前号からのつづき
りべるは弁護をつづけました。
「いままで、まり子はとてもよいりすでした。うたがわれることを心配して、うそをついたことをのぞけば、おそらく、いままでうそなんかいったこともないでしょう。検事のいったとおり、まり子をうたがえばうたがえます。けれども、悪いことをしたという証人はいません。もちろん、のん太のさくらんぼを、とっていないという証人もいません。しかし、昔から、うたがいだけでは罰をきめることができないのを、みんな知っているはずです。だから、あとは、みなさんがまり子を信じるかどうかということになります。いままでのまり子を知っているわたしは、そのいっていることを信じます…。それでも、まだ信じることのできないかたには、お月さまにきいてもらうよりしかたがありません」
「よくわかりました。それでは、わたしもお月さまにきいてみたいと思う。お月さまからへんじがくるまで、判決はおろさないことにします」
と、ふくろう裁判長がいいました。
判決というのは、検事と弁護士のいうことをよくきいて、罪があるかどうかをきめることです。
「けしからん。じつにけしからん」
ブルドッグ検事がおこっている。
「お月さまにきくなんて、このブルドッグ検事をばかにしている。お月さまがへんじをするわけがないじゃないか」
「ブルドッグ検事、わたしのいったことがきこえなかったのですか。裁判はこれで終わったのです。判決をおろすのがいつになるかわかりませんが、とにかく、お月さまからへんじがきてからにします」
森の動物たちも、のん太もまり子も、あっけにとられて口もきけません。
ふくろう裁判長はなにを考えているんだ。お月さまがものをいうわけがないじゃないか、みんなそう思ったからです。
だれもが、心のなかに不満をのこしたまま、裁判は終わりました。
やがて冬がやってきて、まっ白な雪がふりました。
ながいあいだ、冬は、森にすんでいました。
つめたい北風と、うつくしい雪も、いっしょにすんでいました。