前号からのつづき
「わたしは、この事件を、はじめからしらべています。いままでの裁判のおかげで、わからなかったことが、だんだんはっきりしてきたように思えます」
もん吉署長は、ふうっとためいきをつきました。
「まり子は、わたしの大好きな友だちです。この子が、のん太となかよくしあわせをつかむのを、心からねがっていました。いまでも、そう思いたいのです。だけど、ざんねんなことに、まり子はうそをいっている。もぐらさんや、こうもりさんが見たりすは、まり子にまちがいありません。五月四日の夜、まり子は外に出ました。さくらんぼをとったかどうかはわかりません。だけど、のん太のさくらの木にのぼっていたのは、ほんとうのことなのです。そうとしか、考えられない。まり子、どうして、こんなうそをいうのだ。もう、そんな子はわたしの友だちじゃない。どうか、ほんとうのことをいっておくれ。わたしの心からのおねがいだ。そんなまり子を見るのは、わたしにはがまんできない。かあさんだって、どんなにかなしむことか…」
もん吉じいさんは、思わずなみだをながしました。
「あの、かわいくて、すなおなまり子はどこにいったんだ。ここにいるへんな子は、まり子なんかじゃない!」
まり子は、かたをふるわせてなきふしました。のん太は、そばに走りよって、まり子のかたをやさしくだきしめました。
・・・もし、うそをいってたのなら、勇気をだして、ほんとうのことをいってくれ。
心のなかで、のん太はそう思いました。
森の動物たちがさわぎはじめます。
まり子がたちあがりました。なきじゃくりながら、それでも、しっかりした声で話しはじめました。