第8章までのあらすじ

 りすののん太のさくらんぼがなくなりました。さるのもん吉警察署長や、ブルドッグ検事が調査した結果、意外にも、のん太となかよしのまり子があやしいようです。
 ふくろうの裁判長のもと、春、夏、秋の三回にわたって裁判がひらかれました。まり子は、問題の夜、外にでていないといいます。まり子の弁護は、はとのりべるがひきうけました。
 からすときつねの証言は、りべる弁護士がうそみやぶりましたが、もぐらやりすのむんく、野ねずみ、こうもりの証言は、まり子に不利なものでした。
 さるのもん吉署長が、友だちとして、まり子によびかけます。うそをつくのはやめてくれと…。
 ついに、まり子が、その夜、のん太のさくらの木にのぼっていたことを認めました。しかし、木をまちがえてのぼったので、さくらんぼはとっていないといいます。証人はお月さま以外にいません。
 ブルドッグ検事は、おしり五十回の罰を求刑します。はとのりべる弁護士は、うたがいだけで罰をきめてはいけない、まり子のいうことが信じられないものは、お月さまにきいてくれと主張します。
 ふくろう裁判長は、お月さまにたずねて、返事がくるまでは判決はおろさないといいました。おおさわぎのまま裁判は終わりました。
 やがて、森に冬がやってきました。


第9章 また春がきて

 春は、風にのってやってくる。
 もりのこだかい丘についた春は、
 うつくしいリボンをほうぼうになげかける。
 リボンのおちたところに、春のこどもたちが生まれる。
 春のこどもたちは、森のなかを走りまわり、
 まだすみっこにかくれている冬と、おいかけっこをはじめる。
 小川の氷がわれる。草がみどりの芽をだす。
 いつのまにか、冬のすがたがきえて、
 あかるい顔をしたお日さまがのぼってくる。
 みどりの草のなかから、花がさきはじめる。
 耳をすますと、みつばちのはねの音がきこえる。
 ちょうちょうが、そよかぜとぶらんこあそびをしている。
 小鳥たちが、たのしそうに春の歌をうたう。
 小川も、その歌にあわせて、
 やっときたあたたかい春を、森のすみずみにまではこんでいく。
 木々が、大きくのびをする。
 ながい冬の夢からさめた動物たちが、
 手をとりあっておどっている。
 おや、きつねのこん太だけ、そのおどりのわにはいっていない。
 どうしてだろう。


つづく