第6章までのあらすじ

 りすののん太のさくらんぼがなくなりました。さるのもん吉署長やブルドッグ検事がしらべたところでは、意外にも、のん太のなかよしのまり子があやしいようです。
 裁判が開かれることになりました。裁判長はふくろうです。まり子は無罪を主張しました。弁護は、はとのりべるです。第一回めの裁判では、もん吉署長と、もぐらが証人によばれました。どちらの証言も、まり子に不利なものでした。
 第二回めの裁判では、野ねずみと、りすのむんくが証言しました。どちらともきめられないような証言です。つづいて、からすが証人によばれましたが、りべる弁護士のきびしい追及にあって、うそがばれてしまいます。


第7章 ひとやすみ

 秋のもみじが、まっかにもえている。ちょうどお日さまがしずむころ。空ももみじのように、あかくかがやいている。
 かきの木も、くりの木も、実をいっぱいにつけている。風がひかって見えるほどすみきっている。
 雲が、遠い国へながれていく。夕日にまっかにそまって、ばらの花をしきつめたよう。
 すこし北の国では、もう冬がきている。このあいだ、風がそのことを話してくれた。まっ白な雪がふりつもっていると…。

 ふくろう裁判長が考えこんでいる。
・・・まり子は、なにかかくしているな。わたしの思うところでは、おそらく、ぬすんだりはしていないだろう。だが、もん吉署長たちがしらべたとおり、あの足あとは、まり子のものだろう。しっぽのさきの白いりすというのも、まり子のことだ。もちろん、もぐらさんも、まり子がさくらの木のそばにいるのを見ただけで、のぼっているのを見たわけではない。ただ、まり子が、その夜、外にでなかったといっているのがおかしいのだ。もぐらさんの見たりすが、まり子でないという可能性は、十のうち一つか二つだろう。たった一つのさくらんぼのために、まり子は、なにかかくしている。からす君はうそをいう。かなしいことだ。この森はすみよいところだったし、これからも、そうでなくてはならん。むずかしい事件だが、きっとほんとうのことを見つけて、もとどおり平和な森にするのだ…。

 ぶどうの実をとってやりながら、のん太が話しかける。
「まり子ちゃん、こんなことになってごめんよ」
「知らない。のん太ちゃんなんか、だいきらい」
「そんなこと、いいっこなしにしようよ。食べてごらん、このぶどう、とってもおいしいからさ。あんまり、おこってばかりいるものじゃないよ」
「知らない、知らない。あなたも、わたしじゃないかって思ってるんでしょう。そんなのきらい」
「とんでもない。いやだな、そんなことをいうなんて。いつものきみとちがうよ。ぼくは裁判なんかいやだっていったのに、きみが、してもいいっていったからじゃないか」
「知らない、知らない」
 あいかわらず、なかよしのけんかです。
「けんかばかりするんじゃないよ」
 むんくがやってきて、しかりつける。
「ぼくは、けんかなんかしたくないんだ」
「わたしも.…。それなのに、のん太ちゃんの顔を見たら、こまらせたくなってしまう。まり子は、とてもいじのわるいりすになってしまったわ」
「じゃ、なかなおりだね」と、むんくがいいました。
 ふたりはおとなしくうなずきましたが、どことなくさびしそう。なきたくなるのをがまんしているのです。



つづく