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はっと目が覚めて、瞬いた。ゆっくり体を起こす。
…周りを見渡すけれど一人、だ。
よく知る自分の家のはず。でもどこか、知らない場所のようでもあって。
「…何、でしょう…」
記憶を辿ろうとすると、届く前にするすると逃げられて曖昧にしか思い出せなくなっていく。この感覚、は。

「……夢?」
思わず呟いて瞬く。夢、を見ていた、ようだ。…どんな夢?
布団にもう一度体を沈めて考えるけれど。

霞がかかったような記憶しか残っていない。詳しく思い出そうとすると逃げられる。何だった?…思い出せない。
「…まあ、夢なんてそんなものですよね…。」
呟いて起きあがる。とりあえず顔を洗ってご飯を食べて、ぽちくんの散歩して。
起きあがって障子を開く。まぶしい朝の光。
「…彼のところは、まだ夜、ですかね…」
呟いて、思い浮かべるのはただ一人の人。…イギリス、さん。私が思いを寄せている、人。言う勇気は、ないのだけれど。
ため息。…遠くから見つめていることくらいしかできないけれど、甘くて苦しいこの気持ちを、大事にしたい。
諦めるのはいつでもできるから、まだもう少し、だけ。

「…電話、してみましょうか。」
少し勇気のいることを思って、よし、今日の目標です、と心に決めた。


『小さな一歩』End?