「実数のつくり方」―余裕があれば複素数、四元数まで

SF乱学講座 2001/6/3 18:15-20:15 志村 弘之

(記号)論理学

論理学(1階述語論理を前提とする)後掲

集合論(ZF(C))

公理系後掲

自然数(ペアノ)

公理系後掲

φ、{φ}、{φ,{φ}}、{φ,{φ},{φ,{φ}}}、{φ,{φ},{φ,{φ}},{φ,{φ},{φ,{φ}}}}、… …

φ、羃、羃羃、羃羃羃、羃羃羃羃、… …

0, 1, 2, 3, 4, … …

「空集合(何もない集合)が、それだけがある」とは、どういうことか。というような哲学には立ち入らない。

無限の話(&Aleph;0)

可算無限

ヒルベルトホテルとラッカー「白光」

N

整数と有理数

四則演算に因る拡張

加算
減算

負の数

Z

乗算
除算

分数(有理数)

Q

代数拡大

整係数多項式に因る拡大

√2

x 2 = 2 の根

もう複素数になってる

i = √-1

x 2 = -1 の根

代数的閉体

でも可算個(実数は連続個(非可算個、2{可算})あるのに)

Q-

代数的(実)数から実数へ

超越拡大

e , π…

いったいいくつ超越拡大したら済むのか --済まない

完備化

大小関係と完備化。ε-δ(イプシロン-デルタ)とか。

R

「羊羹の切口には羊羹は無い!」

大森荘蔵

代数学の基本定理

(下記、各行は互いに言い換えてるだけで同じこと)

複素数の範囲内でいろんな計算をしても、複素数の外に出てくことはない、出ていく必要はない。

これでおしまい

C

連続性、連続になると言う事

微分の礎としての連続性

イプシロン-デルタ、微分。

-

選択公理

公理後掲

じつは(可算)選択公理を使っている

連続体仮説

基数と連続体仮説、カントール、そしてコーエン

-

四元数と非可換性

ハミルトンの四元数体、もはや可換ではない

H

行列

非可換な“代数”の例としての行列

群、環、体、そして環と可群

抽象化された数:“代数”たち。四則演算の抽象化、性質の抽象化と捨象

無限次元の数: ヒルベルト空間

無限次元の“数” (ヒルベルト空間だけではない)

付録

1階述語論理の体系

集合論言語

  1. 記号系

  2. 形成規則(論理式の定義)
  3. 述語論理の公理系
  4. 推論規則

ZF(C) : 集合論の公理系

  1. 外延公理 ∀z(z∈x⇔z∈y)⇒x=y
  2. 対公理 ∃z∀u[u∈z⇔(u=x∨u=y)]
  3. 和集合公理 ∃y∀z[z∈y⇔∃u(z∈u∧u∈x)]
  4. 冪集合公理 ∃y∀z(z∈y⇔z⊆x)]
  5. 空集合公理 ∃x∀y¬(y∈x)
  6. 無限(集合)公理 ∃x[φ∈x∧∀y(y∈x⇒y∪{y}∈x)]
  7. 置換公理図式 集合論言語scLの vを含まない任意の論理式 ψ(x,y) について ∀x∀y∀z[ψ(x,y)∧ψ(x,z)⇒y=z] ⇒ ∃v∀y[y∈v⇔∃x(x∈u∧ψ(x,y))]
  8. 正則性公理 x≠φ⇒∃y(y∈x∧∀x,y∈u(x≠y⇒x∩y=φ)
  9. 選択公理 ∀x∈u(x≠φ)∧∀x,y∈u(x≠y⇒x∩y=φ)⇒∃v∀x∈u∃!t(t∈x∧t∈v)

ツェルメロが発表(1908)した公理系を、しばらくして(1921-1922)フレンケル、スコーレムが「置換公理図式」を (ツェルメロの「分出公理(分離公理)図式」から) この形に強化して定式化したもの。 スコーレムの名も引いて ZFS集合論と書く人もいるが、ZF で定着してしまっている。

「選択公理」(Axiom of Choice)を付け加えるかどうかで、ZF か ZFC か Cの字を書くかどうか書き分ける。

ペアノの公理系

自然数の集合 N とそのうえの「次の数」を定めるべき函数ψについて

  1. ∀n∈N∃!m∈N(ψ(n)=m)
  2. ∀n∀m(ψ(n)=ψ(n)⇒n=m)
  3. 0∈N
  4. ∀n∈N(¬ψ(n)=0)
  5. ∀M⊆N[(0∈M∧(n∈M⇒ψ(n)∈M))⇒M=N] (数学的帰納法の原理)

選択公理

選択公理とそれより弱い(が有用な)もの

次の三つは互いに同値

参考文献

野矢茂樹, 無限論の教室, 講談社現代新書 (1998).

自然数から無限の話、ゲーデルの不完全性定理も。 僕の立場とは相反する立脚点からの解説ではあるが、哲学系からの入門としてはフェアーでいいと思う。

竹内啓, 数の構造(シリーズ新しい応用の数学 21), 教育出版 (1979).

「自然数 1,2,3,… から出発して、複素数までの「数」の体系を順次構築していくとともに、その構造を明らかにする」 徒に公理論的だったり、基礎論うんちくだったりしない、数学を使う基礎としてよい解説。

一松信, 代数学入門第三課, 第4章 体とその拡大, 近代科学社 (1994).

全体としては代数学全般の入門である。今回は有理数体から代数的に拡張するところだけ参考にする。

西村敏男・難波完爾, 公理論的集合論, 共立講座 現代の数学 2, 共立出版 (1985).
田中尚夫, 公理的集合論, 現代数学レクチャーズ B-10, 培風館 (1982).
田中尚夫, 選択公理と数学(増補版)−発生と論争、そして確立への道, 遊星社 (1999).

今回、公理系などはこの3冊から適宜引用した。

rdソース

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