「ファーストとチルドレンのサードチルドレンに対する感情変化の一考察」



○第六話「決戦、第3新東京市」
(灼熱のエントリープラグの中から自分を助け、自分の無事を知って泣いているシンジに対して)
レイ 「何、泣いてるの?」
シンジ「……(泣き顔)」
レイ 「ごめんなさい……こういう時、どんな顔すればいいのか、わからないの」
シンジ「……笑えばいいと思うよ……」
レイ 「……(笑顔)」
・コメント:
『他人を心配し、他人のために泣く』という行為に触れ、 『他人に対する優しさと思いやり』という感情を初めて知る。 そして、自分が他人を守ること、他人が自分を守ることが、 命令や任務によるものだけではないことについて知る。 また、この時からシンジの存在を意識し始める。


 これが、最終的に「ダメ、碇君が呼んでる」につながるターニングポイントであることは明らかでしょう。
 この後、レイがシンジの対してどのような態度で接するのかを見ていきます。 (アスカの登場でしばらく会話らしいものがないのが残念)



○第拾四話「ゼーレ、魂の座」
(機体相互互換試験において、初号機のエントリープラグ内での心象風景の一部)
レイ 「誰か居るの? この先に
    碇君 この人知ってる葛城三佐 赤木博士
    みんな クラスメイト 弐号機パイロット 碇司令
    あなた誰? あなた誰? あなた誰?」
・コメント:
シンジの存在価値が、他の人に比べて高くなっているのがわかる。 ミサトなど『この人知ってる』という程度の扱い。 たぶん、リツコに対しても同様なのだろう。 トウジ、ケンスケ、ヒカリ、アスカは名前さえ呼んでもらえない。 ただ、ゲンドウが最後に出てくるのは、絶対的な存在としての認識か。


○同話
(機体相互互換試験において、初号機のエントリープラグ内でのリツコとの会話)
リツコ「どう、レイ? 初めて乗った初号機は」
レイ 「……碇君の匂いがする……」
・コメント:
シンジの匂いをいつ嗅いだのか訊きたくなる(!)が、 レイの部屋でのアクシデントの時か、 それとも単にイメージを匂いとして表現したのか。 とにかく、シンジのことを常に意識しているということかも知れない。


○第拾五話「嘘と沈黙」
(エレベータの中でのシンジとの会話)
シンジ「案外、綾波って、主婦とかが似合ってたりして」
レイ 「……何を言うのよ……(赤面)」
・コメント:
なぜ赤面したのか甚だ疑問なのだが、 自分は『血を流さない女』だから主婦ができないと思っているはずなので、 冷静に対応してもいいはず(怒ってもいいか)。 それとも、主婦をやっているところを想像してしまったのか?(笑)  シンジに言われたので、未来の旦那様に当てはめてしまったとか(笑笑)。 それはともかく、シンジが自分に対して「評価」を与えたことに何か特別な意味を感じたのだと考えられる。


○第拾六話「死に至る病、そして」
(初号機が使徒に飲み込まれていく際)
ミサト「シンジ君、逃げて! シンジ君!」
レイ 「碇君!」
アスカ「バカ! 何やってんのよ!」
・コメント:
シンジのことを心配している。すなわち、他人の心配をすることができるようになった。 (でも、たぶんアスカのことは心配しないだろうが)
次の2項も参照。


○同話
(初号機が使徒に飲み込まれた後)
ミサト「アスカ、レイ、後退するわ!」
アスカ「ちょ……」
レイ 「待って!……まだ、初号機と碇君が……」
・コメント:
はっきりシンジのことを心配しているのが解る(以前なら初号機だけを心配する?)。 ヤシマ作戦の直前、『私は初号機を守ればいいのね』と言ったことを思い出すこと。 直後、『あなたは死なないわ。私が守るもの』と言ったことから、 『初号機=シンジ』、つまり同一の存在と考えていたことが解るが、 今の時点では、『初号機&シンジ』という並列の関係になっている。 つまり、シンジの存在の重要性が高くなっているということ。


○同話
(一時退却後、アスカがシンジのことをバカにして大きな声で独り言を言っている際)
アスカ「な、何よ……シンジの悪口を言われるのが、そんなに不愉快?」
レイ 「あなたは、人に褒められるために、エヴァに乗ってるの?」
・コメント:
このレイの発言が出た意味は、明らかにシンジをバカにしたアスカを責めてのことであろう。 なぜなら、レイの方からアスカに話しかけようとしたのはこの時点が初めてだからである。 また、これほど感情的な口調も初めて。 自分はシンジを心配しているのに、 同僚は心配どころかシンジをバカにする発言をしているのを聞いて、 堪えられなくなったのだろうか。 (アスカも内心はシンジを心配してるんだけどね)


○同話
(病室でシンジが意識を回復したとき)
レイ 「今日は寝ていて……後は私たちで処理するわ」
シンジ「うん……でも、もう大丈夫だよ……」
レイ 「そう……良かったわね……」
・コメント:
まさかこれだけのことを伝えるために病室に来たのではあるまい。 当然、シンジを心配して見舞いに来たのに決まっている。 また、この時の優しい口調にも注目したい。 いかにシンジのことを心配していたかが解ろうというもの。


