前号からのつづき


 まり子がおちついてから、裁判はつづけられました。
 ブルドッグ検事がたちあがって、求刑します。求刑というのは、こんな罪があるから、これだけの罰をあたえたらどうだろうと、検事がみんなにはかるのです。
「さて、もぐらさんとこうもりさんがいったとおり、まり子がのん太のさくらの木にいたことは、まちがいありません。はじめ、まり子は、その夜、外には出なかったといいました。そのあとで、しかたなく、それがうそだとみとめました。まり子は、うそをいったのです。それはそれとして、ひとつうそをいったものが、ほかのことをほんとうだといっても、それを信じることができましょうか」
 もん吉署長も、のん太も、すこし、ひどいことをいうなと思いました。ブルドッグ検事のいっていることは、どこもまちがってはいませんが、まり子がぬすんでいないといったことを信じていたからです。
「それに、まり子のいっていることには、証人がだれもいません。それはそれとして、ここでまり子を、もし無罪だとしたら、ほかに悪いことをした動物が出てきたとき、みんなまり子のまねをするでしょう。そこにはいたけれど、悪いことはしなかったというでしょう。正しいものは正しい、悪いものは悪いと、はっきりさせなければなりません。そこでわたしは、まり子におしり五十回の罰を求刑します」
 おしり五十回というのは、おしりを五十回たたかれることです。
 こんどは、はとのりべるが、まり子を弁護する番になりました。
「ブルドッグ検事がいったように、たしかに、まり子はのん太のさくらの木にのぼりました。しかし、それを見たもぐらさんもこうもりさんも、まり子がさくらんぼをとったところを見ているわけではありません」
「かんけいないよ、そんなこと。その晩にさくらんぼがなくなったんだし、のぼっているところを見たものがいるんだから、それでじゅうぶんだよ」
と、ブルドッグ検事が口をはさみました。
「ブルドッグ検事、いまはりべる弁護士の番だ。へんなところで発言してはならん」
 ふくろう裁判長がおこっています。ブルドッグ検事は、しかたなく腰をおろしました。


つづく