サウンドレスノベルツクール

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作:アルディオスwith仕仙<tutiyam8@kanazawa-eco.ac.jp>  (PHILOSOPHICAL KINGDOM)

銀天盤   ○表紙


何ぃ!? 『お前の一番大事な人は預かった』だと!?

 ヤな予感が的中したか! ・・・しかし、「お前の一番大事な人」って誰だ?

 えーとえーと・・・。僕は必死に考える。どう考えても校外から誰か連れてくるとは思えないし、とするとこの学校の生徒ということになるだろう。しかし・・・思いつかない。

 何だか妙にシラけてきた。マズイ、この状況はマズイ。

 ・・・・・・こ、こんなコトしてる場合じゃない! こうしてる間にも「僕の一番大事な人」が奴らにっ!!

 ・・・よけいシラけてきたが、そこはそれ。他には誰もいないので無かったことにして、僕は玄関へととって返す。手紙には「放課後屋上で待つ」とある。そんな手紙放課後にもらってもなあ。あ、でも放課後じゃなかったら「お前の一番大事な人」はだいぶ前から預けてあることになっちゃうか。・・・この手紙の内容が信じられるかはともかく。

 体育館裏から屋上まで行くのには時間がかかる。こんな手紙を読んだ後だから、そりゃあ早足にはなるけど、それでも考え事をする時間はたっぷりある。

【何かおかしい】 【何がおかしいんだろう】 【まず最初に、帰ろうと思って下駄箱を開けたら手紙が入っていた】 【手紙には「今日、体育館の裏で」って書いてあったんだ】 【僕はそれを「K」のいつもの悪戯だと思って、迷わずに体育館裏に来た】 【そしたら来たのは知らない女の子で、彼女は僕に手紙を渡して走っていってしまった】 【その手紙は封が切られていて、内容は「お前の一番大事な人は預かった」 ・・・】

 ・・・なんだ。おかしい事だらけじゃないか。

 僕を呼び出すだけなら最初から下駄箱にその旨を記した手紙を入れれば良かったはずだ。それなのに入っていたのは体育館裏に呼び出す手紙で、用件も何も書かれていなかった。文面だってそんな物騒な物じゃなかったし・・・だから 僕は「K」の悪戯だと断定したんだ。そして、体育館裏に来たのは女の子だったから、僕は期待して・・・でも、彼女に渡された手紙はこんな内容だった。彼女はどうして逃げるように去っていってしまったんだろう? ・・・いや、 そもそもこの手紙が彼女が書いた物のハズがない。彼女がこの手紙を書いた誰かとグルになって俺を呼びだしたんだろうか? ・・・いや、それこそあるハズがない! 彼女のオレに対する態度に敵意は感じられなかった(少し怯えて いたけど・・・)。それに、もしそうならわざわざ手紙を渡さなくたって・・・。 オレが手紙を読む時間を稼ぐために演技していたのか? ・・・それは、考えたくないな・・・。僕に対しての、ビクビクしているんだけど、勇気を出して積極的になろうとしているような感じが・・・その、なんて言うのかな・・・

 そうだ、「カワイイ」と思ったんだ。正直そんな彼女を見ていて、僕もドキドキしてた。

 そんなの・・・演技なんて出来るわけないよ・・・。それに、わざわざこんなカワイイ柄の封筒と便箋まで用意して・・・。

 いつの間にか、僕の歩みは止まっていた。それに気づくまで、どれぐらいの時間がかかっていたんだろう。僕は、もう一度封筒から便箋を出してみた。1枚目には「お前の一番大事な人は預かった」、2枚目には「放課後屋上で待つ」 と、殴り書きのような大きく見栄えの悪い字で便箋いっぱいに書かれている。 随分と無駄遣いだ。今見返すと不自然なほどに。きっとそう思うのは、今僕の頭の中を埋め尽くそうとしている仮説のせいだろう。 そして、よく見るとそこには、一面に柄が印刷されていて、罫線が引かれてい ない。

 ある種の感情、それも1つじゃない。いくつかの種類の激しい感情の高ぶりで、便箋を持つ手が震える。唾を飲み込むのが辛い。やっとの事で喉を鳴らしたとき、何となく決心がついたような気がした。僕は、息を止めると、そぉっ と、便箋を裏返してみた。

 仮説は、確信になった。

 その一連の情景が、次々に目に浮かんでは消える。彼女の言動の意味。僕に分からないところにあった本当の意味。

 僕の足は、いつの間にかまた屋上へと向かっていた。いや、体全体が、僕の支配を受け付けなくなって、そして思考も。魂も。僕全体が屋上で待っている何かに向かって突き進んでいた。僕を屋上に呼び出したのが誰か、まだ分からない。見当もつかない。でもそんなことはどうでもいい。ここまでやっておいて、本人が屋上で待ってないなんて事は考えられない。信じない。・・・許さない!

 僕はきっと、冷静な判断など出来なくなっていたに違いない。少し息が上がっていることに気付いたときには、屋上に出るドアが見えるところまで来ていた。ドアノブの横に上から下まで伸びた細い光が見えている。ドアが少し開いているのだ。僕はスピードを緩めず、ドアに体当たりするかのように突っ込んだ。ドアがはねるように開く。

 ・・・視界には誰の姿も映らない!!

壱:しまった! 罠かっ!? だとすれば、だまし討ちを避けるには・・・!

 僕は本能の感じるままに、危機を回避する方法を瞬時に二つまで絞り込んだ! このまま飛び出すか、後ろに飛んで階段の下まで落ちるか! どうす る!?

弐:ま・・・まさか、これだけの非道をはたらいておきながら、自分の正体も明かさずにすっぽかしたのか!?

 僕ははらわたが煮えくり返るほどの怒りと悔しさで我を忘れた。

参:オレは鳥だ!!!!