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ひょいとフライパンを振ると、ロマーノ終わったで、と隣から声。
「水切って入れろ」
「ほーい。」
言ったとおりにしているスペインを見ながら、結局、あんまり変わんなかったな、と思った。
違うのは、この場所が『俺の』家だってことくらいだろう。

スペインがうちに遊びに来るのは、今日で二回目。
俺がスペインの家に行ったのは四回くらい。
毎日一緒に、はなくなったけど週2か3で顔合わせてる。
当然のごとく、関係にも変化なし!一番がんばったのは、あの独立前夜の告白未遂、という体たらく!あーあ…

…だって、怖い。
でもまあこいつのことだ、ストレートに告白したって聞いてやいないんだろうけど!ああもう俺何でこいつ好きなんだろ…

「焦げるで」
「焦がすか」
急に声をかけられて、でも平静を装って返し、止まっていた手を動かす。
隣でふつうに見てるスペイン。…近い距離。ほかのやつだったらこの距離は嫌だけれど、こいつだと、嫌じゃない。
隣にいると安心、する。だから、隣にいるのはこいつがいい。そういうことだ。きっと。
「皿用意しろ」
「ん。」
火を止め、差し出された皿に炒めものをよそう。

「あ。そういえばロマーノ、」
「ん?」
「あの夜さ、なんか言おうとしてたのに止めたけど、あれ何言おうとしたん?」

………ああもう俺何でこいつ好きなんだろ…っ!

思わず頭を押さえてしゃがみこんだら、ロマーノ!?とびっくりしたみたいな声。知るかもう。どないしたん、じゃねえよおまえのせいだよ!
ああもうどうしてこいつはこんなに、空気読んでくれないんだろう!もー疲れる…
どう返せって言うんだ。おまえが好きだと言おうと思った、なんて…い、…えないやっぱり…!でも、今、言わなかったら、また。なにも変わらず、に。
頼むから、もうほんの少しでいいから時間がほしい。ああもういきなり追い込むなよスペインのやろー!
いきなりのことに混乱していると、ぐい、と腕を引かれた。
「具合でも悪いん…」
見上げると、近すぎるくらいに、オリーブ。
かあ、と顔が熱くなって。
「…っ!近いんだよこのやろー!」
腕をスペインにつかまれたままで離れられずにそう怒鳴ってにらみつけたら、ぽかんとした顔。
「…スペイン?」
呼ぶと、はっとしたのか、あ、うん、ごめん、と言って。
…何だ…?
立ち上がってもなぜか、口元を押さえて視線をうろつかせている彼に、怪訝な視線を向ける。
「…おまえの方が変なんじゃねえの?」
「いや、別に、」
「手。」
つかんだままなんだけど。と言うと、え、わ、ごめん!と痛いくらいに掴んでいた手をぱっと離された
「…どうしたんだよ、ほんとに…」
「や、あの、何でもないで!」

その後、飯食べてるときもなぜかスペインはしどろもどろで。
ちゃんと家にたどり着けるんだろうかと心配しながら帰っていく見送って。
ズボンのポケットにつっこんだ手に、何かあたった。
「…?あ。」
取り出してみるとそれは。


『鍵のかけら』を手に入れた!


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