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きん、と金属のぶつかる、音。

手がじんじんと痺れている。刀は、私の手から遠く離れ、落ちて。

「…まだまだだな。」
少し残念そうな、声。耳に届いてやっと、あ。負けたんだ、と理解が追いついた。

踏み込むことなんか、できなかった、できるわけがなかった。
迷った一瞬に、叩き込まれた剣は、私の手から刀を弾き飛ばして。
終わった、とほっとする一方で、残念にも思う。
…もっと本気で、挑める勇気が、あったら。

剣を収める彼を見て、小さく苦笑。あったら、彼に勝てた?…いや。どちらにしろそれは難しいだろう。彼は強い人だから。

「お強いですね…本当に。」
そう言えば、まあ、一応一人でやってきたからな、と返事。
言いながら彼は、私から遠く離れたところに落ちた刀を拾ってきてくれた。

すみません、と言いながら、落としていた鞘に、収め、彼に返す。
そうすると、彼は小さく笑った。おかしそうに。
「何ですか?」
「いや?隙を突くなら今なのに、それもしないんだな、と思ってな。」
中国が言ってたから寝首かかれるかと思ってたのにそれもないし。って、ありえないですよ!
そう訴えたら、知ってる、と優しいまなざし。
「そんなことをする奴じゃないっていうのは、一緒に暮らしてもう、わかってるよ。」

その柔らかい光をたたえたエメラルドに、どき、と心臓が高鳴った。

「ま。勝てたら独立、させてやろうかと思ってたんだけど、まだまだみたいだしな。もう少しうちにいろ。」
「…はい。」
小さく、答える。…彼が決めたならそれが、決定事項だ。

それがよかったのか悪かったのか、は、…今の私にはまだわからないけれど。




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