前号からのつづき


「まあ、天気のことはいいでしょう。さっきわたしがいったことを聞いていたでしょうから。それはべつにしても、からすさんは、夜もとべるものらしいですね。ふつうの鳥は、夜は目が見えなくなるはずです。とぶのもあぶなくてできないのに、さくらの木に、まり子がのぼっていたのが見えたなんて、おかしいとは思いませんか」
「ええ、ぼくも、おかしいと思います」
 からすは、いまにもなきだしそうな声で答えました。
「自分で、自分のことをおかしいっていってら」
と、傍聴席の動物たちが、いっせいにわらいだしました。
「あなたは、いまのまり子の家にすみたがっていると聞きました。だから、まり子が罰をうけると追い出して、そこにすもうと思っているのではありませんか。そうでないといえますか。とにかく、あなたのいったことは、ぜんぶあてになりません」
・・・けしからん、まったくけしからん。
 ブルドッグ検事が、顔をまっかにしておこっている。
・・・からすのやつめ、このわしをだましおった。
 このからすの証言では、ブルドッグ検事も、すっかりりべる弁護士にやられてしまったようです。
 くやしがっているブルドッグ検事を見て、もん吉署長はおかしくてなりません。
「よくわかりました」
 ふくろう裁判長がいいました。
「からす君、あなたはうそをいいましたね。その罰として、いまから一年のあいだ、まり子のおかあさんのところへ、たべものをもっていきなさい。なまけてはいかんぞ。みんなで見はっているからな。さて、第二回めの裁判を、これで終わりにします。このつぎには、きょうのからす君みたいなことのないように。罰がきまったのだから、ブルドッグ検事も、あとでからす君をいじめたりすることのないように。つぎは、十一月にひらきます」

第7章へつづく


ものがたりのはじまりにもどります。