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それじゃあ。 ドイツに笑って言おうとするのに、どうしてもいえなくて、うつむく。またすぐに会えるとわかっていても、どうしても、嫌だ。 さよなら、なんて。やっぱり笑顔ではいえない。 「イタリア?」 どうした?心配げな声に、何でもない、と顔を上げる。 でも、どうしても笑顔が引きつってるのか、心配げな表情は消えなくて。 「…ちょっとだけ、不安、で。」 ダメだね、俺。そう言いながら笑ってみせると、彼は瞬いて、小さくため息。 それから。 「胸を張れ。」 ぽんぽん、と優しく頭に乗せられる、大きな手。 「おまえは素晴らしい国だ。それは、俺が認める。」 誰がなんと言ったって、それは変わらない。 そんな風に言われてうわああ…となんだか感動してしまった。すばらしい、だって、そんなこと面と向かってなんて言ってくれたことないのに! 「まあ、少々…どころでなく頼りなかったり、仕事ももっとしっかりやれと思うところはあるが…。」 「ヴェ…。」 そうだよねー……ハイ。がんばりマス。 「それでも。おまえは、とてもいい国だ。…だから胸を張れ。前を向いて歩けばいい。」 な。そう言われて、うん。とうなずく。そうだね。…ドイツがせっかく独立させてくれたんだ。がんばらなきゃ、だよね! 「うん、俺、がんばる!」 笑顔で言ったら、よし。とほっとした表情。 「もし何かあったら言え。俺も手伝う。…その、同盟国、というか…友達、になるんだ。だから、頼ってかまわないから。」 …ともだち。友達かあ。うれしい、のはうれしい。だって、そう認めてくれたのが本当に。だから。 本当は特別になりたい、けど。でも、友達になれただけでも十分だ! 「…うん、友達だもんね。ありがとドイツ!」 「…いや。」 それじゃあ。と一歩下がる。 「俺、行くね。」 「ああ。…幸運を。」 「ドイツも。」 そう言って、笑って。 もう振り返らない。前を見て歩こう。だって、後ろにはドイツがいてくれるんだから! そう決めて、目を閉じて。玄関を、出た。 瞬間、周りの音が消えて。 扉が閉まるような音が、した。 |