第壱話
「ミカヅキ、起つ」 -Japanese Offence-
「我らー♪ ドラゴンフォースー♪ ごった煮ライトファンタジー♪ シミュレーションー♪」
「考証なしー♪ 登場武将はー♪ 同じ顔がー♪ いっぱーい♪」
(語り)
―ばっかおまえ、光栄のゲームじゃあるまいし、そんなみんな違う顔にするほどデータさけるかよ。ザコ武将なんかみんな同じ顔でいいんだって。能力値も似たよーなもんでさ。武将技だけちょっといじっとけばわかんねーよそんなの―
「「かーって♪ くーるぞーと♪ いーさましくー♪」」
「不穏な歌を歌うなー! あと、現場の声を捏造しなーい!!」
小気味よいハリセンの音が響き、気持ちよくイヤな歌を歌っていた二人の男は頭を押さえてうずくまった。この二人こそ、イズモ国君主ミカヅキとその弟子、ホウライである。
「痛いではないか、シオン。今後とも精進めされい」
「暴力はいけませんよ。先に言っておくが、俺は男だぞ」
「もうバグってるー(ガビーン)!!」
ハリセンを持ち、今後の展開を考え、めまいに襲われているこの女性は、呼ばれたとおりのシオンという名で、ミカヅキ配下の紅一点、いわゆるくのいちであるが、ヴィジュアル的には素顔を覆面でかくしていたり、忍者っぽくて好感が持てる。
このゲーム、キャラ原画は割といい。雰囲気出てて。(※ムービー以外)
「ああもう。はじまったばっかなのにこんな話題ばっかでー」
だーと涙を流すシオン。いいからハリセンしまえよ、と無言で訴える二人。
「どうしたシオン。イヤなことがあったのか?」
「更年期はつらいですね」
「……もういいですから、話、進めましょう」
「うむ。ではホウライ。状況を説明せよ」
「はい。よーするに、「スペクトラルフォース」が出たじゃないですか」
「うむ。出たな」
「〆葉はコミゲを読んでヒロ様のFANになったんですが、あのゲームはプレステのみだからサターンしか持ってないヤツには遊べないんですよ。で、くやしいからとにかくキャラゲーのSLGをやりたいらしくって、今さらながら我等のゲームを引っぱり出して遊んでるんです」
「なるほど。これで全て合点がいった。……では、拙者は「ときメモ」やってるから……」
「なんでーっ?! ファンダリアのゴルダークが攻めて来るんですよ? 世界を征服するために! うちの国はファンダリアのすぐ南なんですから、早く手を打たないと侵略されちゃうんですってばー!」
必死のシオンに対し、二人の反応は冷淡であった。
「うわ。背景設定は予習済みか」
「シオンさん、ゲーム買ったら取り説全部読んでから始めるタイプですね」
「説明書の誤字とかみつけて暗い笑いを浮かべてるんだろうな」
「スパロボFの取り説に入ってた紙なんかもちゃんと読んでるんでしょうね」
「でもって、「データを作らずにオプションに行ったけど何もなかったわよー」とか、そういういらんことを友達に自慢げに語るんだな」
「バンプレストに電話してるかもしれませんね」
「いやー。さすがに」
「遊び方が違いますねえ」
「「マ・ニ・ア・は」」
クスクスクスクス……
「ひとの人格をおとしめるなー!!」
半泣きで繰り出された手裏剣が頭に刺さっても、二人はシオンを指さしながら笑い続けた。
三十分ぐらい後。
押入の隅で膝を抱えてえぐえぐと泣き続け、「もうやめる」と言って聞かないシオンをなだめたりすかしたりして、ミカヅキはようやく部屋の真ん中までつれてきた。
「……ひっく。ほんとに。……っく。テンペストのスターター。……えぐっ。買ってくれるんですか?」
「買う買う。ブースターも箱で買ってやる。欲しがってた拙者の「ウルザの塔」もやろう」
「僕も、「沼」百枚あげますよ。あとネロ魔身」
「……いや、それはあんまり……」
「まあともかく、ずいぶん前に発売されたゲームのキャラである我等が、ゴミのようなページの隅の隅とはいえ(黙れ)活躍の機会を得たのは素晴らしいことだ。今後とも精進し、サターンに名作「ドラゴンフォース」あり、と知らしめようではないか」
「はいっ。ミカヅキ様。……私たちの活躍を読んでもう一回「ドラゴンフォース」を遊んでみる人が出たりしたら嬉しいですよね。「2」発売の呼び水になっちゃったりして。えへ」
「………………」
「師匠。はっきりと「無理だ」と言ってあげた方が親切ですよ」
「まあ待てホウライ。誰しも心に夢はある。それを踏みにじる権利は誰にもない」
「……私が未熟でした、師匠。たとえいい年した、もういき遅れの近い根暗でゲーム趣味のオタクな女性が、どちらかというと妄想や幻想に近いような、「その年でそれを言っちゃあまずいだろう」と聞いてる方が冷や汗を流すような夢を語ったとしても、黙ってそれを聞いてやるのが人として……」
「ばかー! みんな死ねー!!」
「シオン! どこへ行く? シオン!!」
(勝った……)
うろたえるミカヅキの横で、ホウライは薄笑いを浮かべて勝利の余韻に浸っていた。
次回予告
予告の前に。
これを書いた時点ではドラゴンフォース2の話はどこにも出ていませんでした。そういう意味ではかなり昔の話です。
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