「守れ! 守護GETTEN!」
〜こんなもん書き捨てに決まってんだろ〜
(※「守って! 守護月天」まるで関係がないとかそういうこと以前にわけがわかりません)
「守りたいもの、なんですか」(ダイ・ガードのサブタイより)
よぉ! 俺だよ俺!
「桜野みねね」だよぉーっ!!!
そんなわけで俺の書いてる漫画、「守って! 守護GETTEN」も大人気御礼みんなありがとーっ! だが、作品に人気が出れば出るほど、困ったことに悪いファンもたくさんつくんだな。
そこで今日は俺様が直々に、そのダニのような奴等を引き裂いてやろうってわけよ! ケヒャヒャヒャーッ! 今から燃えてきたぜぇーっ!
そんなわけで有明にやってきたぜ! イベント会場ってヤツだな……。
オイオイ! いるわいるわ! 俺のGETTEN様を汚す奴等のオンパレードだぜ! おい! そこ! そこのいかにもオタ系の売り子!
「はい? なんですか?」
なんですかじゃねーだろ。お前のサークルのその本! なんの本だか言ってみろ!
「ああ、新刊ですか? これは凄いですよー。三人がかりで体育倉庫で……」
攻・撃!!!
「ぎゃあーっ! お、俺の腕が! 腕がぁーっ!」
「ああっ! なんてことするんだ貴様! 同人描きにとって利き腕はまさに命! それを……」
うるせぇっ! 同人描きとか言ってただエロ漫画描いてるだけじゃねえか! しかも俺の作ったキャラで! それもすでに守護GETTENであろうとなかろうとどうでもいいようなシチュエーションで! 襲わせればいいってもんじゃねえだろうが! お前等なんかファンじゃねえ! むしろダニだ! 死ね! 死んで俺に詫びろ! あと純粋なファンに!
「じゅ、純粋なファンったって、ファンだって買ってくし」
「そうそう。むしろファンこそ買ってくし」
「原作では果たし得ないファンの影の欲求を……」
「だいたい、需要があるから供給が……」
死ねぇっ!
『ぎゃふん!』
ステレオでウザいことを言うなぁっ! 需要があるからって麻薬作って売ってりゃ犯罪なんだよ! しかも理論武装しやがっていけすかねえ。胸張って好きでエロ漫画描いてるならまだしも、二次創作で金儲けようとする自分等を正当化するんじゃねえ!
「な、なんだよこいつ……」
「良くいる、正義感ぶってる勘違い系のヤツじゃないのか?」
「こういう事言ってるヤツに限ってエロ同人誌二百冊くらい持ってたりするんだぜ」
「それどころか同人屋で売り買いしてたりな」
「なあ、君だってうちの本が欲しいんだろ? 正直になりなよ」
「そうだよ。こっちの新刊も凄いよ。買い物帰りに暴走族の群れに襲われた……」
もはや俺の作品である必然性ZEROだろうそれ! 『北斗の拳』とどこが違うんだよ! 世紀末救世主伝説と! せめて主人公とか使ってやってくれよ!
「そういうのは純愛系の人に任せるよ……」
「俺等、話作るの下手だし……」
うわ……。急に沈むなよ。で、でも絵は上手いからな。こりゃいいエロ本だぁ。うん。
「アニメ顔ならね……」
「俺等、某専門学校二年目だから……」
「でも、右向きが描けないんだよな……」
「背景も好きで白いんじゃないし……」
イタい! イタたたたたた! イタい!
ま、マズい。同情しつつある。本来の攻撃性を取り戻さねえと!
「まあ、実際にはこんな可愛い女の子が突然やってくるなんていう都合のいい話があるわけないんだけれどね……」
「それを言ったら鬼娘も女神様も突然やってくるわけはないしなぁ……」
「あーあ、俺も一回でいいから急に女子寮の管理人にでもならないかなぁ……」
「おっ、いいねぇ、それ。俺も東大受験しようかなぁ……」
……。
彼等は放っておいてあげよう。うん。人に害を為す類の生き物ではなさそうだ。
……自分の人生はズタズタにしているようだがな。
ところで他人に害を為す生き物はっけーん! 死ねぇっ!
「ぎゃあっ! なにすんのよアンタ!」
ウルせぇっ! もはやなんというかなんとも言い様のない、ともかく、全国のそういうことしてるみなさんにドツキ倒されることを覚悟で一応聞いてみるが貴様それコスプレ?
「そうよ。守護GETTENの……」
それ以上喋るなぁっ!
「げほぁっ!」
伊集院光は言いました。『ブサイクさんは、コスプレをしてはいけません』。俺も同感。昔から同感。「バーチャファイターリラックス」の『俺の夢を壊すコスプレネーちゃんがいる』で涙したあの青春を……。
「ハイハイ。ブツブツ言ってると邪魔だからどいてよね」
ぐわ。まだ写真撮影続けますか。
「そうよ。ホームページに載せなくちゃならないんだから」
それを!? それを世界発信!? 便利なツールで僕の家にも情報一発爆弾到着!? 正気かおい貴様等。つーか写真撮ってるお前等! 正気か!
「あんたこそさっきから何よ、ぴろんちゃんに逆らうと親衛隊が黙っちゃいないわよー」
ぴろんちゃん? なにそれ。
「あたしのレイヤーネーム。ファンクラブもあるんだから」
ファンクラブも
ファンクラブ
あるんだから
だから
から
……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
一文字流斬岩剣、この世に切れぬ物は無し……。
「ちょ、ちょっと君、マズいよ、コロシはまずいって!」
離してくだされースタッフ殿ー。武士の情けー。殿中でゴザール。殿中でゴザール。殿中のお店に行くでゴザール……。
「ハイハイ。とにかくちょっと、向こうに行こうねー」
……はっ。
手慣れたスタッフの方にいい感じで隔離していただいたおかげで正気に戻ったぜ。ふう。
何故ならば俺の名前は「桜野みねね」! 命ある限り征く!
