中学生の時からのラーメン屋さん「高倉軒」(閉店しました)
福岡市中央区赤坂

福岡の豚骨ラーメンはドベドベしていなかった。最近の博多ラーメンは、ドベドベしていて品がない。

福岡のラーメン屋さん。子どもの頃の

福岡市中央区のラーメン屋さん、「高倉軒」。店構え、赤い暖簾に白字で中華料理と書いてあります。入り口の横にいすが置いてあり、その上に今日の定食メニューを書いたホワイトボードがあります。

福岡と言えば豚骨ラーメンを思い浮かべられる方も大勢いらっしゃると思いますが、福岡(長浜)のラーメンは、1945/8/15の敗戦以後の物です。そんな、えらそうな物じゃないのです、御馳走じゃなく小腹がすいたときに、すすり込む物なのです、決して行列の最後で忍耐力を試す物ではないのです。福岡市のダウンタウンで生まれた私だって、子どもの頃に豚骨ラーメンなんて食べたことありません、当時は近所のおそば屋さんで「中華そば」に浮いている味付けのりに感激していました。当然おそば屋さんが作る物ですから、スープは澄んでいました。

始めての豚骨ラーメン

福岡市中央区のラーメン屋さん、「高倉軒」。周りもビルだらけになりましたが道幅は昔と変わらぬ車がやっと離合できる程度の何処にでもあるような狭い裏道です。

私が、豚骨ラーメンを始めて食したのは中学生になってからです、それまでは豚骨ラーメンは大人の食べ物で、「女子供の食い物じゃない(現在なら差別的発言です)」、「スープは猫の頭が入っている(決して入っていませんでした、そんな事をしたら福岡中の猫がいなくなって、鼠が増えて大事になっていたはずです)」という時代でした。

中学生になってすぐの頃、学校の近所の福岡市中央区赤坂に「高倉軒」というラーメン屋さんが開店しました。

お店の前で大鍋でスープを採っていらっしゃいました、登下校の時恐る恐るその鍋をのぞき込みますが、猫の頭なんか決して入っていません。動物の骨(豚骨)と、豚の頭がグツグツ煮たっていたのを覚えています。それならと、友人と休み時間に学校を抜け出し食することにしました。

「高倉軒」でのできごと

白濁したスープにほのかに薫る醤油の香り、少し小ぶりの焼き豚2切れ、擂り胡麻に刻みネギ(決して白ネギじゃありません、当然緑色です)、カウンターの上には食べ放題の紅ショウガ。私たちは、大人になったようで得意満々でした。生まれながらのお調子者の私は、毎日のように学校を抜け出しては「高倉軒」で大人になっていました。

ところがある日、隣の席に体育の先生が座ってしまいました。いきなり、力ずくで中学生に引き戻されてしまいました。英語の時間に、先生から「晩翠軒」がうまいぞ、と教わりました、中学校の英語で覚えているのは、これだけです。このお店は、学校から少し遠いので放課後に行くことにしました。寸胴鍋に「鶏の脚」が多量に入っていたのを覚えています。「高倉軒」と同様に白濁していますが、もっとあっさりとしたスープでした。

高校生や大学生の頃。福岡市城南区や東京都練馬区で

高校生になると、やはり近所に「大龍軒」というお店がありました。このお店は、うれしいことに学割までありました、部活の前後にいつも行ってました。大学生になり、福岡を離れ東京都練馬区桜台の「味の一番」さんの「醤油ラーメン」にどくされました。帰省すると友人が屋台を始めていました。開店当初は、麺の湯切りがうまくいかず、よく地べたに落としていました。そのうち地力が付き湯切りもスープもとても美味しくなっていきました。自家製のスープには、豆を煮ているような薫りが漂っていました。

福岡のラーメン屋さん。最近思うこと

グルメ番組

福岡市中央区のラーメン屋さん、「高倉軒」。入り口。磨りガラスの扉に、真心の味、中華高倉軒と白字で書いてあります。

マスコミが、報道の使命を捨て安易なグルメ番組を制作し始めました。最初の頃は東京中心のお店でしたが、そのうち地方のB級グルメ番組をこぞって制作し始めた頃からえらそうなラーメン屋が増殖し始めました。

職場の同僚は、昼食に隣町のラーメン屋まで出かけて行ってました。気むずかしい親爺と女将さんが住宅街でひっそりと営業してたそうですが、お客が増えて対応できなくなり「会員制」にしたそうです。話を聞いていると、親爺とけんかをしてしまいそうなので1度も行かぬままでした、そうこうしている内に「暖簾」を売ってしまわれました。

近所の超有名店

その頃、近所に超有名店ができました。ある時、かみさんとその店のそばにあるうどん屋に行くため通りかかると「開店時間ですがスープができあがってません」と、お客に断りを入れている姿を見てしまいました。かみさんが、「素人じゃあるまいに」と、激怒したのを覚えています。

B級グルメ番組のせいで「醤油ラーメン」を限りなく食したくなり、そのお店が醤油ラーメンなる物をだしていると聞きつけ、逝ってしまった先輩と酔いにまかせ入店しました。お店の中は、あふれんばかりのお客さんで、大繁盛です。まあいいかと「醤油ラーメン」を注文すると、醤油の薫りがしません。

近所の超有名店のラーメン

店内をきょろきょろしていると近所の醤油屋の醤油を使用しているとぬけぬけと書いてあります。麺汁の醤油は「ヒゲタに決まっている」と、激怒し、「豚骨ラーメン」なる物を追加注文します。これも、ドベドベしているだけの白濁したスープです。店内にあの薫りがしません、あの豆を煮ているような薫りがしません。

「博多ラーメン」なのか「長浜ラーメン」なのか

そう言えば、「博多ラーメン」と、書いてあったような気がしました。私が食べていたのは「長浜ラーメン」です、きっとちがう食べ物なのでしょう。母に話すと、「あのお醤油屋さんは、おいしくないもんね」、と言ってのけられました。

中華「高倉軒」再び。福岡市中央区赤坂で

子どもが中学生になり母校を訪れると、あの懐かしい薫りが漂ってきました、店構えはやけに立派になっていますが「高倉軒」は、健在でした。親爺も女将も年をとってしまいましたが昔と変わらぬあっさりした、そのくせ薫り高いラーメンです。白濁したスープにほのかに薫る醤油の香り、少し小ぶりの焼き豚2切れ、擂り胡麻に刻みネギ(決して白ネギじゃありません、当然緑色です)、カウンターの上には食べ放題の紅ショウガ、何も変わっていません。