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「どないしたん、これ!?」
「掃除してる途中に、落として…ごめん!」

驚いた声を上げてやってきたスペインに、素直に頭を下げる。だって、悪いのは俺だ。怒られるのは怖いけど、仕方ない。
ぎゅ、と目を閉じると、しばらくした後で、顔上げて、と言われた。
おそるおそる顔を上げる。真剣な表情の、スペイン。

「ケガは?」
「ない。」
「反省は?」
「した。」
「…やったら、ええわ。」
真剣な表情が、緩む。やってもうたことはしゃーない。反省もした。やったら、俺に言うことはないから。そう言って、頭を撫でられる。

「あ。これだけ。今度から、危ないかなーと思ったら、俺呼んでな?怪我とかしたら危ないし、一人で無理でも、二人でやったらできるかもしれへんやろ?」
「…怒らない、のか。」
「ちゃんと掃除しようって思ってくれたんやろ?やったら、怒る必要なんかないやろ。」
親分は寛大やねんで、と笑って、あとこれ、秘密やで、とか言いながら、耳元に口を寄せてくる。

「ここだけの話。…この趣味悪い皿、貰いもんやねんけど、売っても高くならへんやろうしどうしよーと思ってたとこやねん。」
ロマーノが景気よくやってくれたから助かったわ〜
そんな風に、こっそり、と言うから。思わず噴きだして。
「悪いヤツ!」
「話聞いたからには、ロマーノも共犯やで?」
にこにこ笑って二人だけの秘密、なんて言われて、ちょっとどきどきして。楽しくて。

「じゃあ共犯者さん。一緒に後片付けしよかー。んー…軍手が要りそうやなあ。取ってくるわ。素手で触ったらあかんで?」
「わかった。」
もう触ってしまったけど、まあ怪我もしてないし。
歩いていくスペインを見送って、二人だけの秘密、と繰り返す。
なんだか少し、距離が近くなった気がして、うれしかった。

手をポケットにつっこむと、金属の感触がした。あれ。これ。そう思った瞬間に、スペインの呼ぶ声が聞こえて、確認は後にして走り出す。

『鍵のかけら』を手に入れた!


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