第26話 事件解決、そして


 カンダタ一味からグプタとタニアを解放した勇者たち。いや〜、勇者たるもの人助けをするのが当たり前ですからして、威張ることじゃありません。半分便利屋みたいなものですが、それでも助けを求める人がいるのですから、救いの手をさしのべるのは半ば義務みたいなものですね。


ほだか(以下、ほだ)「町に戻ったら訊ねてくれ、とか言ってたけど……まずは一泊だろ普通」
ひでかず(以下、ひで)「これでまた『家督を継ぐには東の火山にある金印が必要だ』な〜んてイベントに巻き込まれたらたまんないもんね」
まさはる(以下、まさ)「どこかの主人公なんか、わざわざ結婚指輪を火山とか滝の裏に取りに行かされたらしいしな。話の展開上巻き込まれるのは仕方ないとして、せめて体勢だけは整えておきたいもんな」
ともき(以下、とも)「なんだそりゃ(笑)。とにかく、一泊するのは賛成だな。俺って非力だから、MPなければただの足手まといだし」


 なんて勝手な理屈をつけて、宿屋へレッツゴー四匹です(古い)。この辺りの描写は省略しましょうかね。まず勇者が一番風呂の後に夕食を待たずして熟睡、武闘家は隣室に女の子がいないかな……なんて探して隣が男だったのでふてくされ、魔法使いはいつも通りの行動で就寝、戦士は湯船につかったまま寝てしまい、宿の主人に怒られる始末。そんな感じです、はい。


ほだ「なんだかずいぶんと腹が減った」


 ほだかは一人起きてしまいました。まだ完全に夜が明けていませんね……仲間はみんな布団の中で夢うつつです。


ほだ「食い物……あるわけないか。ちょっと外でも歩いて来るかな?」

 目を擦りながら、パジャマのまま(!)外に出たほだかです。ひんやりとした空気、早朝の雰囲気。なんと言いますか、朝露に濡れた草の香りがします。


ほだ「ほっほっほ、たまには早起きもいいものでおじゃる」


 なんか不気味な独り言ですね(笑)。と、向こうから走ってくるのは朝刊太郎(古い)……ではなく、隣室に泊まっていた旅の剣士です。


ほだ「おはようございます、ご精がでますね」
剣士「おう、おはよう。これくらいの修行をせねば、転職できぬからな」
ほだ「え?転職、ですか?」
剣士「なんだ、知らないのか?」


 剣士は呼吸を整えると、タオルで汗を拭きました。

剣士「北の山奥には、転職を行うダーマの神殿があるそうだ。俺もいつかは立派な遊び人……じゃなかった、賢者になってみたいものだな」
ほだ「へー、北ですか……こりゃいいこと聞いた」


 時間は進み朝食です。ほだかは何か決心したように、口を開きました。


ほだ「みんな、ちょっと聞いてくれ」
ひで「何だい、改まって」
ほだ「ここより北の地に、転職を行う『ダーマの神殿』があるそうだ。そういう話を聞いた」
まさ「で?」
ほだ「うん……そろそろ僕の回復魔法では辛くなってきたし、そう薬草ばかり買うのも非経済的だ。だから、ここで本格的に『転職プロジェクト』を組んでみたい、と思うのだが」
とも「ちょっと待った!ポルトガの王さまに頼まれた、胡椒はどうするんだよ」


 そうですね、元々の目的はそれだったわけですから。


ほだ「落ち着け。これから先、ひょっとしたら胡椒を求めて怪物と戦わなければならないかも知れん。いつまでも薬草とホイミでは無理なんだ」
まさ「でもよ……この目玉焼きにかかってる、これ胡椒だぜ?」


 言われてみて、まじまじと見つめる一同。そう言えば、このスパイシーな食感は、確かに胡椒そのものです。

とも「……この町で売ってるのかな」
ひで「判った!じゃ、こうしよう」


 戦士ひでかずが、自分の分の目玉焼きをぺろりとたいらげて手を叩きました。

ひで「まず、この町で胡椒が手にはいるかどうか、探そう。手に入れば入ったでOKだし、駄目でもその神殿に行こうよ。どうせ胡椒だって王さまの道楽だし、それよりも戦いを有利にするというのは重要なはずだろ?」
まさ「うん、それでいいと思うな。船は欲しいけど、海の怪物に対戦するとなっちゃ、お前のホイミだけじゃ心細い」
ほだ「バカにされてんのかな?」


 とにかく、今後の方針が決まったということで……一行は胡椒を求めて町へと繰り出しました。


ほだ「えーっと、武器屋に道具屋……胡椒屋なんてあるのかね?」
まさ「おや?あいつ、グプタじゃないか?」

 おっと、お店のカウンターの向こうにいるのは昨日助けたグプタです!


