前号からつづく
「あなたが見たとき、そのりすは、さくらの木のどのあたりにいましたか」
「一番てっぺんです。だから、よく見えたのです」
「もうたずねることもないようですね。裁判長、質問を終わります」
こうもりが、証言席からかえりかけたとき、
「ちょっと、ちょっとまって」
りべる弁護士が、なにかきくのを忘れていたようです。
「あなたが見たとき、そのりすはさくらんぼを食べていましたか」
「いいえ」
「それでは、手にもっていたということもありませんね」
「はい。ただ、のん太のさくらの木にまり子がいたので、おかしいなと思っておぼえていただけです。わたしも、食べものをさがすのにいそがしくて、そんなに長くは見ていませんでしたから」
「裁判長、これで終わりです」
りべる弁護士がすわると、森の動物たちが、がやがやと、いっせいにさわぎはじめました。
「まり子はうそをいっていたんだ」
のら犬のわん公がさけびました。
「まり子は親孝行だから、かあさんに食べさせようと思ってとったんだ」
と、おおかみがいいました。
「まちがいだ。みんなの思いちがいだ。そんなことはぜったいにない」
りすのむうむうじいさんも、負けずに大きな声をだしている。
「あんたのいっていることには、なにも証拠がないじゃないか」
のら犬のわん公が、またさけびました。
ふくろう裁判長が、木づちで、机をつよくたたきました。みんな、しずかになりました。
「みなさん、もん吉署長が、まり子と、それからみなさんに、話したいことがあるそうです。だから、いまから、それをきくことにします」