第参話

「会議よ、踊れ」 −Dance Dance Dance−

「なるほど。敵軍の襲撃か」

 やや深刻そうな面もちでうなずいたのはご存じイズモ国王ミカヅキ。

 北の大国ファンダリア帝国の尖兵と思われる人物に忍頭のシオン(二十云歳。独身)が襲撃を受けるという事件があり、イズモ国では幹部総出で軍議が行われていた。

「しかしな、シオン。拙者には今もっと重大な問題があるのだ」

「敵襲よりも、ですか!?」

「ウム」

「わあ。いったいそれはなんなんですかミカヅキ様! 他の有象無象はともかくこのホウライにだけは教えてくださいよ! そして僕の虚栄心を満たしてくださいよ! 僕が他のヤツよりもミカヅキ様に信頼されていて人間的に価値があるということを確信させてくださいよ! 早く!」

「……あんたねー」

 最近とみに電波受信率の高い小姓のホウライを横目で睨むシオン。ミカヅキは苦笑しながらホウライを招き寄せ、耳元になにやら囁いた。

「実はな。(ごにょごにょごにょ……)」

「なるほど……。それは僕の口からはちょっと言えませんね。シオンさんに聞いた方がいいと思います」

「そうか。でもシオンは別の話がしたいらしいしなー。残念だなー。この話はこれまでだ。あーあ。拙者死ぬかも。拙者が死んだら後は頼むな。ホウライ」

「お任せ下さい。「ミカヅキ様、まさか死んでしまうなんて……。ああ、あのときシオンさんさえ……ハッ! いけない! 僕はなにを言おうとしていたんだ!? 人にはそれぞれ生き方がある。たとえシオンさんがミカヅキ様が死ぬ前にその死の直接的な原因になったであろうと僕は確信しているあんなことをしたからって、誰もシオンさんを非難することなんかできようはずもないんだ! それを忘れて恨み言を言おうなんて、僕はなんて心の狭いヤツなんだ! くう。僕はこんな自分を許せそうにない! 辻斬りにでも行くか!? 固羅ぁっ!!!」といったかんじで、いかにもシオンさんをかばっているように見えながら実は社会的に断罪したくてたまらない態度見え見えのコメントを葬儀の席で言い放って大暴れ。シオンさんの立場を大いに悪くしてこの国に居づらくしてやりますよ!」

「長ゼリフ頼もしいな」

「……わかりましたききますききたいですからきかせてください」

 目を逸らしながらの棒読み懇願に気をよくしてミカヅキは膝を進めた。

「くるしゅうないちこう寄れ。……実は悩みがある」

 一息置いて、

「「シャーマンキング」の阿弥陀丸って拙者に似過ぎでない?」

「散らすぞーっっっ!!!」

 1R5秒 KO

 決まり手:問答無用の振り抜きフック

     ☆     ☆     ☆

「だってキャラ原案がパクリだったらと思うと拙者不安で不安で……」

 ふてくされて起きあがろうとしないミカヅキにかみつくような口調でシオン。

「順番を考えて下さい! 「シャーマンキング」より「ドラゴンフォース」の方が先でしょうが! パクッてるとしたらあっちの方が……」

「シッ! シオンさん、そんなこと言ってるとまた「仏ゾーン」が打ち切られてしまいますよ!」

「えっ? 仏ゾーンって打ち切られたの? 題名が変わったんじゃなくて? だって同じキャラが出てるじゃない」

「それは違うだろう、シオン。仏ゾーンはワンピースになったんだろ? 絵がすごい似てるぞ」

「二人ともなにを言ってるんですか……」

 軽蔑も明らかに半眼でホウライが諭す。

「仏ゾーンの最後で天竺へお経を取りに旅立ったでしょう? その航海の様子がワンピースです。日本での話はここで一度打ち切られてます。でも、根強い馬頭観音ファンの声を受けてシャーマンキングとして復活。馬頭観音はアパッチ族のシルバと名を変えて再登場。ファン感涙ひかるの碁大人気。いくら文化祭だからって将棋柄の浴衣で表を歩くのはちょっとね。こういう次第です」