とも「なんだ、君が胡椒屋だったのか!」


 勇者たちに気づいたグプタはうれしそうです!

*「やや あなたがたは!?
  ぼくです。グプタです!
  助けていただいて
  ありがとうございました。

まさ「まぁまぁ、当然のことをしただけだよ。なぁ?」
ひで「そうそう、当然のことをしただけ」

グプタ「こしょうを おもとめですか?

ほだ「そうなんだよ、ポルトガの王さんの頼みでさ……なんとか、安くならない?」

グプタ「では 差し上げましょう!
  お金なんて とんでもない!

とも「ええっ、いいの?なんだか悪いなぁ、催促したみたいで……」


 こうして「黒胡椒」を手に入れました!


ほだ「あ、ありがと……」
ひで「でも、どうして僕たちが神殿目指すって知ってるんだろ?」



 細かいことは抜き!とにかく、胡椒を密閉ケースにしまった勇者たちは、北の神殿を目指します!


ほだ「はいはい、どうせ神殿にたどり着くまでは終わらないんでしょ?」


 ご明察。ま、レベルもそこそこ上がっていますから、今の一行にそれほど心配はいりません。一頭身のヨーダみたいなバケモノや、紫色の悪趣味な猿などをなぎ倒し北へ進むと……さほど遠くない地点にありましたありました。あれが『ダーマの神殿』でしょうか。


とも「なんだ、案外近かったな……これで俺も『賢者』になれるぜ!」


 神殿に駆け込んで、ともきは奥にいた神官に叫びます。


とも「転職させてくれ〜!」


 神官はびっくりしています。そりゃそうです、いきなり入ってきて怒鳴られちゃ、誰でも驚きますよねぇ。それでもプロらしく、メニューを渡してくれましたが……



とも「け、賢者がない〜!」


 メニューのどこを見ても、賢者のけの字もありません。逆上したともき、神官につかみかかります!暴力はいけませんねぇ……


とも「コラ!俺は賢者になりたいんだ、賢者にならせろ!」
神官「そそそそんな、ご無体な……無理です、無理なんです!」
とも「なんだとコラ、俺は聞いたんだ、賢者に転職できるって!」
神官「ああああ、あの、賢者になるにはあるアイテムが必要なのです……」
とも「アイテムだぁ?どこにある!?」
神官「そそ、それを探すのが試練……ブッ!」


 あっ!いきなりパンチ!いけませんいけません、老人相手に喧嘩はいけません!


とも「どこにある?ん?」
神官「ああああ、こここの神殿の北にある『ガルナの塔』に(涙)……」
とも「聞いたとおりだ。みんな、行くぞ!」


 鼻から血を吹き出している神官をほっぽりだして、ともきはずんずん歩いていきます。あまりの光景に、呆気にとられていた一行ですが、とりあえずほだかが神官にホイミをして鼻血を止め、作り笑いとお辞儀をして神殿を出ました。


まさ「おい、ちょっと過激だったんじゃないか?」
とも「う……ま、まぁいいじゃないか」
ひで「ようやくその『爺グラフィック』から抜け出せるんだもんね、焦る気持ちは判るけど」
ほだ「しかしなぁ……これ、正義の味方のするこっちゃないぞ」
とも「してしまったことは仕方なし!さぁ、次回は『ガルナの塔でアイテム探し』、張り切って行くぞ!」




 さてさて、こんなことして本当にいいんでしょうか?といった所で今回はおしまい。ともきは無事に賢者へと転職できるんですかね。さてさて、これからどうなりますやら。


 では、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……









次回予告


 旅の作曲家と同行することになってしまった勇者一行。歩きながら演奏する作曲家だが、その音色に惹かれてモンスターが大量に押し寄せてきた。苦戦する勇者、さらに白熱する作曲家。勇者はたまらず竪琴を取り上げるが、作曲家はまるでめげずに横笛を吹く。



ほだ「頼むからやめてくれよ!どーすんだ、このモンスターの山を!」
???「それをどうにかするのが、勇者さんの務めでしょ?」


まさ「こいつ、固いぞ」
とも「突然変異か、それとも……この曲のおかげで、モンスターが強力になっているのか」


ひで「もうガマンならない!そんな笛、捨ててやる!えいっ!」
???「なんだい随分乱暴だねぇ……まぁいいさ、ストックはたくさんあるから」



 作曲家を置いて出発する勇者たち。間を置かず、作曲家へと襲い来る魔物の群れ。勇者たちが駆けつけたときは既に時遅く、無惨な亡骸だけが横たわっていた……風がその骸を揺らし、骨は昨日の歌を歌う……


 次回、ドラゴンクエストIII「後味の悪さ」、ご期待ください!
 (内容及びサブタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください)







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