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おやすみ、と言って、ぱたん、とドアを閉めると部屋に一人。
…ドイツの家の客間で寝るの、初めてだ…いつもドイツ〜って飛び込んでいくから。
………。
だって、別人だなんて言われたってわからない。あれはドイツだ。俺の知ってる、怖いけど優しくて、手先は器用なのに言葉は不器用で、仕事とかでは大胆なのに、友達との接し方もわからなくて照れてる、ドイツだ。例え俺のこと知らなくても。
だから。やっぱり仲良くなりたいって思うんだ。ドイツと仲良くなりたいって。特に、これから一緒に暮らすなら、絶対!

よし!仲良くなるには一緒に寝るのがいいよね!
と思ったのでドイツの寝室に突撃することにした。けど。
「…怒られる、かな…」
うーん…怒る、だろうなあ、そりゃあ…
起きてたら追い出されるかも。…どうしようかな…。
考えて、とりあえず怒られる回数が少なくてすむように、シャツ一枚だけはおっていくことにした。暑いけど。

こんこん、とノック。入れ、と声。やっぱりまだ起きてた…
ひょこりと顔を出すと、本を読むドイツの姿。
「どうした?」
「、あの、その…一人じゃ寝れなく、て…」
一緒に寝ちゃだめ?尋ねると、今日一日だけで何度も見た呆れた表情。
「おまえ…自分がいくつだと…」
「…だって…」
視線を落とすと、深いため息。
「…今日だけ、だからな。」
小さな声にえ、と顔を上げたら、ベッドをつめてスペースを空けてくれた。わあ!と思わず声を上げて、ありがとドイツ!とお礼を言って飛び込む。ばふんと揺れたベッド。…ドイツの匂いがする。

「えへへ。」
「…変な、やつだな。」
困ったような声。ちら、と見上げると、綺麗な青。
髪を下ろすと幼く、というかちゃんと同い年に見えるドイツの顔は、ベッドサイドの明かりに照らされて。…かっこいいなあ…
「うん。よく言われる。」
言って笑ってみせるとだろうな、それじゃあ。だって!ひどい!
そう思って口を開こうとしたら、頭をぐしゃぐしゃ、と撫でられた。
ちょっと乱暴な手つき。優しくないそれは、まるで慣れてないのが丸わかりで。
「ほら。もう寝ろ。」
…それでも、うれしくてたまらなかった。
今日初めて、ドイツに触れた瞬間だったから。
明日からはハグとキスもしてもらおう。そう思いながら、おやすみ、と声をかけて目を閉じた。


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