「そうであったか」

「知らなかった。私てっきり、仏ゾーンがJOJOみたいに第二部になったのかと思ってた」

 騙される二人。

「まあ、これに懲りたら少しは真面目にジャンプを読むことですね。新連載のタイトル言えますか?」

「あ、あれ? なんか、古代日本が舞台のヤツだったよね? えっとー……、ダメだ。タイトル出てこない」

「「卑弥呼伝」じゃなかったのか?」

「「それは違います」」

「……まあ、お二人とももっと精進して下さい。ちなみに、あの漫画の作者は?」

「新人さんだったよね? えっとー……」

「しんがぎん?」

「ミカヅキ正解」

「ええっ!? それは別の人じゃ……」

 騒ぐシオンを制してホウライは言う。

「それよりシオンさん、敵襲報告はよろしいんですか?」

「そ、そうです! とにかく、城下町まで刺客が来ているんですから、もっと危機感を持って下さい!」

「……じゃあ、城下まで敵の侵入を許した警備責任者を処罰しよう。誰?」

「うっ。……私、です」

「あーよかったぼくじゃなくて。こんな重大ミスをやったらよっぽど凄いそりゃ凄い、「店員でもないのにコミック虎の穴にコスプレして出かけて中古のエロ同人誌を二十冊買って「ジオン公国大使館で領収書下さい」と無理を言ってごねたあげくにカラオケで林原を「私は上手いのよ」的な自己陶酔丸出しであたかもいい気になってるオタク女(二十云歳独身)のように歌って帰ってくる」程度は決まったようなものだけれど一応念のため聞くとミカヅキ様、どんな罰をお与えになるんですか?」

 ひとの不幸が僕の幸福と普段から言ってはばからないH君が大喜びの横で、血の気を引かせながら黙るシオン。この主従はノリで何を言い出すかわからない。

「そうだな……。良し。ネット上でこのページの宣伝活動をしろ。知名度アップのためにな」

「ええーっ!? それだけですかぁー?」

「ほ、ホントにそれだけでいいんですか?」

 「コスプレ」「路上で」「アキハバラ」などと絶対聞きたくないキーワードをこぼし続けるホウライを間接に体重をかけながら組み伏せ、明らかにホッとした表情のシオン。

「ああ。ただし、いくつか条件がある」

 邪悪な笑みを浮かべてミカヅキは続ける。

「まずドラゴンフォースのページを作ってる人にメールを書け。文面はそうだな。

「はじめまして。僕は今度ドラゴンフォースのホームページを作ろうと思っています。ちょっと1のイズモ国に片寄っていますが、攻略、キャラ評、CG集などを中心とした真面目なファンページです。是非相互リンクして下さい」

こんなところか」

「それって……」

 ウソメールじゃないですかと、再度あおざめるシオン。

「そして返事に関わりなくその人のページの掲示板にこう書き込め。

「こんにちは。新しくドラゴンフォースのページをはじめたよー。女の子キャラ中心のCGページです。ちょっとHなCGもあるから、十八歳以下の人は来ちゃダメだよ。来た人は好きなキャラアンケートにも参加してね。そうそう。夜はチャットが大盛況。わたしも毎晩テレホタイムに現れるから、気の合う人はお話しようね。あーあ。彼氏欲しいなあ……」」

 聞きながらも加速度的にうつろな表情になっていくシオン。対してホウライは間接を軋ませながらも絶好調だ。

「さすがミカヅキ様! でもさらに言わせていただくならば、ジオシティーにアドレスを取ってほんとにそんなページを作るべきです! コンテンツなんかてきとーでいいんでスよ! 「しおんのひみつにっき」と掲示板さえ置いておけば! ジオシティーのあの改行しないヤツでオッケー! それで、トップページに「とりあえずオフ会やりたいです。でもしおんちょっと広末に似てるって言われるけれど趣味がオタクだし、誰も来てくれなかったらどうしよう」とでも書いておきましょう! そんでもって当日待ち合わせに来てるヤツがもし居たら三年大笑い! その様子をビデオに収めて大笑い! ホメパゲで発表してさらに大笑い! グォフォオーオオオオオオオオオオオン!(笑い声)」

「おお。虚構から現実へアプローチした上で虚構に戻すわけだな。さすがホウライ! ああ、でもそういうきちんと大がかりな計画にするには文面がいかにもネッカマみたいでダメだな。良しシオン。リアリティーを出すために企画書を持ち帰って女性の感性でリライトだ!」

「「女性の感性で」! いけませんよミカヅキ様、その発言はセクハラデスよー?」

「おおっ。そうであったか。これは失敗!」

「「グォフォオーオオオオオオオオオオオン!(笑い声)」」

「……」

 御機嫌に笑い続ける二人。対称的に無言のシオンが部屋の隅の天井から垂れ下がっていた紐を引くと、上からわかりやすく導火線のついた黒くて丸くて大きな火薬玉が落ちてきた。止まる笑い。

「……あ、爆発オチ?」

 素のミカヅキの発言を最後に、イズモ城の天守は爆散した。

 合掌。


次回予告

 そう言えばジュウベイとかバクラとかコウリンとかどうしたんだろう。

 あと他の国。

 ……ネットで人気の人は出すの後の方にしようね。恐いから。

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