前号からのつづき
「どうだい、おおかみさん。どっちの勝ちだと思うかい」
のら犬のわん公が話しかける。
「やっぱり、わしはブルドッグ検事の勝ちだと思うよ。はじめからそう考えとったがね」
と、これはおおかみ。
「わたしゃね。この裁判は、どこかまちがっとるように思えてならん。ぜったいに、まり子じゃない。なにも、証拠はないがね。だが、おなじように、まり子が食べたという証拠もないじゃないか」
りすのむうむうじいさんは、まり子にみかたをしている。
「なにがなんだか、わからないんですがね」
のら犬のわん公が、首をひねる。
「だけどね、もぐらさんの見たりすは、まり子にまちがいないような気がする。やっぱり、ブルドッグ検事が正しいのかな」
どうやら、のら犬のわん公は、おおかみとおなじ考えのようです。
「もん吉署長、どうだね、わしの検事ぶりは」
「そんなこと、どうでもいいでしょう。わしは、まり子がかわいそうでならんのですよ」
「いや、まり子が犯人だよ」
ブルドッグ検事は、自信たっぷりです。
「からすは、わしの失敗だったが、こんどの裁判では、きつねとこうもりに証言してもらうさ。そうすれば、まり子を見たものが、もぐらと、きつねと、こうもりということになる。まり子は、あの晩、外へ出ていないといっているが、それがうそだということが、みんなにもわかるはずだ」
「だけど、もぐらさんが見たのは、まり子かどうかはっきりしないんですよ」
「かわいい女のりすで、しっぽのさきの白いりすは、むんくや野ねずみがいったとおり、たぶん、ほかにはおらん。もし、おったとしても、あの足あとには、あわないだろう。もぐらが見たのは、まり子にまちがいない」
もん吉署長は、まり子を信じている。けれども、考えれば考えるほど、まり子がうそをいっているとしか思えない。それに、ブルドッグ検事のいっていることが、まちがっているともいえない。そう考えると、とても心配でした。
・・・もぐらさんは、うそをいったりしていないだろうな。
と、はとのりべるが考えている。
・・・まり子は、わたしに、あの夜は外に出ていないといった。まさか、あの子がうそをいうわけはないだろう。そうすると、もぐらさんが、うそをいっていることになる。だが、なんのためにうそをいったりする だろう。べつに、とくをするわけでもない。もしも、もしもだ。まり子がうそをいっていたとしたら…。それでも、わたしは、まり子を弁護しなければならない。ああ、なにを信じたらいいのだ。
はとのりべるは、ためいきをつきました。
こんなふうに、みんな考えこんでいます。
やがて、三回めの裁判の日がやってきました。
もう、すぐそこまで冬がやってきたような、さむい日でした。