いまいちテンションが落ち着かないが、これも医務室で貰った不思議なクスリのおかげだろう。このノリで突っ走るぜ!
と、言ってるうちに悪・即・斬発見! おいそこ!
「ハーイ。GETTEN下敷きにテレカはいかがー」
だからオイ! それはあんまりだろう。それはあんまりだろう! 明らかに著作権の侵害だろうが!
「はぁ? だって、オリジナルですよー。別に本誌のカットをコピーしたりしてませんし」
だから、絵ぇ自体はオリジナルでも、キャラクターが違うだろうが!
「いいじゃないですか同人活動程度に目くじら立てなくても」
だったら、その一枚三千円三枚セットから販売っていうのをなんとかしろよ!
「でも買う人はいるわけですから」
また需要と供給の理論かい!
もういい! とにかくこれは法的にダメなんだから、お巡りさんにキッチリ叱って貰うからな! 電話してやる。えーと、警視庁で著作権やってそうなところは……。良し。
prrrr。prrrr。ガチャ。
あ、もしもし?
『……はい。こちら、警視庁です。……只今留守にしております。発信音の後で、御名前と、ご用件を……』
税金泥棒ーっ! いるのはわかってんだぞ! つーか、いないはずがあるか! そんな警察ねえっ!
『……チッ(舌打ちの音)。はい警視庁かもね?』
何逆ギレしてんだよ。あのね、著作権法違反をしてるヤツがいるんスよ。言ってもわかんないから警察の方からビシッとね。
『あ、ちょっと待って。……部長、それロンですー! はいチートイドラドラ……裏ドラ、ドラと! イヤー、また日本銀行発行特製図書券頂いちゃって、申し訳ありませんネー……』
オイ! 今まさに不祥事をしているだろう! オイ!
『あん? んなわけねーだろ? あとねー、警察は民事不介入って事になってるんですわ。だからまあ、とりあえずパトロールの時に気をつけるようにいっときますんで、あとは相手が何かやってきたら、その時にまたお電話ください』
なんだその、ストーカーに今まさにつきまとわれて切迫している女性を切り捨てるような対応は! オイ!
『そ・う・か・も・ね! じゃ』
ツー、ツー、ツー……。
……。
「まあ、同人誌描いてる人も著作権侵害ですからねえ。アレ全部摘発してからうちのところ来てくださいよ」
アレはだって、一応自分等で話も考えて本作ってるだろうが。君らのはこれ、完全にグッズ屋さんだろうが……。
「あのねえ。グッズ一つ作るのにどれくらい労力がかかると思ってるんですか? それなりに実力のある人にお願いして、素材に手を抜かないで、コレクション用としてでなく使って使えるグッズを作ってたら、このくらいの値段は頂かないとやってられないんですよ? そういう内情を全然知らないで、義憤っていうんですか? なんか、勝手な正義感で攻撃してたら、それは貴方は気分いいでしょうけれど、結局状況は変わりませんからね」
……。
いや、でも。
俺、「桜野みねね」だし。原作者として、やっぱ……。
「桜野みねね先生は、女性です。僕、会ったこともありますよ。……つーか。君、誰?」
……。
そう、でしたね。
迷惑かけてすいませんでした。
……あの、じゃあ、この、下敷き……、ください。
『純粋なファン』でいたかったよ。
どんなことにも意味があるなんて認めたくなかった。
自分以外のルールなんて、理解したくなかったんだ。
でも……。
『感想ありがとうございました。裏の四コマにも相棒と二人で大笑いさせていただきました。正直、ブースでいきなり殴られたことを思い出してどんな手紙かとドキドキしましたが、予想以上に丁寧な内容でビックリしました(笑)。って、これはちょっと失礼でしたか。でもまあ、お互い様ということで(笑)……』
『ぴろんでーす♪ 今回のTOPは、先週のイベントの写真だじょー。変なヤツに蹴り食らったりして、危ない輩に狙われてるんじゃないかとみんなを心配させちゃったみたいだけど、その変なヤツからきちんと詫び状が届きましたよ(笑)。えっと、本人許諾の上で転載しますね……』
『……では、今後も当サークルをよろしくお願いいたします……。
追信:どうも。下敷きの使い心地はどうでしょう。まあ、学校には持っていかない方が無難です(笑)。ところで、イベントの時に置いていって頂いた御本、拝見しました。そこでどうでしょう、下敷きの原画をやってみる気はありませんか? あなたの絵はカラー映えするかは解りませんが独特の雰囲気があって……』
どうしよう。
自分以外の価値観を、当たり前だけれど持っている人達と、距離が近くなっていく。解る面もあることが、解ってしまった。
これは堕落なのだろうか。僕も「悪いファン」の仲間入りをしつつある、ということなのか。
そもそも、ファン活動とはなんなのだろう。作品を好きになるというのはどういうことなんだろう。どこまでが「良い」二次創作でどこからなら「悪い」のか。
答はまだ掴めない。見えもしない。でも、なにかを囲む輪の中に、僕は入っていく。
「弧」でなく、「輪」であることが大切なのではないかと、最近は思っている。
「人間に在り」(「人間」の語源)
後書き
なにを書きたかったのか良く見えないうちに、とにかく書き進めてみたらこうなりました。本当に書きたかったのは嫌警察の対応だけだったような気がする。その証拠にあそこだけオチつけてないし。
まあ、電波です。