第9話 眠りの街・ノアニール


 さぁ、珍しくやる気を出している勇者たち。カザーブの村の北に位置するというノアニールをめざし、いざ出発!……あれ?


ほだか(以下、ほだ)「言っておくけど、お金、もうないから」
ともき(以下、とも)「ちょっと待て!俺は何も買って貰ってないぞ!」
ほだ「武闘着と鉄の爪が高かったんだよ。道すがら、しっかり稼がないと何も買えないからね〜」
まさはる(以下、まさ)「う〜む、何も言い返せない……」
ひでかず(以下、ひで)「ちぇ、自分は「はがねのつるぎ」持ってるから他人事だよ」
ほだ「仕方ないだろ?僕は主人公なんだから」

 出発してませんでした。カザーブの周辺で、対等以上に戦えるモンスター相手の金稼ぎ。ああ、貧乏って悲しいですね。


まさ「しっかしこの辺のモンスターって金持ってないよな」
ほだ「仕方ないさ、そもそも魔物がお金を持っている……っていうのが判らない。イモムシとかカエルとかアリクイが、人間の間で通用する貨幣を持っているはずがない」
ひで「まぁまぁ、じゃあこういうのはどう?『その地方の偉い人が、魔物に懸賞金をかけている』っていうのは。これならいいんじゃない?」
とも「じゃ、どーやって証明するんだよ」
ひで「……うーん、モンスターの角とかヒレとか、そういうのを持っていくとお金をくれる、っていうのなら文句ないでしょ」


 何ストーリーに関係ないことを真剣に話しているんでしょうか、この人たちは(笑)。


ほだ「いや、こうしよう。過去の超近代文明の遺物であるキャッシュ・カード、こいつの口座に賞金が逐次振り込まれるのさ。お店でもこのカードで買い物をするのが普通だ。しかも、その操作は一部の学者や神官をのぞいて出来ないから、カードの偽造はできないし、ほとんどの決済がカードだから紙幣やコインの流通量も少なくて、偽金犯罪もないっていうことにする」
まさ「だから、魔物を倒したって誰に、どうやって申告するんだ?」
ひで「あ、この地図!今いるところにしるしが出るんだ、これと同じように、カードにもきっとGPS機能が搭載されているんだ。そして、持ち主が魔物を倒したらそれがホストに報告されて、自動的に入金される。ね、これいいシステムでしょ?」


 せっかくのドラクエ世界観が崩れるでしょうが!あんまり深く考えないのが、いい勇者ですよ!
 とにかく、一日ツブして約500ゴールドを稼いだ勇者たちはカザーブにもう一泊して、翌朝ノアニールを目指すことになりました。


まさ「おっしゃ、行くぜ!」


 気合を入れて歩き出したのはいいのですが……なんだかすぐに街が見えてきちゃいましたよ。


とも「なんだ、すぐそばじゃないか。気合い入れて損したな」



 さて、街に足を踏み入れた一行ですが……どうも街の様子がおかしいことに気づきました。

ほだ「静かすぎる……とても昼前の雰囲気には思えないな」


 とりあえず、そばにいた男に話しかけてみましたよ。


ひで「ども、こんにちは」


ひで「うわ、立ったまま寝てる……器用だ……」



 そういう問題ではないのですが(汗)。
 とにかく勇者たちは街中歩き回りましたが、みんな寝ていました。


まさ「どうなってんだこの街は(怒)!」
とも「シエスタ……じゃないよね、立って寝るなんて不自然だ」
ほだ「どこかにきっと起きてる人がいる。探すべし!」
ひで「ずいぶんきっぱり言い切ったね、確証あるの?」
ほだ「あのな、ヒントもないようなRPGが名作と呼ばれるわけないだろ?」


 だ〜っ、そういう話は駄目だってば!とにかく勇者たちは宿屋の二階、店の中などを探しましたが誰一人起きていない。参りましたねこれは。


とも「ん?あそこの建物は、誰か調べたか?」
まさ「うんにゃ、まだ」


 残り物には福があるってよく言いますね、はい。正解です。
 勇者たちが二階に上ると、そこにぱっちりと目を開けたおぢさんがいましたよ!


ひで「まさか、目を開けて寝るクセのある人じゃないよね」
ほだ「たまにいるんだよね、そういう人」


 ひでかずはおそるおそる話しかけてみました。すると……


ひで「うわっ、びっくりした!」



 おぢさんはいきなり大音量で喋りだしたのです!


ほだ「なんじゃそれ。エルフは判るにしても、『夢見るルビー』ってなんだ?」


ほだ「はいはい、黙って聞けということですね」


 勇者はなにやらぶつくさ言っています。


ほだ「これだから、決められた科白しか喋らない奴は嫌いなんだ……」
とも「ちょっと待てよ。『この村にかけられた呪い』っていうことは、みんなが眠っているのはエルフの呪いのせいだったんだ!」
ひで「じゃ、エルフに頼んで呪いを解いてもらおう!」


*「エルフの かくれ里は
  西の洞くつの そば。
  森の中に あるそうじゃ。



まさ「ほほう、ここから西の森に行けばいいんだな!」
とも「ちょっと待てよ。そもそもその『夢見るルビー』って、どこにあるんだ?」
ほだ「エルフに返せ、って言うくらいだからエルフの里で情報が貰えるはずだ」
ひで「展開がちょっと乱暴だなぁ」
まさ「いろいろと事情があるんだよ」


 ま、主に筆者の時間的事情ですが、ね。






 というわけで、一行は森にあるというエルフの里を目指すことにしたのでした!でも、手がかりとかヒントがこんなに少なくて大丈夫なんでしょうか?さてさて、これからどうなりますやら。


 今回もちょっと早いですが、次のお話でお会いしましょう。
 世界がこのまま平和でありますように……








次回予告


 眠りの街と化したノアニールを救うべく、エルフの里を目指す勇者たち。そこに待っていたものは、悲しい恋の物語と親子の確執、そして涙だった……


ほだ「痛いってば!」
???「黙れ、ハーモニカもまともに吹けぬ輩が何を言うか!」
ほだ「関係ないでしょうが、それは……」


???「ほら、人間よ!」
???「バカ、早く家に入りなさい!さらわれてしまうわよ!」
まさ「ものすごい歓迎ぶりだな、こりゃ」


ひで「知らず知らずのうちに、ぐるっと回っちゃったのか?」
とも「それはない。俺はずっとコンパスを持っているんだ。針がふれたことなんて一度もない。ただ……」



 愛とその真実が長い時を経て日の元に晒されるとき、「夢見るルビー」はその深紅の輝きを強めて悲しみを昇華していく。それが、エルフの宝だから……



 次回の、ドラゴンクエストIIIは小説版でのお届けになります。


第10話記念スペシャル
「悲恋」
お楽しみに!








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