○第拾七話「四人目の適格者」
(レイの部屋でシンジがゴミを片付けていたシンジとの会話)
シンジ「ゴメン。勝手に片付けさせてもらったよ。ゴミ以外はさわってない」
レイ 「あ……ありがと……(赤面)」
・コメント:
ゴミを片付けてもらったくらいで礼を言うのも大げさだが (ましてや赤面するほどのことではない)、 『自分にとって何の利益にもならないのに、他人のために何かすること』 に何らかの感情を抱いたのは明らか。 そのせいで感謝の言葉が口を衝いて出てきたものと考えられる。 (次項も参照)


(シンジとトウジが帰った後、ベッドの上での独り言)
レイ 「ありがとう……感謝の言葉……初めての言葉……
    あの人にも言ったことなかったのに……」
・コメント:
この独り言における最後の自問気味の言葉は、シンジとゲンドウを比較していると考えられる。 自分に対して優しく接してくれる存在はこの二人だけと思っており (それはレイがこの二人だけに対してしか笑顔を見せていないことから明らか)、 シンジの方がゲンドウよりも自分に対して優しいのではないかと考え始めていると取ることができる。 もちろん、優しさの違いにも気付いただろう。


○第拾八話「命の選択を」
(学校の屋上で、トウジと)
トウジ「人の心配とは、珍しいなぁ」
レイ 「そう? ……よくわからない」
トウジ「お前が心配しとんのは、シンジや」
レイ 「そう……そうかもしれない……」
・コメント:
トウジに何を言いに来たのか定かではないが、 たぶん、トウジが適格者に選ばれたことについて何らかの感情を抱いたのだろう。 その感情が何かを確かめるために、トウジに意見を求めに来た、とも考えられる。 その結果、自分がシンジを心配していることをおぼろげに気付かされるとは ……シンジよ、いい友達を持ったなぁ(笑)


○第拾九話「男の戰い」
(初号機を使って抵抗を試みたシンジが強制排除された後、収容された病室の前でアスカとの会話)
アスカ「ダメかもしれないわね……あのバカ、立ち直れないわよ、きっと」
レイ 「……碇君は?……」
・コメント:
シンジの話をしていたのではなかったのか?(笑)  もしかしたら、レイには「バカ」が誰を指すかが解らなかったのかも知れない。 とにかく、(トウジより)シンジが(断然)心配であることが解る。


 そして、ついにこの感情に至ります。



○第弐拾参話「涙」
(自分と融合しかけている使徒が、シンジの方に向かったのを知って)
レイ 「これは、私の心? ……碇君と一緒になりたい……」
・コメント:
そのまんま(笑)


 さて、この後、問題発言が出ます。



○同話
(零号機自爆後、収容された病院から退院時にシンジとの会話)
シンジ「零号機を捨ててまで、僕を助けてくれたんじゃないか。綾波が……」
レイ 「そう……あなたを助けたの」
シンジ「うん……憶えてないの?」
レイ 「いいえ、知らないの……たぶん、私は3人目だと思うから」
・コメント:
シンジを『あなた』と呼んだことから、シンジのことを知らないと取れる (事実、映画のパンフレットにもそう書いてある)が、 ここでは敢えて、そうは取らない。 なぜなら、シンジのことを知らないことはあり得ないと思うから。 その根拠として、ダミーシステムのことがある。 本編でダミーシステムに使われた『レイのパーソナル』とは、 魂を持たないレイのクローン体の一つであるとされており、 それらのクローン体に移植されているレイのパーソナルはその時は既にシンジのことを知っているはずである。 そして、ダミーシステムに使う一体だけにパーソナルを移植するわけではあるまい。 魂を持つレイから採取したパーソナルを、 水槽に浮かぶクローン体全てに同時に移植すると考える方が自然。 3人目のレイはそのうちの一人であるので、 少なくともダミーシステムが作られた当時の記憶くらいは持っていると考えられる。 そうでないと、3人目のレイはシンジどころかゲンドウさえも知らないことになってしまう。 それとも、まさかあんな短時間でパーソナルが移植できるとでも? いずれにしても、3人目のレイは、2人目のレイが最後にパーソナルを採取した時点と同等の記憶、 及び知識を有していると考えたいのである。
また、冒頭で述べた『あなた』発言についても、 本編においてレイがシンジに対して(面と向かって)『碇君』と呼びかけたことはないことから、 「あなた」と呼びかけても別段不思議ではない。 レリエルに飲み込まれていくシンジに『碇君!』と呼びかけたのが唯一の例であろう。 これとて、面と向かっての発言ではない。


 以上の考察を踏まえ、3人目のレイが知らない重大なポイントは 『自分がシンジと一緒になりたいと思っている』ことであるとすると、 これを3人目のレイに『思い出させる』ことにより、レイは幸せになれると思われる(笑)。

新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。

To be continued...



Written by A.S.A.I. in the site Artificial Soul: Ayanamic Illusions