前号からのつづき


「のん太の訴えによる、このさくらんぼ事件の犯人は、いろいろしらべました結果、まり子にまちがいないと信じます」
 ブルドッグ検事は、証人席にまり子をよびだしました。
 裁判長の前に、証人席があります。
「まず、まり子の証言をもとめます」
 まり子が証言席にすわると、ブルドッグ検事がむずかしい顔をしてたずねました。
「あなたは、この事件について、有罪と思いますか。無罪と思いますか」
「無罪です」
 まり子は、検事の顔をじっとみつめながら答えました。
「それでは、五月四日の夜、どこにいましたか」
「うちでねていました」
「その夜は、はれていましたか、くもっていましたか」
「そんなこと、うちでねていたからわかりません」
「うちから、一歩も外へでなかったというのですか。まちがいありませんね」
「ええ」
「だれか証人がいますか」
「いいえ、おかあさんはねむっていましたし、だれもいません」
「裁判長、質問は終わりました」
 つぎに、ブルドッグ検事はもん吉署長をよびだしました。
「あなたは、のん太の訴えを聞いて、さくらんぼ事件をしらべましたね」
「はい」
「そのさくらの木のねもとで、なにを見つけましたか」
「のん太のより小さいりすの足あとです」
「それは、だれのものとあいましたか」
「・・・・・・」
 もん吉署長は答えたくないようです。
「答えてください、もん吉署長」
「まり子のまえ足とあいました」
「裁判長、その足あとのかたをとったノートを証拠としてていしゅつします」
 ふくろう裁判長は、うなずいてうけとりました。
「りべる弁護士、君のほうから、もん吉署長に質問がありますか」
 ブルドッグ検事がすわったあと、ふくろう裁判長がたずねました。
「裁判長、ひとつだけ、たしかめたいことがあります」
 りべる弁護士が立ちあがりました。
「もん吉署長、その足あとが、まり子のものだと思いますか」
「はい」
「その足あとは、大きさだけしかわかりませんね」
「そのとおりです」
「この森に、りすがなん匹いるか知っていますか」
「さあ、二百匹くらいじゃないかと思います」
「そのりすたちの中で、あなたの見つけた足あととぴったりあうのは、まり子だけなのですか」
「いいえ、そういうことではありません。ぜんぶのりすの、足の大きさをしらべることなんかできないし、たぶん、ほかにもいるかも知れません。ただ、まり子のまえ足と、ぴったりあったといっているのです」
・・・うまくいったぞ。
 りべる弁護士はつぶやきました。
・・・これで、あの足あとは、やくにたたなくなったわけだ。
「裁判長、質問は終わりました」
 このようにして、裁判はすすみました。検事と弁護士は、かわるがわる質問していくのです。
 裁判は、このように公正にすすめられていきました。


つづく