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はっきり言って。
俺は不器用だ。認める。スペインや弟の方がずっと手先は器用だし、その上、集中力が長く続かない。認める。自分でよく、知ってる。俺は不器用、だ。

だから。

がっしゃん。と後ろで音がしたとき、いつかはやるって思ってたんだよなあ、と深くため息をついてから、おそるおそる振り返った。
「うっわ……。」
飾ってあったのは、高価そうな(たぶん貰い物で売れなかったたぐいの)皿。それがまあ見事に粉々になっていて。
まあ修復とか復元とか無理だよなこれ、と思いながらしゃがみこんで、気をつけながら手で触れて、欠片と欠片とか合わせてみたって、無理なものは無理、で。

「……どーしよー…。」
掃除の時は細心の注意を払っていたのだ。不器用だから。手をすべらせて、落としたりしないように。さっきだって、これを綺麗にするのに、もう心臓ばくばく言わせながら、拭いて。で、たぶん元に戻したときに、ほっとして、滑りやすい角度で置いてしまったんだろうけれど。
…小さいころは、力もなかったから、これの比じゃないくらい、割ったり落としたりしてた。…問題はこれが、初だってこと!
ああ、スペインに怒られる。うまいことやってきたのに。そう思うとため息しか出てこなくて。

がちゃん、と少し遠いドアが開く音がした。はっと顔を上げると。ふんふーん、なんて鼻歌歌ってるスペインの姿!
思わず立ち上がると、後ろの棚ががたんと音を立てて。
その目が、まっすぐ、こっちを見る!
くるり、と丸くなるその目、に。ああ、どうしよう!?


謝る
逃げる