁寧になりますね(笑)。
ひで「う〜ん……それはいいんだけど、事情を」 とも「待てよ?この人が『やよい』さんだとすると、オロチの生け贄になるのはこの人か……」 まさ「許さ〜ん!」 ほだ「小汚いオッサンならともかく、美少女をこの世から消すわけにはいかない!」 まさ「意見が合うな!」 とも「健全な男子なら当然のこと……」 ひで「このまま黙って見過ごすわけには行かないよ!お嬢さん、もう安心だ!今からオロチの野郎をギッタンギッタンにしてやる!オロチのくせにナマイキだ!」 さぁ、ジパングを襲うヤマタノオロチ、それに立ち向かうことを決意した勇者たちです!といった所で今回はおしまい。ちょっと動機が不純ですが、さてさてこれからどうなりますやら。 では、次のお話でお会いしましょう。 世界がこのまま平和でありますように…… 次回予告 空と海の間にあるという異世界、バイストン・ウェル……そこに進出しようとしているおもちゃメーカーがあった。模型、ボードゲームなどを次々と展開していくメーカーにかげりが見えたのは、携帯ゲーム機のブームを見誤った時からだった…… ほだ「オーラ力?MPとは違うの?」 ???「う〜んと、MPは魔法を使える人でないと持っていないでしょ?オーラ力は、全ての人、動物、自然界の物質に宿っている力なの」 とも「フォースみたいなものですか?」 ???「そうね、そう思ってくれればいいわ……」 ???「ハイパー化だと!?」 まさ「うわっ、巨大化したっ!!」 ???「このゲア・ガリンゴのオーラバリアが破れるものか!」 ひで「なんとか内部に潜入しないと!」 何事も欲張らず、見極めが大事だという教訓を残してメーカーは去っていく……新しいものを出せば売れる、という風潮に終止符が打たれた今、ほんとうにユーザーが求めるものを追求しなければ、会社組織は維持できないのだから…… 次回、ドラゴンクエストIII「聖戦士バンダイン」、ご期待ください! (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください) 第33話へ 「DQ3-Replay」トップに戻る | |||||||||||