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「よかったん?ロマーノ…」
「あーもうしつこい!」
怒鳴った。だってこれで何度目だ!
「俺が独立しないって決めたんだよ文句あるか!」

後悔、しないとは言い切れないけど!俺が自分で決めたことだ。覚悟も、一応だけどある。
…弟にごめんって言うのは、心苦しかったけど、それでも、言ったんだから。
それをうだうだとええの?ほんまに?と繰り返されるのに心底腹が立った。

「それとも何か!俺がいないほうがよかったか!?」
「そんなことない!うれしいで?ロマーノが残ってくれて、ほんまに!…けど、」

「けど!?」
まだ言うか、と声を荒げると、まっすぐと真剣な瞳が返ってきて、思わずう、と息を詰めた。

「ロマーノのこと家族みたいに好きやから、幸せになってほしいねん。」
ロマーノ、それで幸せになれるねんな?

…家族みたいに、ってついてなかったら素直に喜べるんだけどな…っ!
まあ、真剣に俺のこと見てくれてるんだっていうのは痛いほど、伝わってきたから。それは嬉しいんだけど。家族か、家族…。

「…なれるじゃなくてなるんだよ。俺が自分で決めたんだから、どうにかする。」
頭の中をぐるぐるしていた思いは追い出して、言い返す。そうすれば、そっか、と声。柔らかい、笑顔。
あ。なん、だろう、今、いい、雰囲気?
言って、みる、か?

「そ、それに!…一緒にいたいん、だよ、俺もおまえのこと、好きだから…」
恋愛感情で、と付け足したそれはあまりに小さく、そっか!と大声出したスペインにかき消されて。
「あれ、ロマーノ最後なんて言うたん?」
「…なんでもねえよ…」
深く深くため息。また、伝わらなかった。

この際、家族でもいいんじゃないかとこっそり思って。

じゃあ畑見てくるわ、と部屋を出て行くスペインを見送って、ばったりソファに倒れこんで、目の前を腕で、覆った。


瞬間、周りの音がすべて消えて。

扉が閉まる音が聞こえた気が、した。