12月20日(金)
『ふぅ、昨日はあのあと大変だったわね。
ったく、柴三郎くんは私のことなんとも思ってないのかしら。
私はこんなにも柴三郎くんのこと……
……
はぁ。ま、考えてても仕方ないわね。
さ、て、と、追放投票の結果はぁ、っと……
……
アレ?
私に2票?京浜急子とたまみから?
2票で最多得票?
え?何?ドッキリ?』
バチン!
そのときすべての照明が消えた。
『ひゃぁっ!?……な、何?』
「残念ながらドッキリではないデス。」
「ヘアーゴムがダメ!赤いから!」
『だっ誰!?暗くて顔見えないけど!』
「死に逝く者に名乗っても仕方あるまいデス。」
「よしお前は死ね!」
『……そう……。私は解体……いえ、スクラップか……』
「クククッ……!」
「ゴミ以下っ……!」
『(柴三郎くん……バイバイ……)』
(悲鳴)
(何かが割れるような音)(続く悲鳴)
(何かが潰されるような音)(悲鳴は聞こえない)
(静寂)
(静寂)
(静寂)

12月22日(日)
僕の前からまぐ菜の姿が消えて2日が経った。
昨日今日とまぐ菜を探し雨の街を走り回っていた。
しかしまぐ菜は見つからなかった。
夜になり、
(今頃ひょっこり家に帰ってきているのでは・・・)
そんな祈るような気持ちと共に家に戻った。が、まぐ菜は帰ってなかった。
(……あ……そういえば……)
慌ててPCを起動する。たしかまぐ菜にはネットワーク接続機能もあった。まぐ菜からメールが届いているかもしれない。
メーラーを立ち上げるとメールが一通届いていた。
差出人を確認すると、萌えキャラロワイアルの主催者からのメールだった。
いくらか落胆しつつメールに目を通した。
……
……はは。ウソだろ?
12月23日(月)
僕は今まぐ菜の墓前に立っている。
「素直になればよかったな……」……か。
僕はまぐ菜に語りかけた。
「……まぐ菜。僕にとって「好き」と「愛している」に違いは無いんだ。
だからドラマや本、マンガのように簡単にその言葉を使うことはしたくなかった。
そんな簡単に口にしていいのだろうか?そんな安っぽい言葉なのだろうか?
……そう思っていた。
そして今、僕は後悔している。……素直になれなかったのは僕のほうだ。
僕はまぐ菜に拒絶されるのが怖くてそれらしい理由をつけて逃げていただけだと思う。
すまない。
……まぐ菜。今更だけど聞いてくれるかい?僕が心から君に伝えたかった言葉を。
僕がこの言葉を使うのは一生に一度、今この瞬間だけ……」
「愛してるよ。まぐ菜」
腰を下ろし、まぐ菜の墓石に寄り添い目を閉じた。
まぐ菜の返事を聞き逃さないために。
……
どうやら眠ってしまったようだ。
すでに日が暮れており、辺りは真っ暗だった。
立ち上がり、もう一度まぐ菜に語りかけた。
「まぐ菜の部屋はそのままにしておくよ。いつかまた巡り会ったときのために。……じゃ、な」
歩き出す。
コートから煙草を取り出し火をつける。
家路につきながら吸うそのタバコは、
最高に不味かった。
12月24日(火)
メールが一通。差出人はまぐ菜。
『メリークリスマぁース!
まぐ菜だよ。えへへ、ビックリした?
12月24日に届くようにしてみました。うまくいっているかな?
なんかメールってのも恥ずかしいね。毎日会っているのに。
今日は私、どうしても伝えたいことがあるのです。
今日はクリスマスイブ。聖なる夜なら奇跡も起こるさ起こして見せるさ!
・・・と思ったけど面と向かって話すのは恥ずかしいから、メールで済ませちゃいます。
え?誠意?目的が果たせるなら手段なんか何でもいーじゃん。
それにホントは、やっぱこういうことは男の子のほうから言うものなんだよ!感謝してね!
えーと、
ずっと私を守らせてあげます。
ずっと、ずっと、一緒にいてあげます。
私まぐ菜は、柴三郎くんのことが大好きです。
文句はないでしょ?柴三郎くんだって私のことが好きなんだから。
・・・好きだといいなぁ。
やっぱ恥ずかしいなぁ。
明日、柴三郎くんにどんな顔で会えばいいのかわからないや。
だから、もし、私のことが好きだったら、今晩中に私の部屋にきて、返事を聞かせてください。
あ、あー、でもダメよ!部屋に呼んだからってべつにその、あの、・・・
あーッ!なんでもない!
ふぅ。なんだかよくわからなくなっちゃったのでこのへんで。
じゃ、あとでね(確定!?)。
黒鉄まぐ菜
柴三郎様 』
僕は、今日、まぐ菜がいなくなってから初めて、
泣いた。
まぐ菜日記はここまでで終わり。
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