前号からのつづき


 つづいて、ブルドッグ検事は、もぐらをよびだしました。
 目かくしをしているので、証言席まで手をひいてやります。
「あなたが五月四日の晩に見たことを話してください」
「いつかの晩、あんたに話したことかい。もう一回いうのは、いやだどもな」
「そんなことをいわないで、こんどは、みんなに話してもらうんですよ」
「そうかい。なら、しかたなかな。いま、みんながわいわいいっとるさくらのそばをよ、かわいいりすがあるいとっただ」
「なまえを知っていますか」
「うんにゃ」
「なにか、目じるしになるようなものがありましたか」
「うん、かわいくてな、しっぽのさきっちょがよ、白かっただよ」
「質問を終わります」
 こんどは、はとのりべる弁護士の番です。
・・・こまったな。ほかに、足のおおきさがおんなじで、しっぽのさきの白いりすがいるのかな。だけど、まり子は、あの晩は外にでていないといった。これは、どういうことなんだ。とにかく、なにかたずねなくては…。
「あなたが見たとき、そのりすは木にのぼっていたのですか」
「うんにゃ」
「木のそばをあるいていただけですね」
「うん」
「質問終わり」
 ふくろう裁判長は、木づちをトントンとうちました。
「それでは、第一回の裁判をこれで終わります。つぎは、九月にひらきます。それまでに、みんな、もう一度よくしらべておいてください」

第6章につづく


ものがたりのはじまりにもどります。